104話 憑依のっとりくん
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はルル様に忠告された通り、ボマードちゃんに会いに行くぞ!
というわけで、来ました草原エリア!
ここでライブをやる予定があるらしいから、その出待ちをして話を聞こうと思う。
「あっ、【包丁戦士】さんじゃないですか!
いや~、イベント優勝おめでとうございます!
私の熱い応援のおかげですよね!!」
熱いというより暑苦しい、騒がしいの間違いじゃないのか?
しかも、いつもその応援をされる側でしょボマードちゃん。
そろそろファンに爆殺されて欲しい。
爆弾魔、爆殺される!?みたいなとんちんかんなゴシップ記事とか見てみたいし。
ちょうど爆発系スキルの【魚尾砲撃】もあるな。
「優勝しても相変わらず辛辣というか、鬼畜というか……
いや~、流石は【包丁戦士】さんです……
それで、今日はわざわざここまでなんの用事ですか?
意味もなく私を待ってた試しがないので怖いんですけど~!」
身体を縮めて怖がる演技をするタンクトップロリだが、その立派な胸が邪魔で大して縮まってない。
こいつ……俺への当てつけか?
というのは置いておき、ボマードちゃんは【深淵顕現権限】ってどれくらい使ってる感じ?
闘技場イベントとかガッツリ参加してたなら使ってそうだが。
「そうなんですよ!
いや~、あの尻尾のおかげでガッポリポイント稼げちゃいましたよ!
【Ж細胞】と【深淵顕現権限】様々ですね~
だけど、私がメインで参加していた草原エリアは【ペグ忍者】さんがいたので代表になるまでは勝てなかったですよ……
【包丁戦士】さんが負けるくらいの相手に私が勝てるわけ無いですからね」
そうだよな。
ボマードちゃんは【名称公開】というスキルを持っていること以外戦闘面では俺の劣化でしかないからな。
しかも、その唯一俺にない【名称公開】というスキルによるデメリットで、常にボマードちゃんにデバフがかかっていて、身体能力がクソザコナメクジになってるから完全に【深淵顕現権限】頼りの戦いかたをしてたんだろうな……
それでスキル使ってて、変わったこととかないのか?
ボマードちゃんのクソザコ戦闘スペックで使ってたら不具合とか多そうだが。
「何気に酷いことばかり言いますよね?
でも、鋭いですね!
いや~、最近戦闘中の意識が無かったりするんですよ。
気づいたら勝ってた……みたいな感じです~
いや~、これが才能ってやつですかね!
くわ~、天才は辛いですなぁ~」
こら、すぐ調子に乗るなこのロリ巨乳。
……というか戦闘中に意識がないってどう考えてもヤバイでしょ。
なんでこの爆弾魔はそんなお気楽に話せるんだ……?(困惑)
とりあえずその辺にいるファン一人生け贄にして【深淵顕現権限】してみてよ。
実際にどんな感じか見てみたいし。
「たしかに、他から見た自分のスキルってあんまり意識したことないですし気になりますよね!
いや~、そういうことならやってあげますよ!
【深淵顕現権限】です!」
ボマードちゃんは何を勘違いしたのか分からないが、自分で勝手に納得してスキルを使ってくれた。
臀部から湧き出すように粘液が垂れ出てきて、それと同時に触手のようなウナギの頭が隆起した。
ウナギ尻尾からは溢れるようにどろどろの粘液が垂れている。
……やっぱり客観的に見ると気持ち悪いなこれ。
自分で使っている分にはテンションがハイになっているから気づかないが、これを使われる相手側の立場を考えると素直に可哀想だと思った。(小並感)
気持ち悪いし、禍々しいというまさに深淵種族という名前を体現している見た目だな。
それがタンクトップ姿のロリ巨乳に生えているというのは、冒涜的な姿とも言える。
「ふふふふふ」
おい、なんかおかしいぞ!?
ボマードちゃんが【深淵顕現権限】を発動させた後、表情をぐにゃりと崩しなが不敵に笑いはじめた。
「ヨォ、俺様の半身!
イャ~、【会者定離】ってやつのおかげであの時はいっぱい喰わされたゼェ」
どう考えてもさっきまでのボマードちゃんとは別人のような口調で、目の前にいる爆弾魔がニヤニヤと口を開いている。
唐突な変貌だが、このボマードちゃん擬きの正体に俺は心当たりがある。
俺と一心同体で、【会者定離】によって俺にヤられた奴なんて1人……いや、1体しかいない。
「お前、ジェーライトだな?」
「オッ、すぐ分かったか。
そう、俺様が栄えある深淵種族の侵略兵器【寄生魚 ジェーライト】ダ!」
ボマードちゃんの身体を乗っ取っているのは、かつて俺が新緑都市アネイブルレイドボス攻略戦で倒した【兎月舞う新緑の主】と【荒れ狂う魚尾砲】2体のレイドボスの内の1体である深淵種族【ジェーライト】だ。
ピンポイントすぎるヒントをアホのようにくれたから、少し考えたら分かった。
それに、俺が戦ったレイドボスの名前は【寄聖獣 ジェーライト=ミューン】だ。
少し文字は違うが、【寄生】という言葉が入っていたから底辺種族であるプレイヤーの意識を乗っ取るくらいできるかもしれないくらいは考えていた。
「イャ~、やるじゃんか!
だけどヨォ、たしかに俺様の特技に寄生能力はあるが、今回は全くそれ関係無いゾォ。
これは【深淵顕現権限】の真のデメリットだナァ!
深淵に中途半端な適正しかないヤツが使うと、【深淵細胞】の元になった深淵種族に意識が乗っ取られるってわけダァ!
たかが底辺種族一匹生け贄に捧げるだけで、俺様の力を借りようなんざ甘すぎるゼェ」
そういうカラクリだったか。
たしかにこの【深淵顕現権限】、プレイヤー一人を犠牲にして使うスキルにしては出力が高かったと思う。
なにせ、レイドボスの力をオート操作で使えるという優れものだからな。
だけど、俺はとくに乗っ取られることなんて無かった気がするけど。
「それはお前が元々狂ってるからだナァ!
イャ~、俺様完全にコキ使われてるだけで驚いたゼェ。
アッ、そろそろ時間のようだナァ~
せっかくだ、この宿主様にもよろしく伝えておいてくれヨォ~?」
そう言い終えると、ロリ巨乳からウナギ尻尾が消えていく。
【深淵顕現権限】のタイムリミットが来たようだ。
短い間だったが、もう会うことがないと思ってたジェーと話すことになるなんて思ってなかった。
正直全く有益な話は聞けなかったが、顔芸のような表情で話すボマードちゃんを見れたので良しとしよう。
ちなみに、ボマードちゃんにはジェーの伝言を伝えるのを止めて、その胸の谷間に包丁をお見舞いしてやった。
意識が戻った瞬間に自分に包丁が刺さっているのに気づいたボマードちゃんの表情といったら、なんともいい見せ物だった!
あの呆気にとられたような表情は癖になる。
やっぱり善行よりもプレイヤーキルだよな!
これだからプレイヤーキラーはやめられないんだよな、最高だぜ!
また一人犠牲者が出ましたか……
まったく、これだから底辺種族【包丁戦士】は……
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