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159話 あつい歓迎

 「それで、どうする~?

 うち的にはこのまま扉の中に突入してみてもいいと思うけどっ!

 どうせイベント序盤だし、何か見つけたら試してみたいよね~」


 パジャマロリはそう提案してくる。

 まあ、このイベント限定エリアではじめての情報源だからな。

 ここを見逃すのも下策か。


 ただ、扉が燃えているので、下手すると入る前か入った直後に体力が全損して死に戻りしそうな予感はする。

 この燃える扉はギミックを解除して入るのが前提っぽいし。

 それにあれだな、【ウプシロン=ウーグウイ】戦の途中で手に入れた【堕枝深淵】のデメリットで俺は炎に対する耐性が低下してるらしいから、なおさら生き残る可能性は低そうだ。


 「ダメージの軽減ならうちができるかもよ~?」


 おおっ、それは頼りになるな!

 いよっ、パジャマロリは最高だぜ!


 まあ、それでもレイドボスが出てきたらどっちにしても死ぬだろうし、死んだあとどうするのかくらい聞いておくか。

 別の次元のプレイヤーが、死んだ後同じ場所にリスポーンするとは思えないし。


 「うちはゆっくり楽しく回れたらいいから、またここに来ると思うよ~

 変態お姉さん……【包丁戦士】お姉さんが良ければここで合流して散策しようよっ!」


 だーれが変態お姉さんだ!

 俺は可憐な乙女だぞ!(?)


 というのは置いておいて、合流するのは悪くないな。

 俺の次元のやつらとは別行動するって決めてるし、代わりにパジャマロリに同行してイベントを進めるのは妙案ですらある。

 こいつも俺と同じMVPプレイヤーだからな。

 実力も申し分ないし、断るの意味もあまりないだろう。


 よしっ、死んだあとはここで集合な!

 

 そんな俺の返答にちょっと蠱惑的な笑みを浮かべてパジャマロリは口を開く。


 「当たり前のように死ぬことを考えてるってことは、うちの次元と同じくらい包丁次元もプレイヤーが死んでるってことだよね~

 それなら包丁戦士お姉さんともプレイスタイルはあんまり変わらなさそうだし安心だね~」


 あっ、ちゃっかり俺の次元の情報を手に入れやがったなこいつ……

 まあ、こいつも情報を開示したから不意打ちは許してくれということなのかもしれないが。  


 どっちにしても、プレイスタイルの違いでドン引きすることがないのはいいな。

 このプレイヤーに人権がないゲームで死を恐れるタイプのプレイヤーが多くいる次元があったときには、俺たちの行動は狂気に感じられるだろうしな。

 

 「そうだね~

 うちも死ぬのに慣れちゃったからもう何とも思わないけど、慣れてないプレイヤーだといらないトラブルとか起きそうだよね~」


 そうだな。

 まあ、そんな仮定の話はここまでにしておこう。

 机上の空論でしかないし、今は考えるだけ無駄だろう。


 パジャマロリはさっき、スキルで炎の扉から受けるダメージを減らせるって言ってたし、早くスキルを発動してもらおう。


 「はいはーい。

 じゃあいくよ?

 スキル発動【水流万花】だよ~」


 パジャマロリがスキルを発動すると、パジャマロリの周囲三メートルくらいに水流の輪が形成され始めた。

 そして、時間経過で水流の輪がさらに形成されていく。

 水流の輪は花弁のような見た目をしていて、時間が増えると満開に近づくということなのだろう。


 「このスキルは底無し沼にいた水竜のレイドボスを倒して手に入れたんだよね~

 このスキルを見たのははじめてみたいだし、包丁次元ではまだ【底無し沼の水竜】を倒して無さそうだねっ?」


 【底無し沼の水竜】?

 いや、俺の次元で倒したのは【底無し沼の棘亀】なんだが?

 というか【底無し沼の水竜】とかいうレイドボス、俺の包丁次元だと見たことも聞いたこともないぞ。


 「えっ、そうなんだね~?

 もしかすると、レイドボスも次元によって違うのかな~

 そうなると、手に入るスキルも少し変わってるのかなっ?」


 パジャマロリの言う通り、俺たちの包丁次元で【底無し沼の棘亀】……【ウプシロン=ウーグウイ】を倒して手に入れたスキルは【花上楼閣】だ。

 共通しているのは……花ってことか?

 水辺で花が育ちやすいからとかか?


 まあ、それはいいか。

 とりあえずパジャマロリと炎の扉へ突入!

  


 水流でできた花弁が物凄い勢いで蒸発をし始めている。

 パジャマロリはその熱気を水流で誤魔化しながら、扉の取手に手をかけた。

 そして、ジュウジュウと手を焼くのと引き換えに扉を開け放った。



 そして、扉を開け放つと脳内に無機質な声が鳴り響きはじめた。


 【Raid Battle!】



 【炎上屋敷の怪主人】



 【レイドバトルを開始します】



 俺とパジャマロリは部屋に突入した直後、部屋の熱気をモロに浴びてレイドボスの姿を拝むことなく死に戻りした。

 頼りにしていた【水流万花】による防御も扉を開けるのにほとんど消費していたので、部屋から溢れ出る熱気を受け止めきることなく蒸発してしまったのだ。

 結果として俺とパジャマロリはその熱気をダメージとして受けることになったんだろう。



 だが、このイベントのレイドボスのレイドクエスト名が分かっただけでもいい感じのスタートだ!

 

 ……この感覚、はじめて新緑都市アネイブルでジェーと対面したときに似てるな。

 ワクワクしてきたぞ!








 初心を忘れないのは大事なことです。


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ええっと蛇腹剣次元は四霊で底無し沼の水竜は応竜かな?なんか 泥水で育った蝮が長い時をかけて応竜になるみたいなのをどっかで見た気がするから。鳳凰だし [一言] 四属性?のスキルの名前から…
[良い点] どの次元でも変わらなそうな人権の無さ [気になる点] 竜と亀の共通点でもあるのか それとも何の関係もなく次元ごとに違うのか 底なし沼がもう一つある可能性もあるか? [一言] 主人って絶対ボ…
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