17話 会者定離
【Raid Battle!】
【兎月舞う新緑の主】
【荒れ狂う魚尾砲】
【レイドバトル同時発生につき難易度が上昇します】
新緑都市アネイブル総力戦……
の前夜、俺は【槌鍛治士】に会うためにいつものように死に戻りした。
おいそこっ、もったいぶるなとか言うなよ!
「おう!
いい死に戻りっぷりだな!」
死に戻りした俺の前に現れたのは、いつものむさ苦しいガチムチおっさんの顔だ。
やはり、この顔を見ると安心するなぁ!
「お前は明日のレイドボス討伐戦には参加するのか?」
誰が参加するのかは基本的に検証班に選別を任せているので、俺は参加メンバーにしてはほとんど把握していない。
ボマードちゃん、【検証班長】、【釣竿剣士】の3人だけは個人的に誘っていたので分かってるけど……
「あったりまえだ!
これがアネイブル以外のレイドボスならともかく、ワシを贔屓にしてくれている【包丁戦士】の大一番ときた!
ここで少しでも引き立て役としてアシストしないと、男が廃るってものだ!」
むさ苦しいが、その心意気にホッとする。
この男気は見習いたいものだな。
「そうか!
もしや【包丁戦士】、緊張しているのか?」
……付き合いが長いだけあって、【槌鍛治士】には隠せないか……
「水臭いじゃないか!
このゲームを始めた時からの仲だろうに!
ワシが作った装備でお前が戦い、お前が採ってきた素材でワシが新しい装備を作る。
一心同体と言っても過言じゃないと思わないが、お前はどうなんだ!」
……そうだな、おっさんと一心同体ってのがちょっと気色悪い気もするがそれでも間違っていない気がする。
ただ、口にするのも気恥ずかしいので腰に提げている包丁を手にして【槌鍛治士】の厚い胸板を切り裂いた。
飛び散る赤色のポリゴンが俺の緊張していた心に染み込んでいき、肩の力が抜けていくような気がする。
この感覚がクセになっている……!
【槌鍛治士】のポリゴンが飛び散るなか、耳に無機質な声が流れはじめた。
【個人アナウンス】
【【包丁戦士】が称号【一心同体との別離】を獲得しました】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が2になりました】
【ability【会者定離】が定着しました】
【【会者定離】の効果でフレンドリストが全て解除されました】
【以後他のプレイヤーとフレンド登録することが出来なくなりました】
……うん、【槌鍛治士】なんか俺は呪われたけど、明日頑張るよ……
……考えるのをやめた。
人格破綻者しか取らないようなものをこんなところで手に入れるとは……
これは誤算ですね……
既にここまで人間性を捨てているプレイヤーがいるとは。
【Bottom Down-Online Now loading……】
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