1711話 異常突撃
「突撃なのらよ~!!!」
何だかんだ言いながら俺についてきてくれた【ペグ忍者】だが、普通にノリノリだな……
いや、嫌々ついてこられるよりは百倍マシなんだがさっきまでとギャップが凄い。
「どうせやるなら楽しんだ方がお得なのら!
……あと、外聞を気にしたのもあるのら」
嫌々俺に連れていかれたという理由なら無茶な突撃をしても他の連中に咎められないどころか、むしろ労ってもらえるということか。
随分と俺を利用してくれたものだな?
「それは相互扶助なのらよ~
【包丁戦士】しゃんも【ペグ忍者】をいいように使ってるのら!」
まあ、それもそうか。
俺の悪名はクラン【検証班】にとっても扱いにくいものだ。
こういう時にこそ使ってもらわないと本当に意味がないと言われるとそうかもしれない。
さて、それはそれとして。
進軍し続ける軍人たちだが、包丁次元やステッキ次元の連中が迎撃していても一切怯むことなく攻撃と進軍を続けていたのでおそらく感情面はほぼオミットされたユニットという認識でいいだろうな。
表情の変化が全くないのがその証拠にもなる。
「死兵なのらね……
人型だからプレイヤー相手みたいなのらけど、感情がなくて動きに迷いがないから不気味なのらよ……」
俺がトレジャーハンターとして出会ったり、戦ったり、競い合ったやつにはこういうやつもいたがそれが揃いも揃って攻めてくるのは俺をしても不気味と言わざるを得ないな。
そして……
「銃撃があるのが辛いのら……
普段戦わない武器種が相手だからやりにくいのら~!」
そう、機戒種族関係とパイルバンカー次元以外では見たことがない銃系統の攻撃が俺たちを苦しめていた。
弓矢とかは使い手が多いから対処できるんだが、銃撃となると話が変わってくる。
軌道も違うしな!
だからこそそれを踏まえた上で、身軽で回避に長けた【ペグ忍者】だけを最前線に連れてきたのだ!
ここで銃撃に慣れておけよ!
「ほ、【包丁戦士】しゃんはなんで慣れてるのら……?」
さあ、【荒野の自由】に普段から狙われてるからじゃないか?
あいつ、荒野エリアから抜け出してきて俺を襲ってくるし……
これは半分本当だが、もう半分はトレジャーハンターでの経験だ。
銃使いもわりといたからな……
ゲーム内と若干勝手は違うが、動きの予想は立てやすいぞ!
「【包丁戦士】しゃん、このままこの軍人たちを倒しまくる感じでいいのら?」
それも悪くないが、俺の目的はこの先を抜けたところだな。
【ロイス=キャメル】は耐えることを考えていたし、おそらく他のMVPプレイヤーたちも似たようなことを考えているはずだ。
だが、それでは『面白く』ない。
「……『面白く』ないのら?
どういうことなのら?」
いや、俺自身もそうだがそれ以上にメタ視点でゲーム運営プロデューサーの思惑を考えてたわけだ。
きっとあいつなら、ただ耐えるだけのことは『面白く』ないと考えるだろう。
それなら『面白く』動くまでだ!
目指すはこの軍隊の最奥部、司令官もしくは隊長ポジションのやつがいるところまで切り込むぞ!
「ええっ、本当に無茶するのらね……
【包丁戦士】しゃんといると気と身体が休まる時がないのらよー
クラン【コラテラルダメージ】のメンバーはよくついていけているのらね……」
そんな愚痴をポロリと漏らした【ペグ忍者】を随行させて俺は軍人たちを包丁で切り裂きながらも、倒すことはメインで行わずひたすら前進し続けていく。
人と人の間をかき分けていきながら先へ進むのは俺の十八番技術の一つだ。
相手が軍人とはいえ、俺も困難を打ち破って進むプロみたいなものだ。
NPC相手には遅れをとるつもりはない!
それに、ここにいるのは【ロイス=キャメル】に言わせると下級兵士ばかりらしいからなおさらだ。
「これで一気にミチを拓くのら!
スキル発動!【閃虎通月】なのら!」
このタイミングで【ペグ忍者】が使ったのは【伝播】の力で作られた針を何本も生み出し、射出するスキルだった。
これにより、俺たちの進路上にいた軍人たちが次々に倒れていき、一時的ではあるが俺たちが進みやすいようになった。
ナイスアシストだ【ペグ忍者】ぁ!
流石はクラン【検証班】の秘密兵器と呼ばれているだけあるな!
このまま押し通るぞ!
「倒れた軍人しゃんたちを足場にしてるのら……
どんな精神してるのら……」
【ペグ忍者】は一応倒れた人を避けて俺の後ろをついてきているようだ。
NPCだし、エネミーなんだから気にする必要もないだろ?
「中々その辺は割り切れないのらよ~」
……そういうものなのか?
俺には分からないな。
これが劣化天子と他のプレイヤーたちの違いのうちの一つですね。
頭で理解していたとしても、人間とはその通りに行動できないと私も学習しています。
ですが、劣化天子は違うようです。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】