146話 八卦深淵板のありか
はい、休憩終了!
アークエンジェルナイトとの戦闘後、充分に休憩をとった俺はフロア散策を再開した。
「先ほど壁画を見てみましたが、結構いい線いってますよ。
八卦深淵板はその辺りにありますからね」
あっ、そうだったのね。
八卦深淵板とか関係なく壁画を楽しんでたわ。
でも、せっかく【菜刀天子】が誉めてくれた(?)のだ、わざわざこのことを伝える意味もないしそのまま黙っていよう。
「なんだか変な表情をしていますが、スルーしておいてあげましょう。
それで、どこに八卦深淵板があるかわかりますか?」
さっきの発言からすると、【菜刀天子】は八卦深淵板のある場所を分かってて俺に聞いてるよな、これ。
管理AIなだけあって、一応俺を育てるために試そうとしているんだろうか。
こういうときに限って、自分の役割を思い出したかのように行動し始めるよな……
ダンジョンをほぼ【菜刀天子】と【ミューン】が攻略しておきながら、いまさらプレイヤーの俺を育てるというのもおかしな話だが、あれは今の俺の力だと育てる以前だから仕方ない。
こういう知育関係ならレベルとか身体スペックとか関係ないから、【菜刀天子】も試しやすいんだろうな。
試す……そういえば種族転生の条件は試練の突破だったな。
もしや、この問答が天子に転生するための試練なのか!?
「底辺種族【包丁戦士】にしては鋭い指摘ですね。
その通りです、ダンジョンの一定階層の突破と【失伝秘具】の発見と個人所有権の獲得までが試練です。
前の階層で種族転生の前提条件は説明しましたが、試練についてはあえて説明しませんでした。
それにしても正直、その矮小な頭でこれに気づくことはないと思っていましたが、案外やるものですね」
そうだろ?
底辺種族の頭脳を舐めてしまっては困るぜ!
俺は渾身のどや顔を【菜刀天子】に披露した。
俺のどや顔を見て何を思ったか、追加で言葉を紡ぎ始めた。
「まあ、試練の内容に気づいたとしても元々やってもらう予定だったことと変わらないので、行動に変更はないですけどね。
つまり、気づいたのは無意味というわけです」
こ、こいつ~!!
関係ないなら、紛らわしいこと言うのやめてくれよ!
「そんなことはどうでもいいので、はやくみつけてください。
底辺種族のスペックに合わせて休憩も取ったので問題ないはずですよ?」
こいつにしてはかなり配慮してくれたから、確かに問題はない。
そして、八卦深淵板の場所も実は既に分かっていたりする。
「ほう、それはそれは……」
ふふふ、お前も中々意地悪だよな。
嘘は言ってないけど、あんまりヒントにならないことばかり言ってたし。
だけど、俺のステータスについて知ってるだろ?
俺は深度がそれなりにある。
だからこそ、深淵種族に反応する【失伝秘具】八卦深淵板を逆に感覚で感じとることができるんだ。
「そうでしたね。
底辺種族【包丁戦士】の深度について考慮していませんでした。
逆探知というものをその深度で既に出来るとは思っていなかっただけに、肩透かしです。
それで、【失伝秘具】の八卦深淵板はどこにあるのかここで答えてもらいましょうか」
そう、【失伝秘具】八卦深淵板のある場所というのは……
このフロア全体の壁画全てだ!
ここにある壁画全部を一纏めにして【失伝秘具】八卦深淵板!
そういうことだろ?
俺の身体がビクンビクンと壁画全体から溢れ出る力を感じているからできた推理だ。
今も、熱い衝動が身体の中からあふれでようとしている感覚に陥っているからな。
「お見事です!!
天子への種族転生の試練で、深淵種族に近いことを利用するプレイヤーが現れるのは流石の運営も想定していなかったでしょうね。
もしここで当てられなければ、さらに10階層進まないといけないところでした。
【失伝秘具】八卦深淵板は一度素通りしたフロアには二度と現れない仕様になっていますから」
うわっ、なんだそのゴミのような仕様!?
流石プレイヤーに人権がないゲーム……1人がこのダンジョン先行し続けたらこのダンジョンのうまみほとんど無くなるじゃん!
リソースの喰い合いか。
オンラインゲームの宿命でもあるが、流石にその調整の仕方はおかしい。
「それはもういいでしょう。
同じ次元にそう何人も系統違いとは言え天子が増えても意味がないですから。
今回も底辺種族【包丁戦士】が深淵種族になるくらいなら……と渋々連れてきたのですから、それを頭に置いて私に感謝してくださいね。
というわけで、ここにはもうヨウジはありません。
はやくこの八卦深淵板を宝物庫で送ってください」
あっ、これ転送できるのね。
えーっと、ウインドウを開いて、宝物庫を選択!
俺の指が宝物庫と表示されたウインドウに触れると、ダンジョンの壁画一面がそのまま跡形もなく消え去った。
あんなに大きかったのに送れるとは……この機能も侮れんな……
「それでは帰還します。
一々歩いて戻るのは手間なので、私の権限を使用します。
【上位権限】【Return from travel】展開!」
俺を含めた三人は銀色の光に覆われて、次の瞬間ダンジョンから離脱することとなった。
【Bottom Down-Online Now loading……】




