120話 ラーメンタイマー
「ほう、我のスキル【堕枝深淵】を垣間見、手にいれることができたか。
……このスキルは【魚尾砲撃】同様にレイドボスである我を倒さねば手に入れられないはずなのだが。
これがプレイヤーの特権というやつなのだな……喜ばしいというのか、悲しいというのかなんとも言いがたいぞ……」
そう俺たちに話しかけてきたのは、【ウプシロン=ウーグウイ】と激闘を繰り広げていたはずのルル様だ。
だが、さっきまでの圧倒的な威圧感が薄れ始め、姿も黒色の粒子で覆われ身体の端から霧散していっているぞ!?
これはいったい……?
「お前は何を聞いておったのだ?
我が顕現できる時間はあの忌々しい聖獣によって制限されておった。
その時間が来ただけのことよ。
決して、我が負けたとかそのようなことはない」
ちょっと念を押すように伝えてきたルル様だ。
基本大人っぽい対応をするルル様だが、聖獣関係になるとはっちゃけるのか意地っ張りだな。
というか、ここでルル様の助っ人タイム終わりなのか……
結局、棘ミサイル……もといスキル【花上楼閣】の攻略方法も分からなかったし、高速空中機動を行う【ウプシロン=ウーグウイ】を止める方法も分からなかったなぁ……
いいところまでいったけど、ここで負ける可能性は高いだろう。
「くっくっくっ、悲嘆に暮れているところ悪いが我がある程度その問題を解決しておいたから安心するが良い。
あの忌々しい聖獣……暴飲暴食の亀を見てみるがいい」
ルル様が八本の足を俺の視線を誘導するために【ウプシロン=ウーグウイ】へと伸ばした……いや、しれっと一本消えてしまってるから七本か。
戦闘中に棘ミサイルに撃ち抜かれたんだろう。
ルル様につられるように【ウプシロン=ウーグウイ】を見ると、100本近くあった棘ミサイルが出てくる元である、甲羅の棘が5本まで削り取られていた。
棘の本数が減ったことで、高速で変幻自在に空中を移動していた【ウプシロン=ウーグウイ】は移動か攻撃の選択肢を迫られることになった。
そして、攻撃と移動どちらも100本あったときの比ではないくらい威力、スピード、手数が低下している。
これなら俺たち底辺種族でもワンチャン対処できるかもしれない。
「ここまで我がお膳立てをしておいたのだ。
我のスキルも何人か手にいれたようであるし、あの忌々しい聖獣と戦う際に有効活用してくれ。
この周辺であれば、一時的に我の領域となるように境界を弄っておいた。
つまり【深淵顕現権限】を使う時に生け贄が要らなくなるというわけだな。
負けたら承知せぬぞ……」
そこまで話すとルル様の全身が黒い粒子に覆われ、次に粒子が無くなったときにはルル様の姿はそこになかった。
【Warning!】
【深淵を押し止めるため】
【冒険者を俯瞰する】
【深淵種族の【深淵域の管理者】の地上顕現時間に達しました】
【【深淵域の管理者】が送還されます】
【深淵種族の【深淵域の管理者】が送還されましたので【ウプシロン=ウーグウイ】によるプレイヤーへのダメージが発生します】
「どうやら助っ人タイムここまでのようですね……
【包丁戦士】さんの詰めの甘さで、【花上楼閣】の詳細こそ分かりませんでしたが……
ですが【ウプシロン=ウーグウイ】も先程までの戦いで大幅に消耗しているようですし、ここまで消耗しているのであれば後は全力で行くまでです!
生産プレイヤーなら、当然ですよね!
身を滅ぼす程の全力です!」
「その通りだとも。
ボクたちがこれ以上耐久戦をやっても勝てない……が、ボクたちには新緑都市アネイブルレイドボス攻略戦で勝利して手にいれたスキルがある。
【魚尾砲撃】だ!
ここからは生存について考えなくてもいい、それぞれ命の危険が迫ったと思ったらその命を有効に使ってほしい。
確実にダメージを重ねるんだ、ボクを信じて命を散らしてほしい」
この【検証班長】と【釣竿剣士】はさらっと怖いこと言ってるな。
つまり、なんだ……この戦場で役立たなくなったら、スキル【魚尾砲撃】を使って【ウプシロン=ウーグウイ】を巻き込んで自爆テロってことだぞ。
流石はプレイヤーに人権のないゲームのプレイヤーだあ……
もはやプレイヤー同士ですら人権を完全に捨てている。
プレイヤーが命を大切にするという倫理観が完全に失われているんだろう。
……まあ、俺はプレイヤーキラーだからプレイヤーの命については元々重く考えてないけどな!
そんな俺の対極にいる価値観のプレイヤーは【トランポリン守兵】お嬢様か?
あのお嬢様は、極力死に戻りをするのを避けていたふしがあった。
俺と【トランポリン守兵】お嬢様が今後衝突するようなことがあるならば、その辺の価値観の違いだろうなぁ。
ともかく、この【無限湖沼ルルラシア】レイドボス攻略戦に参加しているプレイヤーたちに自爆特攻命令が出たわけだ。
勝敗はともかく、ここからの決着は今までかかった時間に比べたらあっという間に終わる……気がするぞ!
ようやく邪魔ものが帰りましたか……
なにはともあれ、見えてきましたね。
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