151話 東と南の勧誘
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日も先日に引き続きクランメンバー集めにでかけるぞー!
「今日はどこにいくのですか?
……まあ、そんなに当ては多くなさそうですが。
所詮、劣化天子の【包丁戦士】ですから」
だから劣化天子って言うなよ!
……そうだなぁ、居場所を知ってるプレイヤーだと……
「ファァァァwww
なwんmでw俺を誘いに来るんだよwww
見た目はいいのに行動が読めなさすぎるンゴwww」
俺が来たのは新緑都市アネイブルにあるほのぼの市場の一角に店を構えているトッププレイヤーの居場所だ。
……【風船飛行士】のバルーンアート店だな。
こいつは渓谷エリアのトッププレイヤーだが、プレイヤーが一番多く集まる新緑都市アネイブルの市場で店を出しているのだ。
これはみんな知ってることだけど。
あんな僻地にある渓谷エリアだと、せっかく作ったものを買ってもらえる機会は少ないからなぁ……
無理して自分がメインで活動している場所で売ることはないだろ。
そういう点で首都機能を果たしている新緑都市アネイブルで店を出すのは合理的だ。
その割りきりの良さを見込んでの勧誘だ!
あと、回避、遠距離攻撃メインだが腐ってもトッププレイヤーだ。
直接戦闘をしてみてお前が欲しいと思ったってわけ。
どうだ、納得したか?
ん????なんか言えよ!
詰め寄るように理由を並べて、【風船飛行士】に追い立てる。
……もちろん、脅迫のための包丁を喉元に突き立てるのも忘れてないぞ。
包丁は交渉(?)の基本だからな!
そんなどこからどう見ても恐喝されている【風船飛行士】は、慌てずにいつもの調子で返答をする。
「ちょっwww
前々から思ってたけど、サイコパススギィ!
ナチュラルに包丁を突き立ててくるとかエロゲーのヤンデレでも中々見ないんだがwww
テラワロスwww」
泰然とした態度(?)で応答をしつつ、脇に置いていた風船を手に取りながら、さらに言葉を紡ぐ。
「だwがwしwかwしw
俺は冒険者ギルドのイツメンを集めてクランを作ったンゴwww
ザマァwww
あっ、お前が知ってるやつだと【ブーメラン冒険者】と【短剣探険者】も俺のクランに入ってるからwww
ボッチ乙www
では諸君、サラダバーwww」
話をしている最中にも手にとっていたチュートリアル武器である風船で浮かび上がっていた【風船飛行士】は、俺の包丁による恫喝から逃げ去るかのごとく空中へと消えていった。
……あいつもダメだったか。
というか俺とあいつの絡みってほとんどないし、勧誘に成功した方がおかしいことになってたかもしれないか。
まあ、どっちにしても勧誘失敗したのは事実だし次のやつがいる場所に行くか!
連続で断られて若干心が折れてきている俺は、とぼとぼと足を進めるのだった。
次は岩山エリアだ!
俺的にはニワトリカラスに蹴られたり、登山したりした記憶くらいしかないエリアだけどそんな岩山エリアに俺の目的の人物はいる。
「あら、【包丁戦士】さまではないですこと?
岩山エリアであなた様とお会いするのは珍しいですわね!
ここへはどのようなご用心でいらっしゃいまして?」
そう、俺が岩山エリアを訪れたのはポリンこと【トランポリン守兵】お嬢様を求めてだ!
【風船飛行士】や【ペグ忍者】もそうだったが闘技場イベントで直接対決したプレイヤーは軒並み強かったからな。
あの中から一人でもメンバーに入ってくれるやつがいたら心強い。
というわけで、ポリンお嬢様!俺のクランに入ってくれ!
俺はさっき【風船飛行士】にやったように、包丁を喉元に突きつけた。
ポリンお嬢様は一瞬驚いたような表情を浮かべたが、背負っていたトランポリンをすぐさま振り下ろして、俺の包丁をトランポリンの弾力で弾いた。
……やるな!
流石はタンク職系のトッププレイヤーだな!
この場で見てやっぱりお前が欲しいと思った!
「照れることを真っ正面から言ってくれますわね!?
ワタクシを求めるプレイヤーはこれまで何人か来ましたが、あなた様ほどストレートな物言いをした人はおりませんでしたわよ。
ですが、ワタクシも既にクランを作っていましてよ?
ワタクシと、執事とメイドたちの集まり【お屋敷組】というクランですわ!
もしよろしければ、あなた様がワタクシのクランに入りませんこと?
歓迎しますわよ!」
なんか逆に勧誘されたんだが?
けっこう強かな性格のお嬢様だよな、ポリンって。
というかやっぱりお嬢様ロールプレイを貫徹させるために、他のプレイヤーの囲い込みをし始めたか。
お嬢様だけしかいないのってお嬢様っぽくはないからな、メイドや執事がいて更に映えるってのは間違いない。
俺も執事プレイを一時的にやってたから誘われたんだろうな。
だが、俺はせっかくならリーダーやりたいし、断らせてもらうわ。
他を当たってくれ。
「あら、残念ですこと……
ですが、気が変わりましたらまたお声かけくださいませ!
いつでも歓迎しますわよ~」
気が向いたらな~!
そう叫びながら、ポリンお嬢様のトランポリンによる抑え込みから脱出して逃走した。
悔しいが今回は俺の負けだな。
……というか、今日もメンバー集まらなかったな……
本当に入ってくれる人いるんだろうか、真面目に不安になってきたぞ。
いないのではないですか?
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