153話 北の勧誘
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は新たな仲間を探しにイクゾー!
というわけでやって来ました沼地エリア……【無限湖沼ルルラシア】。
この沼地エリアを拠点とするプレイヤーはかなり少ない。
何故なら、足場が沼でぬるぬるしているし、臭いもどこか土臭いというか腐敗臭のようなものが漂ってるからな。
そんなエリアに住み着きたいプレイヤーなんて一握りしかいないというのも当然だろう。
ここのエリアに住み着いているのは無限湖沼ルルラシアを中心に検証を重ねている【検証班】の沼地エリア支部メンバーと、泥細工を楽しむ陶芸士、理想の干潟を作ろうと悪戦苦闘をしている庭師という一癖も二癖もあるやつらだ。
本当に沼地でやってはじめて効率が上がることをやるプレイヤーくらいしかいない。
そんな無限湖沼ルルラシアまで俺が出向いてまで会いに来たプレイヤーは【検証班】のメンバーでも、陶芸士でも、庭師でもない。
「どうかしましたか?」
うわっ、急に背後から声かけてくるなよ!?
毎度毎度ビックリするだろ!?
唐突に背後からヌッと現れて声をかけてきたのは、助っ人プレイヤーとしても名高い(俺比較)花飾りを頭につけたスタイルのいい大学生くらいの見た目の少女【釣竿剣士】だ。
なんで毎回背後から現れるんだこいつは……?
「当然ですよ、生産プレイヤーなら!
……あっ、【ウプシロン=ウーグウイ】の攻略支援助かりました。
【包丁戦士】さんが起こしたユニーククエストのお陰でかなり楽をしてクリア出来た気がしますよ」
謎の生産プレイヤーへの拘り……を立派な胸を張りながら堂々と言い切る【釣竿剣士】。
本当にこいつの生産プレイヤーへの認識はどうなっているんだろうか。
生産プレイヤーだからといって、影のように気配を消して背後に忍び寄るという芸当が出来るやつは滅多にいないし、なんなら戦闘プレイヤーの方がそんなことをできるやつがいる気がするのは俺だけか?
沼地、は一応水辺のエリアという位置付けなので、魚が泳いでいたりする。
そんな魚を釣って楽しんでいるプレイヤーがこの【釣竿剣士】だ。
ことあるごとに生産プレイヤーであるということを教えてくる。
実際、ルル様に【ウプシロン=ウーグウイ】の甲羅とか破壊してもらったり、三体のクランメンバーの亀を葬って貰わなかったらあれだけ下準備したのに負けてたかもしれないのは俺もそう思う。
でも、【釣竿剣士】による【ウプシロン=ウーグウイ】の名前の看破や、特殊防御権限の剥奪とかが無かったら、流石のルル様でも攻めあぐねていたのは間違いない。
あそこまで特殊防御権限を剥がしてなんとかギリギリダメージが通るようになってたし、ルル様も状態異常攻撃や即死攻撃みたいな搦め手が得意なタイプだから、なおさらあのルル様が助っ人に来てくれるユニーククエストが【釣竿剣士】のおかげで有効的に使えたってものもある。
だからこそ、今回の勝利は俺だけでも【釣竿剣士】だけでもクリアできなかったみんなの勝利ってやつだ!
「【包丁戦士】さんからそんなまともそうな言葉が聞けるとは思ってなかったですね……
……ですが、その通りです!
皆が全力を尽くしたから私の狙っていた沼地エリアを【ウプシロン=ウーグウイ】から解放することができました!
肩の荷も降りたというわけです」
あー、その、なんだ、肩の荷が降りたところ悪いが、相談があるんだよなぁ。
「なんですか?
遠慮なく言ってください!」
【釣竿剣士】は立派な胸を張りながらそう応える。
おっ、いいのか?
実はだな、お前を俺のクランに誘おうと思ってな!
普段から何度か戦ったりしてお互いの強さも分かってるから、戦闘面でお前が強いのはよーく分かってる。
俺とお前は闘技場イベントの決勝戦のカードってこともあるし、この包丁次元のプレイヤーの中でもトップクラスの戦闘力って言っても強ち間違いない。
だけど、東と南のトッププレイヤーの【風船飛行士】と【トランポリン守兵】お嬢様がそれぞれ元々所属していた集団をそのままクランにして、個人の強さだけじゃなくて、集団の強さも両立している。
それに対して、俺もそうだが、北のトッププレイヤーの【釣竿剣士】がどこか固定の集団に入っているという話を聞いたことがないからな。
「俺はソロプレイヤーだ!」と言い切るのもそれはそれで悪くないんだが……
「歯切れが悪いですね。
あなたがソロプレイヤーとして活動してもいいと思っているのに、あえてクランを作ろうとしている。
つまり、次のイベントは新機能クランを使った集団イベントということですか?」
おっ、正解だ!
流石は生産プレイヤー【釣竿剣士】!(?)
作って損は無さそうだし、作ってみることにした。
イベント終了後の活動方針は不明だけど、イベントくらいは頑張ろうと思ってる。
あと、今のところメンバーはボマードちゃんと俺だけだから偶然だけど女子統一になってるぞ!
まあ、俺としては男だろうが女だろうがどっちでもいいので、俺が認めたやつなら全員受け入れるつもりだが……
「なるほど、まだまだメンバー集めの途中ということですか……
それだけ人数が少ないのなら【包丁戦士】さんが必死になるのも頷けます、なにせイベントが絡んでくる集団をほとんど形成できてないですからね……
生産プレイヤーとしては手際が悪すぎませんか?
もっと創意工夫と生産性を両立して動いてくださいよ!」
耳が痛くなる話だ……
出遅れたのは事実だし、反論の余地がないぞ……
創意工夫と生産性については今回の場合どういう扱いなのかわからんが……?
「ですが、あなたの話を聞いて私は決意しました!
私も自分のクランを作ります!!」
ええっ!?
ここは仲間になってくれる流れじゃなかったか?(困惑)
「他のエリアのトッププレイヤーたちがそれぞれクランを作っているのなら、私も自分のクランで切り盛りしてみたくなっただけです。
一応、【ウプシロン=ウーグウイ】攻略のときの一部タンク系プレイヤーや、沼地エリアから動かないプレイヤーの当てがありますから最低限は集まるでしょう」
ま、マジかー。
八割くらいの確率で仲間になってくれると思ってきてみたが、まさかの展開になってしまった……
どうしようもないのでおとなしく退散するとしよう。
俺は【釣竿剣士】にパイタッチを仕掛けて、流れるように釣竿一刀流【抜刀斬】によって切断され死に戻りした。
見事な切れ味。
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