154話 メンバー集め終夜
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
【釣竿剣士】と別れた後も、なんだかんだ色々なやつに声をかけてみたが収穫は一切なかった。
これ以上メンバー集めに固執してもゲームのプレイに支障が出そうだから今日でメンバー集めについては最後にしようと思ってる。
そして、その最後を飾るのは……
というわけでやって来ました草原エリア。
新緑都市アネイブルにプレイヤーの多くが移った後も、ここで活動を続けているプレイヤーはそれなりにいる。
なぜなら、それぞれが作り上げた施設がかなり残っているからな。
新緑都市アネイブルのレイドボスだったジェーを倒すまで、ほとんどのプレイヤーが草原エリアをメインに行動していたから、自然とそうなる。
かくいう俺も仮組の家がまだ新緑都市アネイブルに残っていたりする。
それだけこの包丁次元のレイドボス攻略が遅かったってことなんだろう。
そう考えると正直悔しいが、その名残があるからこそ草原エリアの施設に関しては他のエリアに勝るほど整っているってわけだ。
俺が来た草原エリアにある鍛治場もその名残の1つだ。
草原エリア……鍛治場……俺の知り合い……という羅列の時点でなんとなくばればれのような気もするが、まだみんなが分かってない体でいく。
蒸し暑い鍛治場を我が物顔で進んでいくと、カンカンと鉄を叩く音と、バチバチという火花が飛び散る音が響き始めた。
いや、響き始めたというよりは音の元に俺が近づいているということだろう。
そうして音源に近づいていくと、1つの人影があった。
座って鉄を叩いているが、その状態でもかなり大きな人物だと分かるほど大柄な人影だ。
その人影は俺が部屋に入ってきたことに気がつくと、今やっていた作業を止めて俺の方に振り向き立ち上がった。
見上げるほど高いその人物の身長と、全体的に筋肉隆々とした見事なシルエットを持つ人が俺に話しかけてきた。
「おっ!
【包丁戦士】じゃないか!!!
この前のレイドボス【ウプシロン=ウーグウイ】攻略戦で最後まで大活躍だったみたいじゃないか!
ワシは途中で死に戻りしたから結末までは見てないが、鼻が高いぞ!!」
この暑苦しい見た目と話し方は、ガチムチおっさんこと【槌鍛治士】。
俺の髪留めとか、服装、武器など様々な面で俺のサポートをしてくれている暑苦しいやつだ。
そして、俺の要請に応えてレイドボス戦に参加してくれたり、システムに俺と一心同体という謎の認定をされた相棒でもある。
まあ、相棒と言っても俺が普段から特定の誰かと過ごすことをしてないので、どちらかというと選手とサポーターみたいな立ち位置かもしれない。
俺が選手で【槌鍛治士】がサポーターな!
「その認識で間違ってはいないが、いったい誰に説明しておるのだ!?
全く、相変わらず【包丁戦士】は訳のわからないことを言うことが多いな!」
だろう?
俺のスキルとか種族とか色々増えたり変わったりしたが、俺というプレイヤーの本質はそんなに変わってないから当然だ。
「まあ、それはわかった!
それで、ワシのところになんの用があるのだ!?
武器や服装のメンテナンスか!?」
あっ、それもあとでやってもらおうか!
俺の装備って新緑都市アネイブルレイドボス攻略の前で、強化の更新が止まってたりするからなぁ。
色々な場所とかイベントとかで増えた素材を使えば少しは戦いやすくなるかもしれないし、この機会にやってもらおう。
だが、俺の本当の目的はそれではない。
「それなら本当の目的はなんだ!!
教えてくれ!!」
少しだけじらしてから俺は口を開く。
俺が作ったクランにメンバーとして入ってくれ!
クランに鍛治系統の作業ができるやつがいたら絶対強みになるからな。
……それに、俺たち相棒だろ?
お前を誘わなくて誰を誘うっていうんだよ。
そういう俺の言葉に感極まったのか、目をうるうるさせて男泣きをする【槌鍛治士】。
いや、男の涙みても役得感が全く無いんだが……
見るなら美少女の涙の方が圧倒的に目の保養になるし。
そんな俺の内心を知らない【槌鍛治士】は泣きながら俺に声をかける。
「うぐぐくぅ!!
ワシは感動したぞ!!
こういう関係も悪くない!!
本当はワシの鍛治仲間からもクランの勧誘が来ていたが、それを断ってお前のクランに入るとしよう!!
精一杯頑張ってやるぞ!!」
えっ、マジか!
これはやったぜ!
あと少し遅かったらその鍛治クランの方に行ってた可能性もあるのか。
いや、こいつのことだそのクランに入った後でも俺のクランに入ってくれた気がする。
それくらい俺は【槌鍛治士】のことを信頼している。
【槌鍛治士】の言葉に感動して興奮した俺は、腰に提げていた包丁を取り出し、胸元に構えるとそのまま目の前にいる【槌鍛治士】に向かって振りかぶった。
ここで放たれるのは俺が最も得意としている斬撃の袈裟斬りだ。
今回はスキルも起動した。
使ったのは俺が愛用する、飛翔する斬撃を放つスキル【フィレオ】だ。
代表戦のような魑魅魍魎が集まる場所にいるプレイヤーたちならともかく、俺の目の前にいるガチムチのおっさんは生粋の生産プレイヤーだ。
包丁の軌道から逃れることが出来ず、左肩から右腰にかけて見事に切り裂くことに成功した。
そして傷口から流れ出る光の粒子を恍惚な表情で眺める。
あぁ……やっぱりこいつから流れ出る赤色の粒子は他と違って、熱く清涼な力があって見るだけで感動ものだなぁ……
だから止められないんだよ、プレイヤーキル……
またこれですか……
【Bottom Down-Online Now loading……】




