1731話 長剣ファイターズ
というわけで、【アリス(仮)】は一旦後ろに下がっていてくれ。
まずは俺たちプレイヤーだけで戦ってみてどこまでいけるのか試してみる。
その後に比較としてお前の力を借りるとしよう。
【ふん、殊勝な考えね!
私が待ちぼうけになってしまうのはつまらないけれど、その蛮勇を見届けさせてもらうわ】
好感度をあらかじめ上げておいたからか、ここで待機命令を出しても少しの不平不満を言うだけで言うことを聞いてくれたようだ。
ちょっとだけホッとしたぞ……
「それなら【ペグ忍者】がまず行ってくるのら!
スキル発動!【聖獣毛皮μ】」
ここでスキルの発動によって【ペグ忍者】の身体が紫混じりの白い装束に覆われていく。
髪の毛の色も上書きされていき、装束同様に白色がメインでメッシュのように紫色の髪が少し生えている感じになった。
これが【ペグ忍者】が聖獣の力を発揮するための姿というわけだ。
「スキル発動!【虎月伝心】なのら!」
そして続けて発動させたのは虎バージョンの【渡月伝心】である【虎月伝心】だ。
発光した粒子がペグに集まっていき、そこから【ジャバ=ウォック】に向かって射出されていった!
「えっ、前よりも攻撃が効くようになってるのら!?」
【ペグ忍者】が驚いたのは自分の攻撃が通用していることだった。
それもそのはず、前はほぼダメージが通っている様子は無かったからな。
「やっぱり特殊防御権限がほとんど剥がせているのがデカそうなのらね」
多分そうだろうな。
どこの次元のプレイヤーが頑張ってくれたのか知らないが、レイドアナウンスもいつの間にかフルオープンになっているからな!
その辺の情報開示があるとないとではダメージの通りが格段に違う。
とはいえ、ダメージが通っているのと有効打になるのかは話が別だ。
このままダメージを通し続けられるならいつか倒せるんだろうが、このダメージ量だとダメージレースでプレイヤー側が敗北するだろう。
それでも前のような無敵性が剥がされているのはデカイのには変わらないけどな!
さて、後は確か……【ジャバ=ウォック】は『剣による斬撃』が弱点だったよな?
包丁次元で剣がチュートリアル武器のやつは……モブプレイヤーに三人くらいいるな?
「俺と」
「あるよー、剣あるよ~!」
「自分です」
特に変哲もないモブプレイヤーたち三人だが……
他のモブプレイヤーよりは出来そうなやつがいるな?
立ち振舞いが素人のそれではない。
おそらくリアルで剣道か何かを嗜んでる口だな、しかも上級者レベルだ!
そう言いながら一人の男プレイヤーを指差していく。
170センチのちょい痩せ気味で、冒険者風の服装をしたやつだ。
「自分ですか?
自分はクラン【ファイターズ】に所属している長剣使いです」
【ファイターズ】の長剣使い……何か聞き覚えがあるな……
確か公式イベントで何回かランクインしてるだろ?
武器交換島流しのやつとかレースイベントとかで。
「自分のことを知っていたとは……
意外でしたね」
随分と掲示板の時とは喋り方が違うじゃないか!
「あれは掲示板の雰囲気に合わせているだけですよ。
これが素です。
というよりイベントの結果だけじゃなくて掲示板での自分の投稿まで見られていたなんて、少し恥ずかしいですね……笑」
お前は2つ名持ちプレイヤーに勝てるくらいの実力を持ったモブプレイヤーみたいだから、ここでその力を存分に発揮してくれ。
あのレイドボス【ジャバ=ウォック】は剣による斬撃という概念そのものが弱点になっているらしいからな!
俺や【ペグ忍者】が攻撃するよりもお前が攻撃した方がきっとダメージを稼げるはずだ。
あとの二人の剣使いモブプレイヤーは……死なない程度に頑張ってくれ。
お前らは無理して死なれても包丁次元の功績比率が下がるだけだからな。
地道に安全圏を保ちながら戦ってくれ。
「「了解」」
というわけで長剣使い、お前を全力護衛して【ジャバ=ウォック】の目の前で戦わせてやる。
俺についてこい!
「りょうか……って速っ!?
【包丁戦士】はあんなに速いのかよ、置いてかれる……!?」
慌ててついてきている長剣使いだが、お前はそれくらい後ろからついてきてくるくらいがちょうどいい!
何故なら俺が今も【ジャバ=ウォック】から飛んでくる爪による斬撃を包丁の腹を使って受け流して防いでいるんだからな!
久しぶりに俺が避けタンクとしての動きを披露してやろうじゃないか。
そう言いながら俺は【ジャバ=ウォック】と長剣使いの直線上の間に入り込むことを意識しつつ、飛んできた攻撃を次々に受け流していくのであった……
パリィはギリギリ避けタンクの範疇……ですか。
ここはあえて否定はしませんけど。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】