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115話 クランリーダー権限

 ふぅ……間一髪衝撃波を回避することができた。

 この衝撃波をかわしはじめてはや12時間。

 ようやく沼地を越えて大穴……【無限奈落】まで目前というところまで来た。


 だが、そこまで来て問題が発生してしまった。

 流石にここまで引っ張ってくるだけでこんなに時間がかかるという想定をしてなかった……わけじゃないが、想定外のこともあった。


 とうとう餌の魚が切れたのだ。

 ここまで景気よく撒き散らしてきた沼魚だったが、少し前に全量枯渇してしまっている。

 リヤカーや屋台車がチュートリアル武器だったりするプレイヤーたちによってなんとか運送されてきていたが、どうしても持ち運べる量に限界があったから仕方ない……


 ちっ、ウインドウの宝物庫機能が出し入れ自由なインベントリとして役立ってくれたらこんなことにならなかったんだが……

 あの機能は入れるのはバンバンできるが、出すことは王宮にある宝物庫に直接行かないとできないという、絶妙に使いにくい機能だからなぁ……

 もっと優遇してくれよ!



 いや、無い物ねだりをしても仕方ないか。

 とりあえず、餌の魚が切れてから【釣竿剣士】がその場で魚を釣って、それを俺が包丁で捌くという出張寿司屋みたいなことをやっていた。

 だが、ここまで来るともう沼がほとんどなく、魚が生息してないので餌になる魚を用意することができないんだ。


 

 魚じゃなくてもせめて【ウプシロン=ウーグウイ】の気を引きつけられるものがあればいいけど……

 そんなことを考えながらポケットを漁っていると、指先が固いものに触れた。

 ん?こんなもの入れてたか?


 そう思い触れたものを取り出してみると、そこには鉄球のようなものがあった。

 あっ、そういえば【槌鍛治士】から【深淵顕現権限】用の生け贄代替品をもらってたな。

 し、【深淵顕現権限】……!?


 そうだ、こいつ聖獣だったよな?


 「いや~、確かにそうですけど。

 それがどうかしましたか?」


 いや、ここまで言ったらなんとなく推測くらいできるだろ。

 このニブチンロリ巨乳のボマードちゃんめ!

 頭お花畑になってないか?

 ん?ここは沼地だぞ?


 「相変わらず私に対しての扱いが酷くないですか?

 いや~、それも私的には悪くないですけど……」


 聞かなかったことにしたいことも聞こえたが、質問には答えてやろう。

 【聖獣であるが故に】【深淵と敵対する】レイドバトルが始まった時のアナウンスにこの2項目があっただろう?


 「なるほど、ここまで聞けばボクでも予想できます。

 これは深淵種族に対する意識が強いということだろうね。

 つまり、【釣竿剣士】さんが今持っているヘイト以上のヘイトを【深淵顕現権限】を使えば集められるかもしれない……そういうことかな?」


 流石は【検証班長】だ。

 俺が一言言っただけで十まで理解してくれるとは、しかも解説風に言ってくれたのでボマードちゃんたちに説明する手間が省けた。

 これが【包丁次元】のブレインと呼ばれる所以か。


 ま、つまりこの鉄球を使って【深淵顕現権限】を使えばいいってことさ。

 ここにいるメンバーで【深淵顕現権限】を使えるのは俺とボマードちゃんだけ……だと思うが、ここは俺が使うのが適任だろう。

 俺はボマードちゃんと違ってルル様の力で飛べるからな、地面を伝ってくる衝撃波を完全に無視して誘導に専念できるのはでかい。


 そうと決まればっ!

 スキル発動!【深淵顕現権限】!


 スキルを発動すると、背中の骨が隆起し始めて皮膚を突き破り、骨の翼が生えた。


 「うわっ、闘技場イベントでも見たけど、その骨の翼カッコいいよねっ!

 惚れ惚れしちゃうよっ!」


 そりゃどうも。

 男の娘の【ブーメラン冒険者】に惚れ惚れされると、ちょっとなんとも言いようがない気持ちになる。

 異性だけど、見た目が異性っぽくないせいで……


 「私のスキル【竜鱗図冊】とability【天手古舞】の組み合わせに似てるネ。

 翼っぽいのが生えるのトカ」


 あー、たしかに予選で当たったときのあれに似てないこともないか。

 というかその2つのabilityとスキルについて俺は詳しく知らないんだが?


 「それはおあいこデショ?

 私もその【深淵顕現権限】ってやつ詳しく知らないカラ」


 まあ、そうか。

 



 俺の背中から生えた片骨翼が完全に形成されると、今まで【釣竿剣士】の方を向いていた【ウプシロン=ウーグウイ】の目線がギロッと俺の方へ向けられた。


 それと同時に脳内に無機質な声が鳴り響く。




 

 【Warning!】


 【聖獣【ウプシロン=ウーグウイ】が深淵種族の気配を察知しました】



 【聖獣であるが故に】



 【深淵と敵対する】



 【【包丁戦士】にヘイトが極大集中します】



 ここでアナウンスが終わるかと思ったが、さらにアナウンスが続く。




 【Warning!】

 

 【志を同じくする者たちよ】



 【集いて立ち上がれ!】 



 【【クランリーダー】権限によりクランメンバー召集!】


 

 【【ウプシロン=ウーグウイ】のクランメンバー【ウー】【グウ】【ウイ】が召集に応じました】





 アナウンスが終わる頃、レイドボスの【ウプシロン=ウーグウイ】の顔が目の前にあった。


 んんん?

 あっぶな!?


 間一髪噛みつき攻撃を翼によって空中移動をすることで回避することができたが、さっきまでの鈍重さはどこにいったのかと思ってしまうくらい、食い込み前のめりで俺を執拗に狙い始めた。


 必死になって【深淵奈落】の方向へ誘導していっているが、今までのスピードの十倍くらいの効率で近づいていっている。

 そんなに深淵種族が憎いか、おのれは?


 上空で【ウプシロン=ウーグウイ】の攻撃をひたすら翼によって掻い潜っている俺の下方では、急に召集された三匹小亀がプレイヤーたちに襲いかかっている……小亀と言っても二メートルくらいあるが。


 あいつらが【クランリーダー】の権限で呼び出された取り巻きってわけか……

 三匹の小亀はそれぞれ【釣竿剣士】チーム、【包丁戦士】チーム、【検証班長】チームで対応していて、俺と同じように【深淵奈落】の方へ誘導していっている。


 【釣竿剣士】チームはタンク集団による攻撃の受け止めが真っ正面から出来るので方向の誘導はやりやすそうだ。


 俺の【包丁戦士】チームはチームリーダーの俺が近くにいないからか、一瞬瓦解しそうになったが、【槌鍛治士】が先導してヘイト管理をしているようだ。

 流石俺と一心同体なだけあるな、信頼してるぞ!


 【検証班長】チームは、【ペグ忍者】のワイヤー戦術で【検証班長】の指示に従い無駄のない動きで小亀を誘導している。

 やっぱり【検証班長】がいるだけあって一番動きが綺麗だな。




 とりあえず余計なことをやってしまった感が半端ない俺は逃げるように【ウプシロン=ウーグウイ】と愛の逃避行を続行するのだった……









 正体表しましたね!

 

 【Bottom Down-Online Now loading……】

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― 新着の感想 ―
[良い点] 槌鍛冶士の作った代用品が無事に機能して何より ポマードちゃん、包丁戦士に何されても喜びそう、かわいい [一言] 聖獣が率いるクランからヘイトを向けられるなんて完全に敵役っすね
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