1739話 蒼き脈動回路
「チビ女、これからどうする!?」
どうするも何もとりあえず殴りに行くしかないだろ!
俺も変身するから待ってろ!
スキル発動!【夢幻顕現権限】!
俺は夢幻の力を扱うための簡略版の変身をしていった。
最大火力については重装兵スタイルの【ギアフリィ】がいるから任せればいいが、小回りが利く動きは俺が担当しないといけないからな!
そうなると使うべきなのは【深淵纏縛P】か【夢幻顕現権限】になる。
本当は【夢幻深淵】が一番使いたかったんだが、あれは最後の一撃用だ。
今使うとすぐにガス欠になって肝心なときに使えないからな!
「チビ女も新しい形態になれるスキルを手に入れたんだな。
羽が後ろで浮いてるだけだけど、オレの【機天顕現権限】みたいなものか?」
あながち間違ってないだろうな。
【機戒顕現権限】じゃなくて上位版の【機天顕現権限】に寄っているのはイメージとしては近いだろう。
「とりあえずこの場面で使ったってことはそれなりに強いんだろ?
本当に頼むぜ、そうじゃないと死に戻りしたおっさんが浮かばれないぜ!」
言われずとも分かってる!
スキル発動!【堕枝深淵】!
まず俺が使ったのはルル様の黒い茨だ。
これで両腕を失った【ジャバ=ウォック】を拘束していく。
普段のやつよりも夢幻の力で強度が上がってるからな、レイドボスだろうとちょっとだけ破るのは手こずるはずだ!
「拘束してくれたんなら実力派のオレの出番だよな!
スキル発動!【機馬回路】!」
【ギアフリィ】がスキルを発動させると、青色の配線のようなものが四本ほど出現していた。
それが【ジャバ=ウォック】に突き刺さったかと思うと相手の身体が痙攣し始めたのだ!
あれはいったい何が起きてるんだ!?
「体内に直接電気を流し込んでいるんだぜ!
斬撃しか外傷がつきにくいなら、直接体内に攻撃しようっていう実力派な戦法だぜ!」
スタンガンみたいなものかっ!
確かに、今までの攻撃やデバフはほとんど効かなかったが、これはある程度は効いてるみたいだから【ギアフリィ】の戦いかたはかなり的確なのだろう。
それは思いつかなかったな……
「でも、予想してたよりも全然ダメージが入ってないぜ……
やっぱりおっさんが使ってた剣の威力凄かったんだな……」
そりゃ【ジャバ=ウォック】への特効武器だったからな……
むしろ凄くなかったらここまで連れてきた価値も無かっただろうよ。
「そうだけどよ……
でも、どうすんだよ……」
こうなったら俺が【ヴォーパルソード】を使ってみるか!
「チビ女がっ!?
いや、チビ女だからこそ使えるかもしれないのか……
少女みたいな身体ならとりあえず資格があるって言ってたからな」
そう、非常に不服だが俺はロリ扱いされまくるくらい見た目が幼く見られるからな。
普段はデメリットみたいなものだが、今回はそれを活かせる貴重な機会だろう。
【ロイス=キャメル】ですら一つしか要素を満たせなかった【ヴォーパルソード】を俺がまともに扱えるとは思えないが、こうなりゃやってみるしかあるまい。
さっき二人で攻撃してみて分かったが、この状態でMVPプレイヤー二人だけで攻撃を続けても勝ち目は一割くらいだろうし。
「けどよ、これでチビ女がその剣を使うのに失敗して無駄死にしたらそれこそ勝率が0パーセントだぜ?
それでいいのか?」
良くはないが、博打に賭けた方が効果がありそうってことだ。
【あら、今度はあなたが私の担い手になるのかしら?
あなたは自信が無さそうだけれども大丈夫かしら。
アリスの要素を一つも満たせていないと機能が一つしか使えないのと、一回の斬撃だけで全身が腐り落ちてしまうわよ?
それでも私の担い手になる覚悟はあるのかしら】
……あぁっ、勝つためなら俺の身体の一つや2つ喜んで犠牲にさせてもらおうじゃないか!
【……そう。
覚悟があるのならば止めはしないけれども、そうやって私の力で破滅していった少女を何度も見送ってきたわ。
過ぎた力は身を滅ぼすだけよ?】
そんなのは百も承知だ。
俺の身体には既に俺より強力な存在の細胞が何種類も取り込まれているからな!
時に俺の意識すら乗っ取ろうとしてくるくらいだ。
そして、過ぎた力で自滅したことも数えきれないくらいあるしな。
ここでまた一回死に戻りしたところで、その数えきれない数に新たに加算されるだけだ。
俺としては別にどうってことの無い日常風景の一つでしかないのだ!
【それなら私を地面から引き抜きなさい。
私が力を貸してあげるかしら!】
そうして俺は【ヴォーパルソード】に手をかけ……一気に引き抜いた!
するとどうだろうか、【ヴォーパルソード】が青白く目映い光を放ち始めたではないか!
ハート、ダイヤ、スペード、クローバー……鍔に散りばめられていた装飾が特に輝いており、【ロイス=キャメル】の時とは比べ物にならないくらい力の脈動を感じるぞ……っ!!!
これは……いったい……!?
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】