108話 ヌッというワールドアナウンス
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
……したと同時に脳内に無機質なアナウンスが鳴り響く。
あれっ?俺何かしたか?
【ワールドアナウンス】
【【釣竿剣士】が【名称看破】しました】
【【無限湖沼ルルラシア】のレイドボス【底無し沼の棘亀】】
【【釣竿剣士】「あなたの名前は【聖獣 ウプシロン=ウーグウイ】です!」】
【【ウプシロン=ウーグウイ】の特殊防御権限が1部解除されました】
【【ウプシロン=ウーグウイ】の【名称公開】により】
【知名度に応じたステータス低下効果付与】
あっ、俺が何かしたわけじゃなかったか。
最近唐突な自分へのアナウンスが多かったせいで身構えてしまったが、ちょっとホッとした。
こうやって自分以外のワールドアナウンスを聞いた記憶が今まで無かったので、なおさらだな。
もしかして俺がログアウトしている間に流れている可能性もあるが、それを聞き直す方法も無いし、実質これが初めてだ。
さて、このアナウンスは【釣竿剣士】がメッテルニヒ会議の時に言っていたユニーククエストをクリアしたってことだろうな。
俺が新緑都市アネイブルでやろうとしてたことを、真っ当にやり遂げた形になったな。
俺の場合はジェーが自ら名前を明かすという前代未聞の自爆行為に近いことをやってくれたから、結局やらずに終わったが……
というか【無限湖沼ルルラシア】のレイドボス【底無し沼の棘亀】の名前言いにくくない?
何回も言ってたらどこかで一回くらい噛みそうな名前じゃないか。
【ウプシロン=ウーグウイ】、言い馴染みのない言葉だからこそ違和感を感じてしまうが、名前からしてやっぱり亀だよな。
【ジェーライト=ミューン】のように二体のレイドボスが合体しているわけじゃないから、名前も割りと混迷してるわけじゃなさそうだ。
まあ、こうやって名前を見破って【ウプシロン=ウーグウイ】の弱体化が出来たってことは、そろそろ【無限湖沼ルルラシア】レイドボス攻略戦が始まるのは間違いないな。
となるとだ……この後の展開はなんとなく予想がつく。
ここでうだうだ考えていてもどうせ話は進まないし、さっさと王宮を出るとするか。
「さっきのアナウンス聞きましたか?」
はい、来ました!
俺の後ろからヌッと現れたのは花飾りを髪につけている少女、【釣竿剣士】だ。
こいつ、俺に用事かある時は王宮から出た瞬間に現れるからな……しかも俺が出てきたはずの出入口から。
今回もどうせそうだと思ったわ!
あっ、アナウンスは一応聞いたぞ。
お前のユニーククエストが終わったってことだよな?
「当然ですよ、生産プレイヤーなら!
名前の入った石板を探すだけのクエストにここまで時間がかかるとは思いませんでしたが、なんとかクリアできました。
これで、本格的にレイドボス攻略に向かえますね!」
ああそうだな。
よく分からないけど、特殊防御権限とかいうやつが2回分解除できてるし、【名称公開】の効果でステータスが落ちてるから今までと比べるとかなり楽に戦える……かもしれない。
「こればっかりは戦ってみないと分かりませんが、次は新緑都市アネイブルレイドボス攻略戦と同規模のプレイヤーで挑む予定です。
挑むのは……明日です!」
明日!?
気が早いな、おい。
そんな期間が短くてほかのプレイヤーの予定とか合うのか?
唐突な予定が入り驚く俺。
俺は……暇だから付き合うけど、他に予定があるプレイヤーだっているだろう。
「その辺りは抜かりないですよ?
【検証班長】さんにお願いして、この一週間どの日付でも最低30人参加できるメンバーを集めてもらいましたから。
ほとんど検証班メンバーですけど、それ以外にもツテのある2つ名持ちにも声をかけてもらっています」
さ、流石は生産プレイヤーだなぁ……(?)
それだけ手回しが出来てるなら人数の心配はしなくてもいいだろう。
集まるメンバーの質はどうだか分からないが、2つ名持ちプレイヤーならある程度の戦闘は出来るだろうし多く集まってほしいものだな。
「そうですね、特に他のトッププレイヤーの2人とか来てくれるといいんですけど……
どちらもなんだかんだ、やり手でしたからね。
特にタンクの【トランポリン守兵】さんはレイドバトルにいたら、私の負担が減りそうですから……」
そうだよな。
【釣竿剣士】は攻防一体のオールラウンダーだから全部の役割ができる。
いや、出来てしまうと言った方がいいか。
なまじ全部出来てしまうので、集団戦だとどっちつかずの動きになってしまうことも考えられる。
周りにいるその動きを読めないプレイヤーは間違いなく混乱する。
それに対して、タンクという役割が明確な【トランポリン守兵】や、基本近接攻撃がメインの俺【包丁戦士】、遠距離攻撃(?)の【風船飛行士】などそれぞれ動きが分かれるから他のプレイヤーが合わせやすいだろう。
だからこそ、結果として【釣竿剣士】の負担が減ることになるってわけだ。
「まあ、明日誰が来るのか私も分かりませんから楽しんで行きましょう。
楽しんでこその生産プレイヤーですよ!」
そう言って手を振りながら去っていた【釣竿剣士】。
……明日レイドバトル総力戦か。
ジェーを倒してから結構時間が経った気がするが、ようやく次に行けるってわけか。
ちょっとテンション上がってきたな!
そのまま早く倒しに行ってください……
【Bottom Down-Online Now loading……】




