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118話 進撃の棘亀

 甲羅がひび割れて満身創痍の【ウプシロン=ウーグウイ】を眺める俺たちだったが、なにやら様子がおかしい。


 「……こやつ、ここで全力を出し尽くす気だな。

 我がいるからこそ、その身を省みない強大な力の集中を行っておるようだ。

 だが、その力……身を滅ぼすのは間違いない」


 【ウプシロン=ウーグウイ】はひび割れた甲羅のひびから光を流出させながら、その満身創痍な身体を励起させようとしている。

 

 あっ、不味い。

 なんかこんな光景前にも見たことある気がするぞ。


 たしか……新緑都市アネイブルのレイドボス攻略戦……

 そう、ジェーが第二形態へ変化したときか!?




 【異次元の風が吹き荒れている】



 【レイドボスの【真名開放】】



 【レイドボスは自らの真名を開放した】



 【Block!】



 【【釣竿剣士】「あなたの名前は【聖獣 ウプシロン=ウーグウイ】です!」】



 【レイドボスのステータスが割合に応じて伸長するのをブロックした】



 【【真名開放】失敗により特殊防御権限が剥奪されました】



 【異次元の起点から【聖獣結界 υ(ウプシロン)】を起動しました】



 【スキル【花上楼閣】のクールタイムがなくなりました】



 【スキル【花上楼閣】の射程制限がなくなりました】



 【υ::≠^υ>∠υ^「†>υ!!!!】



 この叫び声のような文字のカットインと同時に流れてきたのは棘亀の顔のカットイン演出だ。

 棘亀は、棘ミサイルを甲羅から無数に発射し、高速移動をはじめた。……多分スキル【花上楼閣】がこれのことなんだろうな。


 さっきまで俺を攻撃するミサイルとしての役割として使われていた棘だが、クールタイムや射程が無くなったからか、自身の移動にも使いはじめた。

 どのように使い始めたのか具体的に説明するなら、【ペグ忍者】のペグとワイヤーによる空中移動がそのままこれだな。


 今まで尖端が尖っていただけの棘が、花弁のように開き棘ミサイル一つ一つが宙を舞う花のようになっている。

 花のようなものが宙を舞う様子はとても綺麗だが、あれが衝突すると底辺種族でできた死の花が咲いてしまうというわけだ。


 だが、小柄な幼女の【ペグ忍者】がやるのと、超大型レイドボスの【ウプシロン=ウーグウイ】がやるのでは話が違ってくる。

 空中機動力を手にいれたことによって披露される、アクロバティックな動きはその身体の大きさもあってか、飛行機が迫ってくるような恐怖を感じてしまうほど大迫力だ。



 「えっ、なんですかあの唐突な動きの変わりようは……

 ボクの検証データではどう考えても鈍重なレイドボスだったハズ……」


 【検証班長】は大いに困惑している。

 だが、無理もないだろう。

 事前情報をどれだけ集めても、こんな動きを出来るなんて予想できるわけがないだろうよ。

 【検証班長】が悪いわけではない。


 「いや~、なんだか飛行機が上空を飛んでいる時のような音がするんですけど気のせいですかね?

 ……気のせいってことにしたいですね!!」


 ボマードちゃん、お前の気持ちはよく分かる。

 基本頭お花畑な爆弾魔も、この時ばかりは理不尽な現実から逃げ切れることは出来ていないようだ。


 「戦法が被ってる気がするのら~?

 パクりなのら!!」


 いや、知らないから……

 【ペグ忍者】は自分のお得意戦術がレイドボスにパクられてご立腹のようだ。

 コピー忍者ならぬ、コピーされる忍者か……

 

 ぶっちゃけ、ワイヤーアクションによる空中機動っていうのはマンガやアニメだと映えるから割りとメジャーな気もするから被っても仕方ない気がするぞ。





 【ウプシロン=ウーグウイ】が【花上楼閣】というスキルによって棘ミサイルを利用した空中機動をしているのに、俺たちがこうして呑気に話せているのには理由がある。


 「クックックッ、中々我を楽しませてくれるではないか!

 流石は聖獣、これくらいやってくれなければ張り合いが無いというものよ」


 めっちゃルル様が頑張ってくれている。

 空中機動には、ルル様の漆黒の翼羽ばたかせて対応している。

 ワイヤーアクションもどきの立体的な動きにも、翼によるより自由な動きでなら合わせることは苦では無さそうだ。

 そして、棘ミサイルそのものは八本ある脚をうねらせて巻き取るような形で封殺している。

 もちろん、それだけでは防戦一方だが、ルル様はそこまで甘くないようだ。


 三体の小亀たちを一瞬で葬り去った、黒枝を出現させる【堕枝深淵】で棘ミサイルを一本、また一本と確実に黒枝を伸長させ絡めとり地面へ溶け込むように引きずり込んでいる。

 

 直接本体を狙うんじゃなくて、あえて棘ミサイルを少しでも減らそうとしているルル様の気遣いが感じられる。

 今はルル様がメインで、ガンガンに【ウプシロン=ウーグウイ】と戦ってくれているが、あくまでもルル様は助っ人枠だ。


 戦闘時間制限五分という短すぎる期間の間で決着をつけるのは無理だと早々に悟ったからか、ルル様は自分が居なくなったあと底辺種族である俺たちが少しでもまともに戦える場を整えてくれているってことだな。


 ゲームだというメタ的な視点から見ると、ギミック解除方法の1つとしてきちんと用意されてた盤面なんだろうなこれ……

 沼地エリアの中に別の【深淵奈落】というエリアがあって、そのエリア同士のレイドボスが対立しているという構図……偶然と言うには出来すぎだろう。

 ……でも、本当に偶然だったとしたら?

 いや、次元ごとに環境が違うらしいし本当に偶然ってこともありえるのか……


 深淵……聖獣……エリア……何か思いつきそうで思いつかない。

  

 せめて、ルル様が消える前に何か棘亀に対しての明確なカウンターを用意しないと……

 でもこんな短期間で思いつけないぞ?

 情報もないし。



 情報?

 あっ、そういえば取っておいたあれがあるじゃないか!

 今こそあれを使うときだな!









  あれ?


 【Bottom Down-Online Now loading……】

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― 新着の感想 ―
[良い点] ついに質問するんですね 有効な答えが返ってくればいいんですが [気になる点] ルル様の言っていた天地無用は誰か持ってるんですかね?
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