1709話 銃弾集め
「さて、拠点を案内させてもらったが君たちの拠点はどこだろうか?
差し支え無ければ教えてもらいたいのだが……」
【ロイス=キャメル】が俺たちの拠点について探りを入れてきたが、おあいにく様。
俺たち包丁次元は拠点を構えずに移動を優先していたから、紹介できるような場所はない!
というか、地形をすぐに把握できていたお前と違って、こっちはきちんと調査するところからやってるんだからな!
「ふむ……一理あるな。
では、拠点を探す手間も惜しいであろうしここを共有拠点としよう」
「おじ様!?
そのような提案をしても大丈夫なのですか!?」
「問題あるまい。
私が保証しよう」
「おじ様がそこまで言うのなら私は引き下がりますが……
ちょっと不服です……」
【エラ=サンドレラ】が反論してきたが、【ロイス=キャメル】がそれを押し返したようだ。
俺たちを信頼してくれている……と好意的に捉えるのもいいが、どちらかというと【ロイス=キャメル】からは普段感じられない焦りのようなものが伝わってくる。
この焦りが何に起因するものなのか分からないが、少なくともステッキ次元として悠長にしていられない事情があるのだろう。
それか、この【Battle field 特異次元 恋慕戦場ヴァルハライド】そのもののギミックを知っているか……だな?
現実とは違うところがあるとはいえ、共通している部分が多いからな。
だが、協調路線を組んだばかりの今これを聞いてしまうと関係が瓦解してしまう可能席があるから、もう少し時間が経ってから聞いてみることにしよう。
「拠点が確保できてラッキーだったのらよ~
それで、【包丁戦士】しゃんはこれからどう動くつもりなのら?」
「わたくしめも気になります」
そうだな……
とりあえずレイドボスの痕跡とか情報を探ってみるか!
弱点や攻撃方法みたいなのがあらかじめ分かれば戦いやすそうだからな!
「了解なのら!
みんなで探しに行くのら!」
「「「「おー!!!」」」」
というわけで一旦ステッキ次元の連中と離れて【Battle field 特異次元 恋慕戦場ヴァルハライド】を再び探索することにした。
一見すると振り出しに戻ったように思えるが、【ロイス=キャメル】との接触で得たものは大きい。
まずはステッキ次元の連中の顔ぶれ。
あそこにいたのが全員じゃないにしても大体の戦力は把握できた。
次にこの戦場の特徴だな。
【山伏権現】の想像で作られたものかと思ったが、現実にあった戦場の再現ということが分かった。
これなら幾分か俺のトレジャーハンターとしての経験を活かすことが出来るかもしれない。
そういうところに置き去りになった資料や貴重品の回収を依頼されたこともあったからな。
遺跡に比べると経験がかなり少ないが、全くの専門外でもないのだ!
なのでまずはこの塹壕の付近から調査しておこう。
先に【ロイス=キャメル】たちが調べ尽くしているだろうが、その情報を素直に全部教えてくれるとは限らないからな!
包丁次元としても別で把握しておく必要はあるだろう。
「ここに銃弾みたいなのが落ちてるのら~!
包丁次元だと銃を使うプレイヤーは一切いないから新鮮なのら……」
「これはわたくしめの出番でございますね。
勇者様の加護をお見せしましょう、【勇者の道具箱】!」
そう言って【ワタシ商人】は【ペグ忍者】や俺が拾った銃弾を空中に空いた異空間への入口に放り投げていった。
普段なら持っていくのを諦めていたであろうものだが、【キズマイナ】が与えた加護によってアイテム収納能力を持つ【ワタシ商人】ならお構い無しに持っていけるというわけだ!
勇者パーティーに属している【ワタシ商人】最大の強みだろう。
羨ましい能力だ!
「わたくしめが勇者様の温もりを感じられる能力でございますよ。
あの大いなる温もりはいつも感じていたいのでございます」
キマシタワー?
まさか【キズマイナ】をそこまで想う仲間が現れるとはな……
会ったばかりの頃はただの根暗な骸骨趣味女だと思っていたが、出世したものだ。
いつかハーレムでも作りそうだな……
「でも、銃弾を持ち帰ってどうするのら?
肝心の銃がないと意味がないのらよ……」
それはそうだ。
あれだけのプレイヤーがいるのに銃カテゴリーのチュートリアル武器の使い手が包丁次元にいないからな。
パイルバンカー次元にはいるみたいだから、そこへの牽制ぐらいにはなるんじゃないか?
あとは鋳造する時の素材にするとかぐらいか。
ぶっちゃけ他の用途は思いつかん!
「えぇ……
そんなんでいいのら……?」
まあまあ、何がトリガーになるか分からないし集めておいて損はないだろ!
劣化天子、なんと無責任な……
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