166話 異次元合流
はい、というわけで再度やって来ました隠し部屋。
今回は書物関係が大量にある部屋だから、こういうのを調査するのが得意そうな【検証班長】を連れてきた。
あと、偶然控え室に戻っていた【釣竿剣士】もついでに着いてきた。
どこまで戦力になるか分からないが、人手は多い方がいいだろうし、全員で探すか。
そう思い俺が手に取ったのは、【燃える料理人】というタイトルの本だ。
あらゆるものを焦がしていくハートフルファンタジー小説……という帯がついて置いてあった。
探し物は【検証班長】に任せて俺は興味がある本を読むとしよう。
……サボっている訳じゃないぞ!!
俺以外の本のチョイスは、【釣竿剣士】が【溶岩魚の生態系】という普通に役立ちそうな本だ。
さっき【釣竿剣士】が釣ってきた魚だし、もしかすると間接的なヒントが出てくるかもしれない……チョイスが案外侮れないな、こいつ。
【検証班長】は本当に読んでいるのか怪しいくらいのスピードで本をパラパラとめくっていき、次から次へと本を手にとっては新たな本に切り替えていっている。
まさかの速読術取得済みという新たな一面を見てしまって、俺の中でただでさえ評価が高い【検証班長】の評価がさらに上がってしまった。
こいつ、主人公か何かじゃないのかと思えるくらいの多才さには俺もお手上げだ。
ちなみに【検証班長】が読んでいる本は【聖騎士ランゼルート伝説】、【封印の森ダンサムント冒険記】、【初級魔法力学入門書】、【鉱物辞典】、【はだしではしろう!】、【磁場風水の作り方】というジャンル、難しさ、分厚さなどバラバラになっている。
手当たり次第読破していっているから、【検証班長】が何を読みたいのかというのは二の次なのだろう。
これだけのペースなら何かしら見つかるだろう。
そんなことを思いながら俺は【燃える料理人】という本を読んでいく。
第一章では雑草を焦がしてみたり、木の葉を焦がしてみたりしているようだ。
焦がしすぎず、絶妙な色合いになるように焦がしていくための苦悩がこれでもかというように綴られているのが中々癖になる。
第二章では、普通にトーストとかしょうが焼き、川魚など食料を焦がすのに挑戦している。
食べたときの風味まで拘るようになったことで【燃える料理人】としての自覚が出てきたようだ。
この章でタイトルが早くも回収されているのか……
この後の章も気になってきたが、次のページをめくろうとしたところで入口から足音が響いてきた。
誰か来たようだな?
「変態お姉さんもう来たんだね~?
あっ、他の人もいるじゃん!
うちは【蛇腹剣次元】のマキ!
よろしくー!」
入るなり自己紹介をかましてきたのはパジャマロリのマキだ。
そして、その自己紹介の流れにのってマキについてきていた他のメンバーも挨拶を始めた。
一人は、見た目が【槌鍛治士】にどことなく似ているゴリマッチョのマックスというプレイヤーだ。
手にハンマーを持っているからパワータイプのプレイヤーだろう。
あっ、そういえば前の次元戦争では俺がしれっと暗殺した記憶があるぞ!
包丁の投擲だったかな?
なお、暗殺だから、このマックスとかいうプレイヤーには俺が原因で死に戻りしたということは伝わっていない。
ここで伝えてもこじれるだけだし、黙っておこう。
もう一人は、黒衣を着た髪の毛がボサボサななんともやる気が無さそうなプレイヤーだ。
猫背で丸メガネをかけた目の下に隈がある青年だ。
端から見ても健康そうな見た目ではないが、こいつ本当に大丈夫なやつなのか?
俺は不安になりながらパジャマロリに目配せすると、頭の上で手をあわせて大きな丸を俺に見せつけてきた。
こいつは見た目はヤバいが、内面はパジャマロリ基準だと許容圏内みたいらしい。
「……インフォと呼んでくれり。
……こう見えて、蛇腹剣次元では解析メンバーを纏めているろ」
語尾が尻すぼみしているからか、はたまた滑舌が悪いからか知らないが、訳のわからない語尾に聞こえてしまう。
まあ、でも、解析メンバーの取り纏め役ならそれなりに機能はしてくれるだろう。
そして、蛇腹剣次元の連中の自己紹介が終わると、俺たちもお返しに簡単な自己紹介をした。
そんな流れが終わったあとには再び中断されてしまった読書タイムだ。
パジャマロリが手に取ったのは、【マンガでわかる!立体起動術!】という学習マンガだ。
立体起動術ってマンガで読んで理解出来るものなのか疑問が浮かんでくるが、ネタとして楽しむものなんだろう。
マックスが手に取ったのは、【栄養ドリンク大全】とかいう筋肉フェチ御用達のタイトルの本だな。
これ以上筋肉を増やしてどうするよ?
インフォが手に取ったのは、【パニックアラカルト】というコメディ系の本だった。
いや、本当に大丈夫かこいつ!?
さてはて。
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