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172話 鉄暴走

 仕方ない、俺も迎撃だけじゃなくて攻めていくか。

 そう思い、包丁を構えて【ケイトリー=ホウセ】に向かっていく。


 俺が放つのは一番得意な袈裟斬りだ。

 斜めに放たれる斬擊だったが、ワイヤーによる多重障壁をとっさに作り出され防がれてしまった。

 ワイヤーを何本か切断することはできたのだが、全ての断ち切るには身体スペックか、武器の切れ味が足りない。

 まあ、この包丁はチュートリアル武器だから耐久性は無限だが切れ味が鋭いかと言われるとそこまででもないのだ。


 というか、ワイヤーで壁なんて作ってくるのかこのワイヤー星人は!?

 宇宙人みたいな奇妙な見た目しやがって……


 【グォォォォォ】


 グォォォォォじゃないわ、グォォォォォじゃ!

 返答したつもりかもしれないが、何を言っているのかわからないのでうなり声としか捉えられない。


 「その壁、私が排除します!

 釣竿一刀流【石砕き】です!」


 【釣竿剣士】は地形破壊に特化している釣竿一刀流【石砕き】を使ったようだ。

 釣竿の先に取り付けられた鉄球がワイヤーで作られた壁を木っ端微塵に破壊していく。

 地形破壊に特化している……というよりはオブジェクト破壊ができる技能なんだろうか?


 何度か鉄球がワイヤーに激突を繰り返していくと、壁が完全に破壊されたようだ。

 この【ケイトリー=ホウセ】が扱うワイヤーはさっきから切ったり、破壊したり出来ているのでプレイヤーのチュートリアル武器とは異なる扱いみたいだな。

 ……まあ、耐久性がない代わりに無限に沸いてきているけど。

 そう考えると、どちらかというと、タンクプレイヤーが使える【近所合壁】というスキルに近いな。

 あれは触れるだけで壊れる脆すぎる壁を出すスキルだから、通常の耐久性を持つ【ケイトリー=ホウセ】のワイヤーとは厳密に言えば違うが、無限に出てくるという点は同じだ。


 つまり、弱点は……


 「再生成まで時間がかかる……つまり隙ができるということだね。

 行ってください、【フィレオ】を使うんです!」


 【検証班長】によるゴーサインが出た。

 ここが決めどころの起点だ!


 スキル発動!【フィレオ】!


 俺は横凪ぎに包丁を振るい半円状の軌道を描く。

 そして、その軌道を延長していく形で飛翔する斬擊が生み出された。


 そして、ワイヤーの壁が破壊され、ワイヤーのストックが一時的になくなったのか再生成に手間取っている【ケイトリー=ホウセ】の左腕を斬擊で切断することに成功した!


 ……まあ、スキルのデメリットで俺の左腕も後方に吹き飛ばされていったが……

 いや、これは必要経費だな。

 なにせ、【ケイトリー=ホウセ】は手からワイヤーを生み出してきている。

 その手が片方失くなったのなら手数が比例して減っていくはずだ。


 【ケイトリー=ホウセ】の行動パターンを読みきったと豪語する【検証班長】が選んだ作戦だ。

 その判断に間違いはない……だろう。


 そう思っていたんだが……


 【グォ……ゴガガガァ!!!!】


 【ケイトリー=ホウセ】の切断された部分からワイヤーが噴き出すように出てきて、その勢いで【ケイトリー=ホウセ】は高速で移動し始めた。


 お、おい……あのスピードだと目で追うのがギリギリだぞ!?

 【検証班長】、これ大丈夫なんだろうなぁ!?


 俺はピンボールのように跳ね回る【ケイトリー=ホウセ】を見て不安になり【検証班長】へ問いかけた。

 あんな素早さで移動するやつに勝てる気がしない……というよりそもそも攻撃を当てられないぞ。


 だが、俺の思いとは裏腹に、【検証班長】は迷いのない表情と声で言葉を紡ぎ始めた。


 「安心してください。

 たしかに今は物凄く厄介な状況です」


 やっぱりそうじゃないか……


 「ですが、この状態はそう長く続きません。

 この暴走状態だと、こっちがなにもしなくとも【ケイトリー=ホウセ】のHPが徐々に減っていっているらしいです。

 設定的には……部位破壊をすると、血液の代わりに体内を流れるようになった鉄液が体内を上手く循環することができなくなり、出力を制御する機能が暴走する。

 そして、破壊した部位の大きさに比例した一定のダメージを定期的にレイドボスが受け続ける……らしいです。

 隠し部屋で読んだ【鉄人の心得】という本に書いてありました」


 なるほど、【ケイトリー=ホウセ】を自滅させるために俺に【フィレオ】を使わせたのか。

 自滅してくれるって分かってるのなら無理してあのピンボールみたいに部屋全体を駆け巡っている【ケイトリー=ホウセ】を追いかける必要が無くなるな。

 こっちから攻めないといけないのと、相手が攻めてくるのを防げばオーケーとでは気の持ちようが全然違う。

 精神的にゆとりをもって攻撃を対処できるのは大きい。

 最低限誰かが生き残りさえすれば問題ないし。


 「その通りです。

 さあ、ここから耐久戦の始まりですよ!

 みなさんがんばりまっ、ちょっ、ぶふぉぉっ!?」


 いい感じに喋っていた【検証班長】の言葉を遮るように【ケイトリー=ホウセ】がワイヤーを大量放出して、【検証班長】を針山のようにさせて死に戻りへと導いた。



 ああっ!?

 【検証班長】ぉぉぉぉぉ!?!?








 こういうトラブルはつきものです。


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 鉄人?鉄血? おっと種族か何かかな [一言] 目の前に明らかに無防備で解説する敵がいれば まあ、狙いますよね
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