1637話 Atlantis World~確認から始める差異~
「さて、ここくらいの広さの場所ならちょうどいいかな。
今ここで【包丁戦士】君の使うスキルを披露してほしい。
私のプレイしている【Atlantis World Online】と似たようなものがあるのか、あるいは違いがあるのか確認する指標になるかもしれないからね。
……あぁ、そんな目で見なくても分かるよ。
私のスキルも後で教えるからお互い様ということでどうだろうか?」
有無を言わさない誘導でいつの間にか俺のスキルを見せる流れになってしまった。
先に俺の逃げ道を塞いで来てるんだよぁ……
あれを素でやっているのか計算ずくなのか分からないがどちらだとしても警戒すべきものだろう。
……とはいえ、ここで断ってしまったら何も話が進まないし、或いはこの提案自体がサブプランで本命をさらに控えさせているかもしれない。
底知れない深さを感じる相手だからここは変に駆け引きせず、軽くスキルを見せるだけなら構わないだろう。
いいぞ、スキルを見せてやる。
だけど俺の持っているスキルはほとんどが代償が大きいものばっかりだから少しだけな。
「それで構わないよ。
私は君に強要したいわけじゃないからね。
とりあえずは見せられるものだけ見せてもらえたら充分さ」
そういうことなら……
スキル発動!【波状風流】!
俺は足元に風のスプリンクラーを生み出し、そこから発生した風に乗って軽く空に浮かんで見せた。
「なるほど。
人を浮かせられるくらいの強さの風を出せるものを設置するスキルだね。
こういう時に見せてもらえるのは攻撃スキルかなと思っていたけれど、あてが外れたね。
私の勘もまだまだというわけかな?」
というより、俺の持っている攻撃スキルが軒並み重いデメリット持ちばっかりだから軽々しく見せられないだけなんだよな……
もうログアウトするだけのタイミングならどれでも見せたんだが、何が起こるのか分からない状況だと温存しておきたいところだ。
「そういうことなら仕方ない。
【包丁戦士】君の言うようにここで消耗してしまうのは得策ではないからね。
ちなみにだけれども、君のところではどのようにしてスキルを手に入れているのかな」
ボトムダウンオンラインでは基本的にレイドボスを討伐することでスキルを解放していくのが一般的だ。
この【波状風流】も青竜のレイドボスを倒して手に入れたものだ。
「……やはり私のところとは違うみたいだ。
【Atlantis World Online】ではキャラクタークリエイトの時にスキルを選んで、それを育てていく形式だからね。
どのようにスキルが派生していくのかはプレイスタイルで変わってくるから、同じスキルを選んだとしても徐々に他の人とは違うことになってくるわけさ」
スキルを育てていくのか……
ボトムダウンオンラインだとそういう要素ってほとんどないよな。
上位派生があっても種族ごとにしか解放されていない……みたいな縛りもあるし。
それでさっきの約束だが、【アキカゼ・ハヤテ】のスキルも見せてくれるって話だったよな。
何か見せてくれよ。
そう俺が問い詰めると、【アキカゼ・ハヤテ】は肩を竦めながら白状し始めた。
「生憎、私のスキルは人に見せられるものではないんだよね。
私が一番初めに選んだのは【◎持久力UP】【◎木登り補正】【◎水泳補正】【◎低酸素内活動】【◎命中UP】……文字列から効果は察してもらえると思うけど」
こいつ、見事にパッシブ効果スキルだけで固めたキャラクタークリエイトをしてきたのかよ!?
運動能力は軒並み高そうだが、攻撃に関係しそうなのは【◎命中UP】くらいだ。
まさか戦闘要員じゃないやつが単身でここにいるとはな……
というか、しれっと手の内を明かしてきたが実践してないのもあっていまいちどこまで効果があるのか分からない。
少なくともスタミナお化けって呼んでいいくらいには駆け回れることを期待しよう。
というか何でパッシブスキルばっかり選んだんだ?
少なくとも自衛のために攻撃スキルを一個くらい選んでおけば良かったのに……
俺はそう苦言を呈すると【アキカゼ・ハヤテ】は特に困ることなく俺に返答をしてきた。
「私は趣味で風景写真の撮影をしていてね。
リアルでは体を壊して無理が利かず、ゲームの中でその続きをしようと思っていたんだ。
だからこそ、ベストショットを撮るために構成してみたのさ」
なるほどな。
その気持ちは確かに分かるぞ!
俺も料理をするためにこのゲームを始めたわけだからな!
……まぁ、肝心の料理要素から引き離されることも多いから、【アキカゼ・ハヤテ】のようにはじめから特化して動いていた方が本当の意味で自分のやりたいことが出来るのだろう。
「とはいえ、君の表情からも伝わってくるけど私も戦闘に巻き込まれることは多かったよ。
思わぬトリガーを引いてしまったりしたからね。
でも、そういうのも一興だと思っているから楽しませてもらっているよ」
そういうことですよ。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




