1742話 ハチャメチャメイドの無茶振り
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【カイ=フジン】がとうとう人型になれるようになって、さらには意思を持って自分から動けるようになった姿を見れたな!
だが、万能メイドっぷりを披露すると言ってそのまま何処かへ行ったっきりで戻ってこなかった。
この時点で既にポンコツ感が出てるんだが、【菜刀天子】の言ったように不安しかないぞ……
そうして新緑都市アネイブルの天子王宮で待つこと一時間。
ただ待つだけというのも暇すぎたので宝物庫の比較的傷みやすそうな食材から優先して料理に使っていると、外から地響きを立てながら何かが迫ってきている音がした。
なんだなんだ!?
レイドボスでも襲撃してきたか!?
そう思ってしまうほどのものだったので慌てて外に出てみると、メイド服を着た侍女……つまり【カイ】が25メートルほどの物体を持ってゆっくりと歩いてきている姿があった。
おい【カイ】!
それは一体何を持ってきたんだ!?
「あっ、ご主人様!
【カイ】が捕ってきたのはクジラ(?)っていう一般生物ですよ!
深海種族の領域に入り込んで捕ってきました!」
さらっと言ってくれたが色々と突っ込みどころがあるな!?
まずはそのクジラはお前が海に潜って捕ってきたのか?
プレイヤーたちの中でもまだ一般生物のクジラは見つかってないと掲示板でも話題になったりしているのを見たことがあるんだが、もしや今のプレイヤーたちでは行けない(もしくは行きにくい)ところに行ったんじゃないか?
「その辺は【カイ】には分かりません!
プレイヤーではないので!」
……ごもっともな意見をありがとう。
なお、全く参考にならなかった模様……
あと、深海種族の領域に入っていったんだよな?
レイドボスにはエリアを跨ぐのに制限があったって聞いてるんだが、お前には適応されないのか?
「【カイ】は万能メイドなので!」
……やばい、コイツ話にならないタイプだな!?
しゃちほこ形態の時は無言のままだったので話にならなかったが、今は微妙に会話のキャッチボールが成立してないぞ……
「劣化天子、【カイ=フジン】の自由奔放ぶりを堪能しましたか?
私が次元天子として君臨していた時は常にこの動向に目を光らせる必要がありましたが、その気持ちが分かったでしょう?」
あぁ、触りだけのはずだがこれでも充分に堪能させてもらったぞ……
「ちなみにですがそんな偉大な私からのちょっとした解説をしておきましょう」
俺が【菜刀天子】の苦労に同調したことで気を良くしたのか、俺の疑問に何やら答えてくれるようだ。
【菜刀天子】、機嫌がいいな?
「【カイ=フジン】には深海種族の因子が一部取り込まれています。
そのため、この新緑都市アネイブルから深海種族の領域……つまり海エリアと称される場所までワープが出来る権限を持っています。
聖獣たちが各々のエリアからこの天子王宮までワープ出来るのは過去に見せたでしょう、あの海エリア版と思ってもらったら劣化天子の低スペックな頭脳でも理解できるはずです」
あー、そういえばそういうこともやってたな。
だが、【カイ=フジン】が深海種族の因子を持っている理由は何なんだ?
「それは……言えませんね。
そのうち分かることでしょうが。
それよりも、このクジラはどうしますか?
このまま置いておかれても邪魔ですよ?」
……それなら俺が一丁料理してやるか!
クジラ料理パーティーの開幕だ!
「ご主人様の料理!
楽しみです!」
【カイ=フジン】も喜んでいるが……ただ流石にこの大きさを一人で料理しきるのは難しいので、この後【フライパン料理人】を筆頭に料理系生産プレイヤーを多数招いてクジラ料理をひたすら作り続けたのだった……
その後開かれた晩餐会では天子王宮へ入るための許可証を持っているプレイヤー全員が参加権利を持っていたので、数多くのプレイヤーが足を運んでくれたぞ!
たまにはこういうのもいいな……
今回は劣化天子の機転でどうにかなりました。
よくこの無茶振りを好転させることがでにましたね。
この私が褒めてつかわしましょう。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】