1723話 不明の剣
それで戦場の怪物さんはこの情報を踏まえて何か攻略法を思いついたりしたのか?
「それなのだが、やはりジャバウォックの討伐方法として挙げられることが多い『ヴォーパルソード』を使って倒すことだろう」
なるほどな。
というか、ジャバウォックの討伐方法はそれ以外に考えられないか。
だが、そんな剣なんて見つかってない……
いや待て、そういえばパイルバンカー次元の長剣使いの斬撃が微妙に通じていたのを俺は見たぞ。
もしかしてあの【恋慕戦場の怪物ー蛇馬魚鬼】には『剣による斬撃』が弱点として付与されてるんじゃないか?
流石に『ヴォーパルソード』だけが弱点だけだと討伐難易度が跳ね上がるから、救済措置としてあり得るかもしれない。
「……言われてみると、私もかつてこの戦場で唯一受けたのはサーベルのような剣による斬撃だった記憶がある。
そこを参照しているならば【恋慕戦場の怪物ー蛇馬魚鬼】の弱点になっていてもおかしくはあるまい」
そしてそんな攻撃を受けてもこのゲームを今もプレイしていることから、ダメージは受けていたが深傷にはならなかったということだろう。
弱点認定されているが、大きな効果になっていないのはその程度の差まで反映されてしまっているのだろう。
そこは残念だな……
「それを私に言われても困るのだがね?
とはいえこれで突破口は見えてきたはずだ。
ここからは『ヴォーパルソード』と思われるものの発見及び確保を目指していくことになるが、このまま協力してくれるかね?」
あぁ、もちろんだ!
どっちにしてもあのレイドボスを倒すには確実に手に入れておきたい代物だからな。
どんな形状なのか、どこにあるのか、そもそも本当に存在するのかなど疑問は多く残ったままだがジャバウォック型のレイドボスがいる以上、ギミックとして存在する可能性を排除するのは危険だ。
「というわけで、さっそく探しに行こう。
今回は【ペグ忍者】君ではなく、【ワタシ商人】君を私たちに貸して欲しい。
幼女と同行したい気持ちは山々なのだが、少し考えがあってね」
気色悪い発言だが、俺としても【ワタシ商人】を【ロイス=キャメル】に近づけることは何かしらのメリットを生みそうだから賛成だな。
他のMVPプレイヤーと商人系プレイヤーを掛け合わせたらしれっと情報を聞き出してくれるかもしれないし。
「というわけで、今回もステッキ次元からは【エラ】を貸し出す。
それでいいかな」
もちろんだ。
ありがたく力を借りさせてもらうとしよう。
「おじ様からの頼みでまた【包丁戦士】さんたちに力を貸しますよ!
前回は【オーリス】というプレイヤーにいいようにされてしまいましたが、今回は不覚を取らないようにします!」
【エラ=サンドレラ】が意気揚々と先へと進んでいくが、そんなに慌てても仕方ないぞ?
「そうなのらよ~
焦りすぎて探し物を見逃したら本末転倒なのら!」
「うぐぐっ……ですが、パイルバンカー次元よりも早く見つけないとおじ様の顔に泥を塗ってしまいます!
何としても私が見つけ出さないと……!」
やはりかなり前のめりになっているな……
まぁ、今いる包丁次元の連中のモチベーションを全体的に上げてくれるくらいにはアクセントとして働いてくれるだろう。
「それで『ヴォーパルソード』って何なのら?」
それがうまく説明出来ないんだよなぁ……
原作の『鏡の国のアリス』でも具体的にどんなものなのかは明示されていないし、解釈も読む人によって分かれるのだ。
言葉遊びの産物とさえされてるくらいだし。
「でも、私の見た映画だと普通に剣でしたよ!
アリスがズバーっとジャバウォックを倒してました!」
そういう解釈もある。
今回俺たちが探しているのはそのジャバウォックをズバーっとやった剣だからな。
とりあえずは実体があるものとしておかないと探しようもないし。
「そうなのらね~
それなら他にも同時に探し物が出来たら無駄骨にならなくてよさそうなのら!
何かのヒントかシークレットクエストみたいなものがあればいいのらけど……」
まぁ、そう簡単には見つからないよな。
そもそも簡単に見つかるなら既に俺たちじゃなくても、ステッキ次元やパイルバンカー次元、そして蛇腹剣次元のプレイヤーたちに見つかってしまっていることだろう。
だからこそ、俺たちはそう簡単に見つからないものを探し出すための動きを要求されているというわけだ。
……焦って探しても見つからないと思う理由だな。
「あっ、これって私に対するメッセージだったんですか!
お気遣いしていただきありがとうございます」
俺の意図に気がついた【エラ=サンドレラ】はあわあわしながらも感謝の言葉を述べてきた。
そういう素直さもいいな。
他の次元のプレイヤーに絆されてはダメですよ……!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】