157話 ルール説明と方針
【上位管理AIである私、【菜刀天子】からの今回の次元戦争のルールについてのアナウンスです。
底辺種族の矮小な頭で理解できるか分かりませんが、きちんと聞くように】
やっばり【菜刀天子】だったか。
ここからは、フラゲ時点で教えられなかった細かい情報まで教えてくれるだろう。
まあ、三種類のポイントについての説明や、レイドボス討伐を他の次元のプレイヤーと同時に行うということをはじめに説明してくれたが、俺はもう事前に聞いていたので流し聞きしながらキョロキョロと周りを眺めたりしていた。
そして、次からは俺も聞いていなかった説明が始まるようだ。
【このイベント限定エリアには各所に旗が隠されています。
その旗を持っている次元のプレイヤーはレイドボスに対して、特攻ボーナスが付与されます。
旗の数を増やしていくと特攻ボーナスの数値が大きくなっていくので、このギミックを活かしてレイドボスと他の次元のプレイヤーたちに優位性を保ったまま攻略を進めましょう】
「これは面白い試みです。
陣営が分かれているからこそ、次元ごとに格差を作れるギミックを配置したというわけだろうね」
そうだろうな。
せっかくの次元ごとの対抗戦なんだ、こういった一律バフ以外の頑張った次元に頑張っただけ見返りがあるのはいいことだ。
そうしないと他の次元に寄生するフリーライダー次元も現れかねないからな。
このゲームの運営にしてはいい調整だ。
【それと、このイベント限定エリアにはレイドボスに関する様々な情報が隠されています。
先程もポイントについての説明をした際に触れましたが、この情報を見つけることで解析貢献ポイントが加算されます。
あなた方包丁次元のプレイヤーの中だと【検証班長】がこのポイントを積極的に狙っていくことになるでしょう。
なにせ戦闘力がほとんどありませんから……】
「図星過ぎて、返す言葉もないね……」
「頼りにしてますよ【検証班長】さん。
ちゃんと、戦闘をしない生産プレイヤーにも配慮されたいい仕様ですね。
私のような戦闘もやっていく生産プレイヤーなら問題ありませんが、【検証班長】さんのような司令塔として動くプレイヤーだとダメージ貢献ポイントは増えませんからその点の配慮ですかね?
どちらにしても、情報を集めないとレイドボスには勝てないというのは、過去のレイドボスたち討伐でよく分かっていることですから確実に集めていきましょう」
そうだな、油断せずにいこう。
今回はイベント限定レイドボスという話だし、完全に初見の相手だ。
それに、一緒に戦う仲間も他の次元のプレイヤーという勝手のわからない連中だからなおさら気を引き締めていかないとだめだろう。
「そうですね。
ですが、他の次元のプレイヤーを完全に仲間だと思っていけないのが今回の次元戦争のルールだからね?
おそらくだけど、エリアの探索中やレイドボス討伐中に他の次元を妨害するパターンも考えられるよ。
なにせ、集めたポイントで順位が決まるんだから……
他の次元のプレイヤーにポイントが渡るようなタイミングを狙って邪魔してくる可能性っていうのは充分にありえるし、逆にこちらからそれを積極的にやっていくというプレイング方針にするというもの1つの手だよ?」
【検証班長】は俺を真っ正面に見据えながらそう言い切った。
「妨害ですか……?
たしかに私たち包丁次元には他のプレイヤーの邪魔をしたり、迷惑をかけたりするのに躊躇がないプレイヤーがいますからね……」
【釣竿剣士】も【検証班長】を見習うかのように俺を真っ正面に見据えてそう言った。
目が若干ジト目気味なのは気のせい……じゃないよなぁ……
二人が言うような他のプレイヤーの邪魔をしたり、迷惑をかけたりするのに躊躇がないプレイヤーというのは間違いなく俺のことだろう。
俺はプレイヤーキラーだからな!
自分の次元でも日常的に【モブ】プレイヤーたちをバッサバッサ切り伏せたり、消し炭にしたりしているのだ。
それが他の次元プレイヤー、しかも、ポイントを競い合う相手となればプレイヤーキラーとしてなおさら遠慮なくプレイヤーキルに勤しめるだろう。
だが、俺の目の前にいる二人の表情は芳しくない。
おそらく、妨害をし続けた先にある状況を考えているのだろう。
このイベント限定エリアにいるプレイヤーたちが皆で足を引っ張りあった結果、最終的にレイドボスを倒せないことになりかねない。
そして、妨害を率先して行っている次元は疎遠にされるし、いずれ粛清されるのがオチだからな。
それをやるかやらないかのメリットとデメリットを天秤にかけてどうするのか悩んでいるんだろう。
……それなら……
今回は正義の前線攻略組路線で次元戦争を進めていこう!
どうせ今回のイベントだとレイドボスに攻撃したダメージしかダメージ貢献ポイントに換算されないってわかってるんだからな。
それなら、プレイヤーキラーとして他の次元のプレイヤーに攻撃を仕掛けるよりも、ひたすらレイドボスに攻撃した方がお釣りがきそうだ。
「ちょっと安心しました。
これで妨害に専念しようと言われたらどう説得しようか考えていたところだよ。
妨害はハイリスクローリターンだから、今回のイベントだと不向きだからね。
それでもやってくるところはあるだろうけど」
【それと、今回最下層順位イベントエリアは他のイベントエリアに比べてパワーが劣っていると判断されたので4つの次元が合同で参加します。
ここ以外のイベントエリアだと3つの次元合同で行いますが、この順位の次元だけでレイドボス討伐は難しいと運営は考えたみたいです】
なるほど、それならちょっと気は楽になるのか?
そんな楽観的な思考になっていた俺に待ったをかけるかのように【検証班長】が【菜刀天子】に質問する。
「ですが、参加する次元が1つ増えるということはそれだけ手にはいるポイントが相対的に減るということだよね。
与えられるダメージの上限や、情報の限りなどあるだろうし。
その辺りの補填はされるのでしょうか?」
「たしかに言われてみるとそうですよね」
全くその辺り考えてなかったわ。
流石は【検証班長】、細かいところまで気がつくなぁ。
【そこは、バランスを取ってポイント取得の倍率を弄ってあるので安心してください。
底辺種族【検証班長】は底辺種族にしては本当に頭が回りますね】
……なんか誉められててジェラシーを感じてしまう。
【菜刀天子】に対して彼氏面の気分だ。
……いや、俺女だけどさ。
それでは次元戦争のスタートです。
【Bottom Down-Online Now loading……】




