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106話 【天子の心得書】

 さて、2つの鍵のうち、1つの鍵については一瞬で使い道を見つけることができたので大幅に手間を省くことができたが、もう1つの鍵についてはこれから探さないといけない。


 面倒だが、探すか!


 仕方ないので【菜刀天子】と二人でテクテクと歩いていく。

 王宮の中にある鍵穴をみつけては挿し、見つけては挿しと地味な作業をひたすら繰り返していく。


 何処にハマるか分からない以上、見つかった鍵穴全てにチャレンジしないといけないのがこれまた面倒くさい。


 鍵穴と鍵には特に特徴がないから、外見だけだと全く判断できないのが辛すぎる……


 鍵穴はごく一般的に扉についているものや、床や天井についているもの、挙げ句の果てには展示物みたいなものにまでついているのできりがない。

 この鍵穴は鍵を持っていないと消えるので、ゲーム運営のプレイヤーを苦しめたいという想いがバンバンに伝わってくるぞ……

 流石プレイヤーに人権のないゲームだぁ……


 「やはりそう簡単に見つかりませんか……

 次元天子である私にもヒントを与えないのは、正直どうなのかと思いますよ」


 だよな。

 というかゲームAIが、自分のゲームをディスるってそうとうヤバい構図だぞ。

 そこまでいっているのに、それでもプレイヤー第三陣の受け入れ準備をしているという。

 運営の心がよく分からない。


 そんな雑談をしつつも、鍵穴に鍵を挿していく作業の手は止めていない。

 ……ちっ、調理場の鍵は開かなかったか。

 ここが空いてくれたら俺的にはハッピーだったんだが。


 「そんなに上手いこと、この世界はできていませんからね。

 ですので、この次元を最善にするために私は次元戦争を勝ち抜くと決めているのです」


 なるほどね。

 意気込みは評価できる。

 まあ、その結果前回の醜態に繋がったんだが……


 ……風呂も開かないか。

 いや、ゲームで風呂に入っても意味ないだろ……と思うやつもいるかもしれないが風呂は重要だろう。

 定番のおふろシーンとか見たくないのお前ら?


 「?

 ここには私しかいないはずですが?」


 ……気にするな。

 まあ、冗談抜きで言うと風呂が開放されたら、手頃な水源が確保できるから前回のイベント形式で籠城戦になったら案外役立つと思う。

 普通に風呂に入ってストレス軽減も出来るし、そんなに悪くないだろう?



 「真っ当なことを言っているように見えますが、探すのに疲れてサボっているだけですよね?

 全く、これだから底辺種族は……」


 ごもっともだ。

 流石に探索を連続していると疲れてくるし、ダレてくる。

 こういうときには何か刺激があればいいんだが……


 あっ、そういえばあんなのがあったな。

 イベント報酬の【天子の心得書】!

 心得書と言っても、実際に書物がアイテムとして渡されたわけじゃなくて、ウィンドウに【天子の心得書】という文字が追加されただけだ。

 【王宮拡張権】とか【深度の種】もそうだったが、イベント報酬は一度選択するとアイテムになるみたいだ。


 このゲームインベントリとかないから、急に目の前でアイテムを渡されても困っただろうしこの配慮は嬉しい。

 ここの運営にしては、プレイヤーのことを考えている機能をうまく実装してくれていると思った。


 というわけで、【天子の心得書】使用!

 俺が選択すると、【菜刀天子】の前に巻物のようなものが現れた。

 ……えっ、俺のところに出てくるんじゃないの!?



 突然現れた巻物に一瞬驚いた表情を見せた【菜刀天子】だったが、手のなかに収まった巻物の正体を確認すると俺の方を、じろーっとジト目で見始めた。

 完全に俺を疑っている目だが、実際それは合っている。


 「そういえばこれももらっていましたね。

 先に【王宮拡張権】を使ったので言うのは後で良いかと思っていましたが、今使ったのならそれはそれでいいでしょう。

 どうせ底辺種族【包丁戦士】もダレているようですからね。

 休憩がてら、これを解読しておきましょう」


 助かる~!!

 この王宮探索めっちゃ疲れるから、どう考えても一回休憩欲しかったんだよな。

 じゃ、そういうことでその巻物の中身はどんな感じか教えてくれ。

 元々俺の報酬だったし、それくらい教えてくれてもいいよな?


 「地味に痛いところを突いてきますね……

 なるほど、ここには次元天子専用のスキルについて書かれているようです。

 これは……【火出惹没】というスキル……ですね。

 使いどころが難しそうなスキルですが、無いよりはマシでしょう」


 文字は変わっているが、日本の聖徳太子が隋の煬帝に送った「日出る処の天子、書を、日没する処の天子に致す。恙なきや」という国書が元ネタだろう。

 当時からすると、辺境国が大国に対等な立場を求めるという使者が殺されてもおかしくない手紙……と取られることもあるエピソードだが、それが元ネタなら何かしらその要素がありそうだな。


 というか、贅沢な悩みだな?

 スキルを覚えられる機会なんて滅多に無いんだし、素直によろこんでくれよ。

 

 「それはスキル【渡月伝心】の効果を、検証班から聞いた時の底辺種族【包丁戦士】に聞かせてあげたいものです」


 あっ、あっ、あっ……

 申し訳ございませんでした。


 自分で自分の首を絞めるとは、こういうことだと実感した瞬間だった。









 【Bottom Down-Online Now loading……】

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