11話 戦闘狂とは(挿絵あり)
【Raid Battle!】
【底無し沼の棘亀】
【レイドバトルを開始します】
今日は新緑都市アネイブルで死に戻りをした後、徒歩で沼地エリアに来てみた。
ここに噂の【釣竿剣士】が待っているらしいのだが。
「会うより先にレイドバトルが始まっているんだが……」
いや、確かに新緑都市アネイブルは入った瞬間にレイドバトルが始まるから、もはやあまり理不尽とは思えなくなってきている。
だけど、アネイブル以外のエリアでは固定場所でのエンカウントやランダムエンカウントしかないらしい(検証班調べ)ので、今回沼地エリアに入った瞬間レイドバトルが始まったのはかなり運がないということだろう。
「くっ、こうなったら戦うしか……」
「その必要はありません」
沼地エリアのレイドボス出現に備えて包丁を構えていた俺だったが、背後から釣竿を携えた少女が現れた。
ま、まさか!
「手に持っている武器から見るに、あなたが【包丁戦士】さんですね?」
「いかにも、俺は【包丁戦士】だ!
近頃やっていることは新緑都市アネイブルのレイドボス討伐だ。
そろそろ攻略したくてうずうずしている!
あんたは?」
いや、分かりきってるけど一応聞いておこう。
「私は【釣竿剣士】と呼ばれています。
ミチに煌めくこの沼地エリアで釣りを楽しんでいる生産プレイヤーですよ」
いやいや、とんでもな戦闘の噂があるのに生産プレイヤーってのは流石に無理があるだろう。
見た目は~、頭に青色の花飾りをしていて、フード付きの青いジャケットと赤いロングスカート、手には釣竿という戦闘プレイヤーには見えない装備だがレイドボスの必殺攻撃をかわしたり、強攻撃を凌いだりしている情報があるので油断はできない。
そもそもトッププレイヤーって周りに言われてるぞ、この少女は。
「あんたが【釣竿剣士】か、ちょうど良かった。
【槌鍛治士】から特製ルアーを預かってきたから渡すわ」
そう言ってポケットから特製ルアーを手渡す。
「ふふふ、流石【槌鍛治士】さんですね。
こちらの要望通りのものができてます!
これで釣りが捗るってものですよ」
そう呟きながら手に取った全方向に棘のついたルアーを見てうっとりしている。
その表情色っぽすぎるからやめてね。
「それで?
戦う必要が無いって言ったのはどういう理由だ?
未だに戦闘が始まってないからなんとなく予想がついてはいるんだが」
「それはですね、ここのレイドボスは沼の深部に潜んでいてレイドバトル表記はエリアの何処にいても表示されるんですけど実際に遭遇するのが難しいレイドボスなんですよ」
なるほど、それなら別に俺の運が悪かった訳じゃないんだな。
俺が考えている最中にも【釣竿剣士】の話は続く。
興奮して喋っているからか、見事な双丘が揺れている。
眼福です。
「ここのレイドボスは深くにいるので、地上に連れ出す手段が必要になるみたいです。
私の場合はこの釣竿で釣り上げるのが手っ取り早いですけど!
せっかくの釣竿ですし、釣り生産プレイヤーとなった今は主を釣り上げて倒した後に、釣果にするのが今の私の目標ですね」
「結構楽しんでいるんだな。
他のプレイヤー達がトッププレイヤーなんて言うからガチガチの攻略マニアなのかと思ってたわ」
「……あなたは一度鏡を見た方がいいのでは……?」
鏡?毎日朝と夜に見てるが……
首を傾げる俺を見て【釣竿剣士】は、はぁと吐息を漏らした。
なんなんだ……
呆れたような表情をしながら沼地に糸を垂らして釣りをし始めた。
「……とりあえず、今からレイドボス釣り上げるので出てきたら一緒に戦ってみましょう。
あなたは会話よりも戦闘で語り合うタイプみたいですからね……」
「んっ?おいっ、人を戦闘狂みたいに言うな!」
釣り中に煩いと怒られた包丁使いが居たとか居なかったとか……
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