149話 まさかの種族転生
「さて、さっそく儀式を始めるとするかの。
準備はよいか?」
オッケー!
さあ、始めちゃってくれ!
「承知した。
それでは【深淵域の管理者】とて儀式を執り行おう!」
ルル様がそういうと、何処からかいつもより低い声色が響き始め、周囲に力が集まっていくのを感じる。
【混沌流転の世なれば】
【それを糧とする外法の主あり】
【清廉潔白の君主と獣に挑むべく】
【その身に祝福を施さん】
【【上位権限】【Tribal reincarnation】展開!】
相変わらずよくわからない種族転生の祈りの言葉を唱え終えると、ルル様の脚?触手?から黒いもやが放たれて俺の身体を包み込んだ。
そして、ルル様と俺の足元に魔方陣のようなものが浮かび上がり始めた。
魔方陣のようなものから、黒く濁った文字が身体を拘束するように纏わりついた。
その文字が俺のアバターに宿業を刻み込むかのごとく、溶け込んでいき俺の身体を作り替えた。
そして、身体の変化を確認しようとすると脳内に無機質な声が鳴り響き始めた。
【個人アナウンス】
【【包丁戦士】が【深淵種族】に種族転生しました】
【ability【会者定離】が起動しました】
【種族との別離とは、生の無常なり……】
【【包丁戦士】が複合種族の【深淵天子】に種族転生しました】
【【包丁戦士】に宿業【聖獣を担うが故に】が刻まれました】
【【包丁戦士】の宿業【深淵と敵対する】が解除されました】
【【包丁戦士】に宿業【深淵へ誘い】が刻まれました】
【【包丁戦士】に宿業【聖邪の境界を流転させる】が刻まれました】
【【包丁戦士】が称号【聖邪の天秤】を獲得しました】
【称号の効果で【Deification】!】
【【包丁戦士】の神度が3になりました】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が24になりました】
【【包丁戦士】が称号【天の邪鬼】を獲得しました】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が25になりました】
【運営からの個人アナウンス】
【複合種族は2つの種族の特徴を兼ね備えた特別な条件でしか解放されない、珍しい種族です】
【2つの種族の特徴を持っているので、片方の種族では出来ないようなことも出来るようになります】
【その一方で、種族としての濃さが結果的に薄まってしまっているので正統な種族転生よりも、突出した特徴は無くなってしまいます】
【上記の点をご了承くださいますよう、よろしくお願い致します】
……あの?
俺は想定外のことに驚き動けないでいる。
光と闇が合わさり最強に見える!とか言ってたけどまさか本当に光と闇が合わさった種族になるなんて思ってなかったぞ!?
普通に深淵種族になると思ってたのに、まさか複合種族の深淵天子とかいうコンパチ種族に転生することになった。
これも 【ability【会者定離】が起動しました】とかいうアナウンスがあったように、ability【会者定離】が悪い!
このability、悪さしかしてないな????
俺が思考停止状態になっているのを見て、声をかけてきた。
「ふむ、複合種族か。
新緑都市アネイブルでお前たちが戦ったレイドボス【寄聖獣 ジェーライト=ミューン】も今のお前と同じように複合種族だったのは知っているかの?
寄聖獣という種族は深淵種族と聖獣の複合らしい。
今回の場合は深淵種族と天子なので、深淵天子となったのであろう。
……我としても、いささか不満もあるが、両方の力を使えるというのはプレイヤーとしては面白いのであろう?
素直に喜ぶがよい」
寛大なルル様の言葉に俺は感激した。
そうだな!
せっかく天子と深淵種族両方の特徴を手に入れられたんだ。
今まであったスキルの弱体化補正とか、仕様の違いとかを払拭できるだけでも御の字か。
俺としてはせっかく深度が上がってきてたから、深淵種族寄りのほうが嬉しいけど……
頑張ってくれた【菜刀天子】と【ミューン】には悪いが、天子はサブみたいなものだ。
他のオンラインゲーム風に言うのなら、メイン職深淵種族サブ職天子……みたいなものか。
いや、実際には職じゃなくて種族だけど。
「それにしても、中々歪な宿業を刻むことになったのう?
深淵種族でありながら、聖獣と敵対しないとは……
そのような生き方を出来るのは、プレイヤーであるお前たちくらいであろう。
【聖邪の境界を流転させる】というのは少し微妙であるが……
我の宿業と同じであれば【深淵顕現権限】や【深淵纏縛】のデメリットをかなり打ち消すことができたであろうに……
どっちつかずの種族の宿業であるならば、これも致し方ないか」
えっ、なにそれ!?
絶対それの方が良かったじゃん!
なんだよ深淵天子って。
めっちゃ損した気分なんだけど……
【深淵纏縛】使いまくれたら全次元見ても、文字通りトッププレイヤーだったでしょ俺。
いや、実際に他の次元とか見たことないから断定できないけど、レイドボスとしてガンガン動けるプレイヤーが弱いはずないからな。
「その点は安心するがよい。
レイドボスとして認められるには格を……つまり深度を上げていけば良い。
さすれば、スキルに頼らずともレイドボスになれるであろう」
まじですか?
え、スキルの効果とかじゃなくて?
プレイヤーが完全にレイドボスになるとかありえるのか。
でも、それってつまり他のプレイヤーに討伐されたりしない?
「……されるであろうな」
そんなー。
豚は出荷ですよ。
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