127話 奥の手と新手と汎用手
さて、ひっくり返った【ウプシロン=ウーグウイ】の真上で【深淵纏縛】してレイドボスゴスロリモードになった俺だ。
緑色のゴスロリと漆黒の右片翼がファンシーな世界観みたいな感じでいいと思う。
こんな感じの見た目のボスとか敵で出てきたら、キャラクター背景とか考察し始める輩が他のギャルゲーとかで結構いそうだ。
俺に似合うかは別だが。
【深淵顕現権限】を使っているのに、わざわざここで【深淵纏縛】を使ったのには理由があったりするのだが、これは戦闘後にでも話せばいいだろう。
何はともあれ大チャンスだ、ここを逃すわけにはいかない!
奥の手に、新手を加えたごり押しでいくぞ!
俺のスキル発動に合わせてアナウンスが鳴り響く。
【スキルチェイン【深淵纏縛P】【堕枝深淵】】
【追加効果が付与されました】
【デメリットが増加しました】
【origin【堕枝深淵】】
アナウンスが終わるのを確認してスキルの詠唱を開始する。
【我が領域を侵すものよ】
翼にあった黒色の粒子が、【ウプシロン=ウーグウイ】に向かって伸びはじめる。
その伸びかたは、際限なく成長を続ける木々の枝のようだ。
いや、枝のようにも見えるが、ルル様のやつと少し違って、俺の場合翼が延長して広がっていっているようにも見えなくもない。
【流転する境界の狭間にて、我が深き業を刻み込め】
黒色の粒子でできた枝が、枝分かれをし始め、棘のようなものを所々生やしながら伸長を続ける。
その棘は、何かやばいものを刻み込んでしまうようなおどろおどろしい雰囲気を醸し出している。
俺がレイドボスになる前……は棘はこの時点で生えてこなかったが、今回はルル様が使ったときのように深淵を刻印する棘が生えてきた。
やはり、俺たち底辺種族と深淵種族では根本的になにかが違うのだろう。
今回は俺がレイドボスとして深淵種族に擬似的になっているからよく分かるが、力の巡り方が別物だ。
【汝、聖なるものなれば我が深淵に染まるがよい】
これでもか、というくらい伸びた黒色の粒子でできた枝は【ウプシロン=ウーグウイ】に棘を差し込みながら、身動きが取れないように完全に拘束している。
黒色の枝に覆われた【ウプシロン=ウーグウイ】たちは、拘束されているだけにも関わらず、あたかも深淵に染め上げられたかのようにさえ見えてしまう。
レイドボスになる前に使ったときは、枝に力を込めるような形で枝を操作していたが、レイドボスになった今は自分の身体を動かす延長で枝を動かし、巧みに操ることができる。
【これは我が存在の証明】
先ほどまで黒色の枝ばかり変化していたが、俺の漆黒に染まった右片翼が黒い極光に覆われはじめた。
そして、その極光に反応して粒子でできた枝も鈍く光始めた。
俺は息を殺して見つめることしかできない、もはや芸術的な光景はいつまでも続くかのように思えたが……
漆黒の翼を生やした俺が、終わりを告げるように一言唱えた。
【スキル発動!【堕枝深淵】】
黒い枝に捕らわれていた【ウプシロン=ウーグウイ】が地面に引きずりこまれるかのように沈んでいき、沈んだ部分から少しずつ身体が光の粒子へと変わっていく。
地面に接している棘ミサイルを発射して沈んでいくのをなんとか遅らせようとしている【ウプシロン=ウーグウイ】だが、あくまでも悪あがきだな。
遅いながらも少しずつ沈んでいく。
このまま沈むのが先か、俺のスキルの時間が切れるのが先か……という根気勝負ってわけだが俺には愛すべき肉爆弾たちがいる。
俺と同様に【堕枝深淵】を発動している【検証班長】に目を向けて、【釣竿剣士】とそのチーム、そして【検証班長】チームのメンバーへと顔を向ける。
その動作で何を俺が言いたいのか把握したのか【検証班長】が全体に指示を出す。
「総員、ボクの指示に従ってください!
今から攻撃スキルを全力で使ってください!
【魚尾砲撃】しか持っていない人は最前線へ!
その他のスキルで攻撃できる人はお任せします!
【釣竿剣士】さんは【ブーメラン冒険者】さんを守ってください、貴重なヒーラーです、ここで【ウプシロン=ウーグウイ】を倒せなかったときのために爆発から回避させてあげてください!
では、攻撃開始だね!」
【検証班長】の鶴の一声で、レイドバトル参加者全員が動き方を変えた。
タンク集団や検証チームが全力で【ウプシロン=ウーグウイ】に向かっていきスキルを発動する。
大勢でエネルギーを体内に集めてそれを破裂させる準備をする。
その場の熱量がとんでもないことになってるぞ!?
「ability【天手古舞】ダヨ!!」
【短剣探険者】がabilityを発動させた。
……効果とか聞いてなかったから何をやってるのかよくわからんが頑張れ!
「スキル【休息万命急急如律令】っ!
お姉ちゃんを助けてあげてっ!」
【ブーメラン冒険者】がお札を貼ったブーメランを握り、最前線にいる【短剣探険者】を回復させるためスキルを発動する。
ability【天手古舞】ってそんなデメリットやばそうなやつなのか……?
たしかに回復のほとんどをあいつに費やしてるし、何やら難ありって感じだ。
そんな【ブーメラン冒険者】を守るために正面に仁王立ちしているのは花飾りの少女だ。
タンク集団の指揮をしていたからか、出番が少なめだった気がする。
「ちょっと気にしているんですから余計なことを言わなくてもいいですよ!
裏方に回るのも生産プレイヤーなら当然です。
これが今回最大の裏方です、いきますよ!
釣竿一刀流【渦潮】っ!」
トーチトワリングの要領で釣竿を振り回しはじめ、爆風に備える【釣竿剣士】。
さあ、起爆だっ!
「「「「「「「「「【魚尾砲撃】」」」」」」」」」
【ウプシロン=ウーグウイ】が爆発に飲み込まれ、一気に地面に引きずり込まれる。
棘ミサイルで相殺する余裕がないほどの熱量だからな。
【魚尾砲撃】の検証で、連鎖爆発したほうが火力上昇するということも俺たちで身をもって体験したからよーくわかっている。
このまま、いっけぇぇぇぇぇぇえ!!!
これが底辺種族の可能性……?
【Bottom Down-Online Now loading……】




