142話 まさかの落とし穴
途中地面から槍が生えてくるトラップとか、定番の鉄球が転がってくるトラップが出現したりしたがレイドボスもどきの集団である俺たちには効かなかった。
槍のトラップについては……
地面から生えてくる槍を生えてくる直前で【花上楼閣】による連続射撃で的確に撃ち抜いて、槍が浮き上がってくる隙を与えないまま封殺した。
レイドボス特有の火力と容赦ない乱射を目の当たりにしたら槍に同情したくなるくらい悲惨な現場だったな。
鉄球が転がってくるトラップについては……
【ミューン】と【菜刀天子】の円環スキルで鉄球が輪切りにされるという面白いものを見れたので痛快だった。
基本的に鉄球トラップって逆方向に逃げたり、横に逸れたりするのが定番の逃げかただと思っていたが、真正面から突破するっていうのは底辺種族だけだとできないからなぁ……
できたとしても、命を消耗品のように扱って発動する【魚尾砲撃】による爆発くらいか。
だけど、立ち向かう前に命を犠牲にしている時点で真正面から立ち向かっているのかは疑問が残るよな。
どっちにしても、残弾……肉爆弾プレイヤーがいっぱいいる前提でしかこの作戦は実行できない。
だって考えてみろよ、俺一人で挑んで自爆してトラップを乗り越えたとしてもその先に誰も進めるわけじゃないからな、完全にそれは無駄死にでしかない。
ともかく、底辺種族だけで挑んでいたら壊滅していたであろうトラップたちも難なく乗り越えた俺たちは、なんやかんやあって到着したぜ第10階層!
ここに八卦深淵板があるって話だが……
「その前にあれを倒さないと進めませんね……
このダンジョンは10階層ごとにいわゆるボスモンスターのような存在が出てきます、それを倒せるかどうかで次の階層以降に進めるか判断するというわけです。
11階層からは今までよりもグンと難易度が上がるように設定されていますからね……
関所の門番といったところでしょうか」
そう言って【菜刀天子】の視線の先を辿ると、そこには片手剣と盾……バックラーを装備した騎士のような見た目の天使が鎮座していた。
なんで天使ってわかったかというと、背中から純白の羽が生えているからだな。
あれをこれから倒すってわけか。
今までのモブモンスターと比べると中々強そうな見た目だ。
じゃ、【ミューン】、【菜刀天子】よろしく!
そういって俺は後方へと逃げ去る。
完全に二人にお任せする流れだからな。
……と思ったら、【菜刀天子】の手が伸びてきて、俺の肩を掴んだ。
ん?なんだ?
「あれはあなたが倒さないといけません!
逃げないでくださいよ?」
マジ?
なんで急に消極的になったんだ?
今までバンバン倒してくれてたのに……
「……運営は私たちのようなレイドボスを連れてくることをある程度想定していたのでしょうね。
ここのボスモンスターには、私と【ミューン】の攻撃は一切ダメージになりません。
……状態異常であったり、攻撃の妨害くらいはできますがダメージソースは底辺種族【包丁戦士】しかなり得ないのです」
ええええええ……
ここに来て、露骨なメタを貼られた気がする。
つまり、俺が前線に出てこのいかにも強そうな騎士天使と戦うってことだろ?
レベル1が上限の底辺種族の俺単体のダメージで倒せるのか?
「時間はじっくりあります。
底辺種族【包丁戦士】の力では相当時間がかかるのは明らかですが、この慈悲深い私が最期まで付き合ってあげましょう」
……やめていいですか?
また長時間戦闘かよ!
モンスター相手とかあんまり好きじゃないんだけど。
俺、プレイヤーキラーだし!!
「……いっぱい、たたかえる。
わたし、てんしさま、ごはん、みんなうれしい……」
救いはないのか……
というか名前の羅列的に俺のこと「ごはん」って呼んでなかったか!?
何?俺はこのチャイナ娘の脳内では給食のおばちゃんみたいな扱いなのかよ。
好敵手だったと思ってたんだが?
「……それも、ある。
でも、ごはん、おいしい……」
その言い方だと俺が美味しいみたいに聞こえるから止めてね。
食欲的にも、性欲的にも、戦闘欲的にもお前に食べられたく無いから……
【ミューン】×【包丁戦士】になっちゃうだろ!
「……それも、わるくない。
こんど、ヤる?」
どの意味でですかねぇ……?
まあ、こいつは戦闘狂だからバトルのことだろうけど。
というか誰も俺が単独でダメージを与えることに異論が無さそうなので、やるしかないようだ。
「安心してください、サポートはします。
流石にこの段階の底辺種族が単独で倒せるような設定はされていませんから、私のような完璧な存在のサポートが必要です」
「……わたし、がんばる」
そうかいそうかい……
それなら俺も腹をくくって、逃げるのをやめて戦ってやろうじゃないか!
【Gatekeeper Battle!】
【アークエンジェルナイト】
【ボスバトルを開始します】




