171話 【花上楼閣】の使い手とは
「さっそく、うちもいいところ見せていくよ~!
スキル発動!【水流万花】!」
パジャマロリが見せ場を作ろうとして、意気揚々とスキルを発動させた。
蛇腹剣次元のプレイヤー二人がお荷物になっているので、パジャマロリにはそれを補うくらいの活躍をしてもらわないとな!
パジャマロリが発動させてスキルは、炎の扉を突破するときにも使った【水流万花】だ。
沼地エリアのレイドボスを倒して手に入れたスキルらしいが、俺たちとスキルが違うから勝手がわからない。
パジャマロリの周囲を水流が輪のようになって回っているので、防御面を強化するスキルというのは推測できるが……
「小手調べにこの攻撃はどうかな~?」
パジャマロリは蛇腹剣を巧みに操り、蛇のように伸縮されながら【ケイトリー=ホウセ】に向けて刃を通そうとする。
直線的な動きじゃなく、現在進行形で軌道を変えながら迫ってくる攻撃というのはこれ以上ないくらい厄介だ。
……俺はあんまりあの武器と敵対したくないなぁ……
だが、この立体的な攻撃も【ケイトリー=ホウセ】の身体を僅かに掠める程度で、致命傷には程遠い当たりとなった。
そして、【ケイトリー=ホウセ】はお返しと言わんばかりにワイヤーをうねらせながら飛ばしてくる。
ちっ、小賢しい真似をっ!
俺はパジャマロリに迫るワイヤーの雨を包丁で打ち落としていくが、迫り来る【ケイトリー=ホウセ】の進行を妨害することができず、パジャマロリの目の前に到達させてしまった。
しまった!?
【ケイトリー=ホウセ】のワイヤーに守られた鋼鉄の拳がパジャマロリへと振るわれ、腹部を抉るように直撃した。
うわっ、痛そう。
ロリへの腹パンは絵面的にも凄いことになっている……色々な意味で。
「かかったね~?」
だが、腹部への直撃をものともしないパジャマロリの表情がそこにはあった。
腹部をよくみると、パジャマロリの周囲を回っていた水流が拳を防いでいた。
なるほど、オート防御か!
中々便利なスキルじゃないか、ずるいぞ!
「まだまだ、オート防御なんてものじゃないよ~!
絡み付いて!」
パジャマロリの言葉で水流が蛇のように形をかえて、【ケイトリー=ホウセ】の拳に絡み付いた。
水流の蛇による拘束を受けた【ケイトリー=ホウセ】が拳を一気に引き抜いて再び俺たちから距離を取った。
そして、【ケイトリー=ホウセ】が離れると水流は霧散した。
どうやら【ケイトリー=ホウセ】はヒットアンドアウェイ戦法が基本みたいだ。
というより、オート防御じゃなくてカウンター能力もついてるなんて便利スキル過ぎるだろ!
「そうでしょ!
……カウンターはうちだけの特権だけどね~(ボソッ)」
……ボソッっと聞こえたが、【水流万花】は本来オート防御だけのスキルのようだ。
【真名解放】といい、【水流万花】といい蛇腹剣次元のスキルはデメリットがない代わりに効果量も少ないっぼいな。
この2つのスキルの対になっている包丁次元のスキルの【名称公開】【花上楼閣】はそれぞれデメリットが大きいのがネックだが、スキルの効果量も方向性は少しずれるが増えているからな。
この辺りのバランスの違いが次元ごとの差異として次元戦争も盛り上げるのだろう。
まあ、【花上楼閣】はここで使うにはデメリットが大きすぎる。
使うにしても時間がほとんど無くなったイベント終盤だけになってしまうだろう。
なにせ、セーブポイントである岩の花弁が破壊されるとスキル発動者は全てのスキルを24時間使えなくなるからな。
俺とかガンガンにスキル使うし、1日スキル使えなくなるのは痛いからな。
ましてや、ここにいるメンバーでスキルを使わず戦えるメンバーなんて……
……いたわ!
俺は思わず【釣竿剣士】を指差して大声で叫んでしまった。
「……たしかに私なら戦闘にスキルを使わなくても万全な状態で戦えますね。
【渡月伝心】のメッセージ送信機能は便利なので日常的に使っていますけど、他に戦闘中スキルを使うことはないですね。
私には、釣竿一刀流がありますから!」
そう、今になって気づいたが、こいつは【花上楼閣】によるスキル封印デメリットをスルーして戦える。
釣竿一刀流とかいういかにもスキルっぽい技を多用しているから忘れていたが、釣竿一刀流はスキルではない。
ability【現界超技術】というもので、現実で使える訳のわからない技をゲームに持ち込んでいるだけだ。
だからこそクールタイムとか技ごとのデメリットもないからな。
そう考えると【ウプシロン=ウーグウイ】討伐を狙っていた北のトッププレイヤーである【釣竿剣士】がその討伐による恩恵を最大限に受けているってことか。
一方で、新緑都市アネイブルでのレイドボス討伐で手に入れた聖獣スキルの【渡月伝心】は俺にほとんど恩恵を与えなかったが……
どっちかというとジェー(深淵種族)討伐で手に入れたスキルとか深淵細胞が俺にとっては恩恵だったのかなぁ……?
abilityも深淵適正があるとか言われてるし……
そんな考察の海に沈んでいる俺を横目に、パジャマロリは蛇腹剣を振り回し円状の軌道で【ケイトリー=ホウセ】の進行を防いでいた。
やっぱりクソ長リーチの武器はこういうことができるから便利だよな……
羨ましい。
いや、包丁が嫌というわけではないぞ?
こらこら、拗ねるなよ。
手に持った包丁をなだめていく。
「【包丁戦士】さん、何を遊んでいるのかな……?
マキさんが牽制している間に攻めてください」
おおぅ……
【検証班長】に怒られてしまった。
……真面目にやってください。
【Bottom Down-Online Now loading……】




