1147話 風の浮力
「ぐおおおおお、重いいいいいい!」
そんなプレイヤーの声がいたるところで響き渡る戦場であったが、少しずつほんの少しずつ【蕭条たる百足壁】の巨体が浮かび上がってきていた。
引っ張る力が途切れないように控えのメンバーたちと交代しながら蜘蛛糸での綱引きをしているが、ここで【検証班長】による策が発動したようだ。
「スプリンクラー部隊、稼働開始です!」
「ちょっwwwオレの出番がやって来たなwww
クラン【冒険者の宴】総出でスプリンクラー部隊を助けてやれwww」
「「「「「「「「「「スキル発動!【波状風流】!!!」」」」」」」」」」
非戦闘員のプレイヤーたちや【風船飛行士】率いる【冒険者の宴】の竜人プレイヤーたちが一挙に聖獣スキルである【波状風流】を発動し始めた。
そしてそのスキルによって生み出された設置型のスプリンクラーを地面に落とし始めた。
……ボマードちゃん、【骨笛ネクロマンサー】俺たちもいくぞ!
「ふひひっ、任せて下さいぃぃ……」
「いや~、【名称公開】以外の役割があるのも中々嬉しいことですね!」
じゃあお前ら俺にしがみついていろよ!
スキル発動!【深淵顕現権限PP】!
俺は待機させていた【ハリネズミ】たちを生け贄に捧げてルル様の骨翼を広げ、そのまま崖下へと降下していった。
風のスプリンクラーが荒れ狂う中で降りるのは少々骨が折れるな。
「ふひひっ、骨翼だけにですかぁぁ……?」
「【包丁戦士】さんってたまにお茶目なこと言いますよね~!
いや~、そういうところも好きですよ!」
うるさい、わざわざ突っ込むなよ!
少し恥ずかしいだろ……
「……あっ、そろそろ一番底ですね!
いや~、風のスプリンクラーがいっぱい落ちてますね~!」
「ふひひっ、あてぃしだけだったらこの風の中降りて来れませんでしたよぉぉ……」
それは【検証班長】が俺の飛行性能を確認した上での作戦だからな!
本当は俺が降りてからスプリンクラーを落とした方がいいようにも思えるが、スキルのクールタイムを早めに解除させておくためにはこのタイミングが最適なんだと。
俺にはよくわからなかったが、【検証班長】が言うのならそうなのだろう。
そこを疑うのはもはや徒労だからな!
俺は俺のやることをこなすだけだ。
「到着しましたね!」
「ふひひっ、あてぃしたちはこの風のスプリンクラーを上向きにし続ければいいってことですよねぇぇ……?
【検証班長】さんも大胆な作戦を立てますよねぇぇ……」
そう、俺たちは【波状風流】のスプリンクラー設置部隊というわけだ。
俺が暴風の中を飛べたので最適解で動いたが、最悪ボマードちゃんや【骨笛ネクロマンサー】が降りてから落としても次善の策としては問題なかった模様。
【検証班長】がどれだけ作戦を準備してきているのか不明だが、あいつの頭の中にはいくつものルートが組み上げられているのだろう。
難儀なやつだな。
「あっ、【蕭条たる百足壁】が上がっていくスピードが速くなりましたね!
いや~、下から風で押し上げるなんて考え普通は思いつきませんよ!」
「ふひひっ、【検証班長】さんも【包丁戦士】さんに影響されて思考の幅が広がっているように感じますねぇぇ……
前よりも柔軟な思考になった気がしますぅぅ……」
そうか?
【検証班長】は前からそんなもんだった気もするが、いつも近くで見てきているから変化が分かりにくい……のかもな?
何はともあれ、風のスプリンクラーによる【蕭条たる百足壁】持ち上げ作戦は順調に進み、効果時間が切れたスプリンクラーが消えるタイミングで入れ替わりに上から新たなものが落ちてきた。
【検証班長】はこのタイミングも計算の上で入れ替わるように指示を出していたのだろう。
これ一個でプレイヤーを何人か浮かび上がらせることができるので、それが集まってしまえば上から引き上げる力も含めてデカブツムカデを持ち上げられるというわけだ。
ちなみに【風船飛行士】たちのクラン【冒険者の宴】が主力となって【波状風流】を発動させた理由は竜人だからだな。
竜人に種族転生しているプレイヤーが使えば通常の【波状風流】より風力が強くなるということを活かしたのだろう。
実際、俺たちから見ても地面に設置されている風のスプリンクラーは風が強いものと、控えめなものがあるからその効力は如実に現れているということだ。
その風力の差でたまに頭上の【蕭条たる百足壁】が傾くから、スプリンクラーを手動で俺たちが移動させることでバランス感覚を保っている。
「ちょっとしたミニゲームみたいで楽しいですね!
いや~、直接戦闘じゃなくてこういうことなら私でも活躍出来ますね~!」
「ふひひっ、ちょっとだけですけどコツもいりますから飽きずに楽しめますねぇぇ……
上で蜘蛛糸を引っ張り上げるよりも楽ですし、役得ですよぉぉ……」
適材適所……ですか?
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