110話 開戦前メンバー集結
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日もやる気いっぱいでログイン!
さあ、とうとう決戦の時だ。
レイドボス攻略メンバーは【無限湖沼ルルラシア】で現地集合ということになっているので、さっそく向かうとするか……
はい、【無限湖沼ルルラシア】に到着!
そして到着したと同時に無機質なアナウンスが脳内に響き渡る。
ここはエリア全体がレイドバトル範囲だから、エリアに入った瞬間にレイドバトルのアナウンスが流れる仕様になっているから驚きはない。
【Raid Battle!】
【底無し沼の棘亀】
【聖獣 ウプシロン=ウーグウイ】
【湖沼棘亀】【亀獣人】【クランリーダー】
【深淵を押し止めるため】
【冒険者を俯瞰する】
【聖獣であるが故に】
【深淵と敵対する】
【志を同じくする者たちよ】
【集いて立ち上がれ!】
【レイドバトルを開始します】
おおう!?
驚きはない……とか言ったが、これには驚いた。
アナウンスや内容がガラリと変わってるぞ!?
「これが拾えるユニーククエスト全てを回収した結果です。
回収率100パーセントなのは当然ですよ、生産プレイヤーなら!」
アナウンスに驚いていた俺の後ろからヌッと現れたのは、花飾りを髪につけている少女【釣竿剣士】だ。
アナウンスにも驚いたが、この登場の仕方も心臓に悪いぞマジで。
それにしても回収率100パーセントってどういうことだ?
「ユニーククエストは何も名前を判明させる石板探しのクエストだけじゃなかったということですよ。
レイドボスのジョブを看破するものや、種族のヒントになるものを集めるというユニーククエストもありました。
新緑都市アネイブルのレイドボスのヒントをほとんど集めないまま、総力戦をやろうとした【包丁戦士】さんとは違うんですよ」
これ俺煽られてるのか呆れられてるのか分からないが、どっちにしてももっとしっかり準備できる要素があったってことを言われているわけか。
……まあ、新緑都市アネイブルレイドボス攻略でギミック解除を事前に出来てたのはおそらく、【新緑都市アネイブル】というエリアの名前を見破ったことくらいだろう。
しかもこれは俺じゃなくて【検証班】の決死の努力によって行われたやつだしなぁ……
でも、戦闘中に部位破壊とか【名称公開】とか土壇場でギミック解除出来てたから許してくれよ。
今回も【無限湖沼ルルラシア】エリアの名前を看破した(ルル様に教えてもらった)のは俺だし、一応最低限くらいはやってない?
「……そうですね。
事前準備が疎かなのは生産プレイヤーとしてどうかと思いますが……
でも、生産活動に最も必要な一瞬の閃きを実行に移せる行動力は素直に尊敬しますよ」
ありがとう。
一瞬の閃きで行動に移したら毒物料理で何度も死んだりしたけどな。
「ほうトッププレイヤー2人が揃っているとは大したものですね」
「ちゃんと来てくれて良かった……
【包丁戦士】さんも【釣竿剣士】さんも自由気ままに動くから、ボクはもしかしたら来ない可能性すら考えていたよ……」
おっ、【モップ清掃員】と【検証班長】も来たようだな。
それと……背後に見える多くの人影。
これは……検証班の参加メンバーの集団か?
「その通りです。
ざっと100人集めることが出来ました、【釣竿剣士】さんがユニーククエスト完了の予告をしてから迅速にクリアしてくれたお陰です」
それでも100人をこうやって集められるのは【検証班長】の人望が成せる業だろう。
これも一種のリアルチートスキルみたいなものなんじゃないかと常々思っている。
「そんなに大したものじゃないですよ……
【包丁戦士】さんは一々ボクを持ち上げなくていいですから……
あっ、一応【ペグ忍者】もちゃんと連れてきましたけど、あの集団の中で待機させてます。
こっちに近づいてこないように念を押してきたので。
……しばらくなら持つでしょう」
【検証班長】の人心掌握術を持ってしても完全に制御しきれない【ペグ忍者】……あいつ、本当にドの過ぎた変態幼女なんだな……
その後、【検証班長】から今日参加できるメンバー、特に2つ名持ちプレイヤーについて聞いたり、作戦やチーム分けなどしているとようやく最後のメンバーが【無限湖沼ルルラシア】に到着したようだ。
その遅刻気味のメンバーの人影は、がっちりした体型の男と中学生くらいの背丈の女の子だ。
「はっはっはっ、すまんすまん!
色々と準備していたら遅れてしまったぞ!!!」
「いや~、なんで私も遅刻に巻き込まれているんですか~
完全にとばっちりですよね!?」
そう、遅れてきたメンバーは俺と一心同体のガチムチおっさんの【槌鍛治士】とタンクトップロリ巨乳のボマードちゃんだ。
二人とも俺に馴染みのあるプレイヤーたちだな。
なんで二人揃って遅れてきたんだ?
「それはだな!!
これを作っていたのだ!!
ワシの鍛治とボマードちゃんの【深淵顕現権限】を組み合わせた特注品だ!!
これを【包丁戦士】、お前に使ってもらいたいと思ってボマードちゃんに手伝ってもらっていたのだ!!!」
「まさか鍛治であんなことができるなんて思ってなかったですよ……
いや~、これを作り出せたのは【槌鍛治士】さんの実力あってこそですね」
そう言って手渡されたのは、手のひら大の黒い鉄球のようなものだった。
えっ、なんだこれ?
「お前の【深淵顕現権限】には生け贄が必要だろう!!
だから、その生け贄にできるものを代わりに作れないかと思って作ってみたぞ!!
これがあれはプレイヤー一人分の生け贄と同等くらいにはなるから、しっかり使ってやってくれ!!」
そ、そんなもの鍛治で作れるのか!?
このゲームの鍛治事情について詳しくないからなんとも言えないが、それでもこの鉄球のようなものが卓越した技術で作られたものだというのは伝わってくる。
つまりボマードちゃんは……実験要員かな?
「いやー、そうなんですよ~!
何回も【深淵顕現権限】を使って、この鉄球が機能するのか確かめましたね……
使い捨てなので、成功するまで構造を変えたりしてましたが」
ちなみに、失敗したときは代わりに誰を生け贄に捧げてたんだ?
【深淵顕現権限】は発動したら、任意の生け贄が用意出来ない場合は条件に当てはまるプレイヤーをランダムに生け贄に捧げてしまうという、ピーキーなデメリットを持っている。
だからこそ、誰を生け贄に捧げたのか気になるが……
「いや~、それがですね……?」
「ワシだ!」
マジか!
その献身具合大丈夫?
自らの命を生け贄に捧げてまで生産活動をするのに少し引いてしまった俺だった……
毒物料理で何度も命を捧げた底辺種族【包丁戦士】がそれを言いますか?
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