1145話 かつての同胞
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【(妖怪)】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は【フランベルジェナイト】に会いにいくぞ!
過去の同胞である【蕭条たる百足壁】と戦うことになるわけだが、その辺の気持ちとかを事前に聞いておきたかったからな!
というわけでやって来ました渓谷エリア……地蒜生渓谷メドニキャニオン!
昨日に引き続いて冒険者ギルドに併設されている食事場で、電波系イケメンと話している。
ここで【フランベルジェナイト】に疑問をぶつけてみた。
「確かにフェイちゃんの言うように、【蕭条たる百足壁】はかつて俺と同じ種族の仲間として聖獣や天子と戦っていた。
中々気のいいやつだったけど、今の俺は他の誰でもない……フェイちゃんだけの味方だよ。
だからこそ、かつての仲間に手をかけるのにも躊躇いはないさ!
それに俺は既に【ファイヌル】の複製体にも手をかけているから、今さら心配は無用だよ!
でも、やっぱりフェイちゃんは優しいね」
【フランベルジェナイト】はそう言うと俺の耳にかかっている髪を指で軽く撫でながら微笑んできた。
くっ、これがイケメンのみに許されるムーヴっ!?
破壊力がありすぎるな!?
乙女ゲーくらいでしかこういうのってないと思ってたぞ……
そんな【フランベルジェナイト】の所作に心臓を掴まれそうになったが、背後から俺を睨んできている【フェイ】の視線が怖いので話を先に進めるとしよう。
それで、【蕭条たる百足壁】についての情報って何か持っていたりするか?
多分ほとんどの情報にロックがかかっていて下手に俺たちプレイヤーに伝達出来ないだろうけど。
「フェイちゃんはそんなことも知っていたんだね。
俺としてはフェイちゃんのためにもっと色々教えてあげたいんだけど、どうやらゲーム運営プロデューサーからの干渉があるみたいだ。
元レイドボスということを自認してからかなり制限がかけられてしまっているからね。
この制限をなんとか出来るようになればもっと自由に動けてフェイちゃんを助けられるのに……っ!!
不甲斐ない自分が憎いよ」
【ふ、【フランベルジェナイト】さんが不甲斐ないなんてことありませんよ!
わ、私はいつも助けられてばっかりですし、本当に頼りになりますからね!】
【フランベルジェナイト】の自虐に対してすぐさまフォローに入った【フェイ】。
あの高慢な【ガルザヴォーク】が元になっているとは思えない自省っぷりだが、【フランベルジェナイト】は高みを目指して努力している最中だからな。
この自虐も自身のさらなる成長を促すためのひとつなのだろう。
「性能、戦闘力、特殊能力、弱点みたいなことは触れられないけど性格的なことなら問題なさそうだからそれだけ伝えさせてもらうよ。
【蕭条たる百足壁】は【防衛】の力を司っているだけあって、味方には寛容な性格だったね。
来る味方は拒まず、来る敵は全力で拒絶する深淵種族としては珍しい慈愛にも似た心を持っていたよ。
レイドボスだった時の俺とはそりが合わなかったけどね。
そんな俺でさえも受けていれてたのだから相当器の大きい存在だったってわかるよね?」
器がデカイというか、そもそも図体がデカイな……
心も体もデカイというのはある意味規格外な存在だな!
それにこれまで、聖獣たちから話を聞いた時にも【蕭条たる百足壁】は複数の聖獣を一体で相手し続けたそうじゃないか。
普通ならメンタルが折れそうなほど劣勢のシチュエーションだが、それでも倒されずに今も生き延びているので心が広いだけじゃなくて不屈の心を兼ね備えているのだろう。
まさに大物だな!
「フェイちゃんもよく調べているみたいだね。
ただ、俺としては今回の【蕭条たる百足壁】への挑戦は少しタイミングが早かったように思える。
もう少し一瞬の爆発力を兼ね備えたプレイヤーが増えてからだったら安定して戦えたはずだからね。
でも、知恵者たちは何か作戦を練っているようだから勝算はある……かな。
俺も皆の前で振るえる力を可能な限り出し切って戦うつもりだから、一緒に頑張ろうね!」
【フランベルジェナイト】は俺の手を両手で握りながらぐっと顔を寄せてきた。
こいつの手、デカイな……
俺の手がすっぽりと収まってしまったぞ……
【……渡しませんよっ!】
いや、盗らないから安心しろ。
こいつは相変わらず嫉妬深いな……
嫉妬だったり、嫉妬じゃなかったりする……
【Bottom Down-Online Now loading……】




