156話 次元戦争前の顔合わせと推測
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はかなり久しぶりの次元戦争イベントだ!
前回は蛇腹剣次元というロマン武器の使い手のパジャマロリや、他の次元の天子と戦えたり、同系統の別スキルを見れたりしたので、わりとワクワクしていたりする。
「ちゃんと来ましたね。
他の次元戦争参加者も既にログインしているようですし、ささっとイベントエリアに移動するとしましょうか」
そういうと【菜刀天子】は黄髪を揺らめかせながら腰に差していた中華包丁を天に掲げて、包丁から力の奔流である光を煌めかせ始めた。
「【上位権限】【Battle field】展開!」
その力の奔流に俺は飲み込まれた。
俺を包み込んだ光は、攻撃スキルを発動する時に放たれる物々しい光とは異なり、柔らかな心地のする光だった。
【Battle field 特異次元 燃尾之急の鉄心屋敷】
俺が転送されてきたのは大きな屋敷のあるエリアみたいだ。
その中でも俺は大きな寝室のような部屋が初期位置らしい。
心なしかちょっと暑い気がするが、許容範囲内だろう。
俺は服の襟元をパタパタさせて、申し訳程度に膨らむ胸元へ風を送る。
こういうときは胸が無い方が得だよな!
やったぜ!
……やったぜ……はぁ……
そうやって一人で一喜一憂しながら待機していると、2つの光が俺の目の前に現れた。
「どうも。
イベント限定のエリアは初めてですけど、なんだかここ暑いですね?
胸元に汗がたまって蒸れてきて痒いんですけど……
何故このゲームの運営はこんなところまで再現したのでしょう。
生産的ではないのに……」
そうやって俺と同じように襟元をパタパタさせて大きく主張する胸元に風を送っているのは、背中に釣竿を背負っている少女の【釣竿剣士】だ。
おおん?
巨乳の自慢かそれは??
俺に喧嘩売ってるのかな?
そう思えてきたが、今回はひんにゅーの方が圧倒的に有利なのでその優位性に免じて我慢してやろう。
「我慢するのはいいですけど、わざわざボクたちにそれを言わなくてもいいよね?
男のメンバーがボクだけなのに、その系統の話題をされると居心地が悪いのですが……
というかやっぱり皆もここ暑いと思うよね?
燃尾之急の鉄心屋敷というくらいですから火に関するエリアなのだろうけど。
燃尾之急という言葉は燃眉之急という四字熟語ももじったものだとすると、この屋敷の至るところが燃えていそうだ」
流石は【検証班長】!
エリアの名前を聞いただけでエリアの状態の考察を始めるとは……
燃眉之急とかいう四字熟語知らなかったし、博識だなぁ……
俺が知ってるのは遺跡の名前くらいだぞ。
「遺跡の名前に詳しい人も中々いないだろうけど?
もしかして【包丁戦士】さんはリアルでは歴女だったりするのかな?」
リアルの詮索はバッドマナーだぞ?
……いや、プレイヤーキラーの俺が言うのもあれだけど。
まあ、趣味について聞くくらいならセーフか。
でも、趣味で知ったわけじゃないんだよなぁ……
必要に迫られてというかなんというか……
「あっ、深い事情までは聞かないので安心してください。
そこまで踏み込むのはバッドマナーというのはボクも理解してますから。
とはいえ、気になりはするけどね」
まあ、端から聞いたら気になるだろうな。
俺も同じく気になっただろうし。
そんな俺の歴女疑惑について話していると、後ろから【釣竿剣士】が横槍を入れてきた。
「それはどうでもいいですが……
それよりも、さっき【検証班長】さんが言っていた四字熟語の燃眉之急というのはどのような意味合いの四字熟語なのですか?」
たしかに気になるな。
何かの参考になるかもしれないし聞いておきたいところだ。
「そうですね一応話しておこうか。
燃眉之急というのは、危険がすぐ近くまで迫っていて非常に緊迫した状況のたとえで、眉が燃えるほど近くに火が迫り、急を要する事態であることを現した四字熟語です。
この言葉の意味を知っていると、この暑さの原因もなんとなくは推測できますよね。
……もしかすると、言葉は火の方の意味合いが暑さに対してのブラフで、危険がすぐ近くまで迫っていて非常に緊迫した状況のたとえの方が実情の可能性はあるだろうけど」
そこまでの考察を……
まだイベントの詳細一切説明されてないのになんてやつだ……
心の中で【検証班長】を讃えていると、俺たちがいる部屋に声が鳴り響き始めた。
脳内ではないので、いつもの無機質なアナウンスではない。
……この声は、【菜刀天子】か。
私です。
【Bottom Down-Online Now loading……】




