1002話 【検証班長】の語り~海エリア編~
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!!
今日は【検証班長】に会いに行ってみようと思う。
ここしばらくはあんまりログイン出来ていなかったこともあって包丁次元の動向が掴めていないのもある。
前にも言ったが一部のエリアで何かしらの動きはあるみたいだが具体的に何が起きているのかは聞いておいても損がないはずだ。
というわけでやって来ました新緑都市アネイブルにある樹木をくり貫いて出来上がった建物、ここはクラン【検証班】の拠点……メッテルニヒである。
もはや顔パスの俺は一階の受付を素通りして【検証班長】の部屋へと無断侵入していった。
「うわっ【包丁戦士】さん!?
相変わらず前触れもなく現れましたね……
神出鬼没なのは心臓に悪いので止めて欲しいんですけど【包丁戦士】さんは言っても聞いてくれないですからね……」
当然だろ? 生産プレイヤーなら……ってな?
俺はおどけながら【検証班長】にそう返してやった。
【検証班長】の態度を見ていれば分かるだろうが諦められているので俺への注意はジャブ程度で済み、本題へと移ろうとしていた。
「それで今日はどんな用事ですか?
また良からぬことを企んでいる……とかでしょうけど」
それは酷い偏見だぞ!?
俺だっていつもそんなことをしているわけじゃない。
今日は純粋に情報を求めてきたんだ。
最近海エリア、荒野エリア、山間部エリア辺りが騒がしいらしいが騒がしいことくらいしか知らないから教えてくれよ!
最近はリアル事情でログイン時間もそこまで取れてなかったからな。
「そういうことですか。
3つのエリアの騒動についてはボクたち【検証班】でも情報を押さえているのである程度なら教えられますよ!
……もっとも、ボクたちは荒野エリアに力をいれて介入しているので情報に偏りがありますけど」
自信があるのか無いのか俺には判断がつかないような曖昧な返事をした【検証班長】。
知っていることは知っているが、荒野エリア以外の情報は概要程度……って感じだろうか?
まぁ、何にしても教えてもらえるなら是非とも教えてもらおうじゃないか!
「ではまず海エリアから……前に地蒜生渓谷メドニキャニオンでボクと【包丁戦士】さんが戦っていた時に同時に海エリアで艦隊戦闘が行われていたのは知っていますよね?
あのユニーククエストの第二弾が今まさに開催中のようです。
ただし、期間がそれなりに長いみたいなのでしばらくはかなりのプレイヤーが海エリアに流れていきそうな感じだね。
倒した相手の数でイベントポイントが手に入るようだから期間中は周回しているんだろうけど、【包丁戦士】さんのクランメンバーの【尺八僧侶】さんたちも魔海城船アンサンセで活躍しているようだよ。
……同じクランメンバーが参加しているんだからそっちから情報を聞いた方が早いはずですけど、【コラテラルダメージ】はそういうクランでは無いですもんね……」
よく分かっているじゃないか!
あいつらとはたまにしか会わないからな。
同じクランだが有事以外はある意味別系統だろう。
基本的にあいつらはあいつらで動く約束になっているからな!
「ただ、前の艦隊戦闘ユニーククエストの時のトップだったクラン【紅蓮砂漠隊】が圧倒的強さを見せつけているらしいので、他のクランが成り上がって単独の勝ちを拾うのは難しそうです。
ここ一ヶ所にユニーククエストが絞られていれば或いは別の可能性もありましたが、今回は3つ同時ですからね」
出た出た、噂のクラン【紅蓮砂漠隊】!
俺と深い因縁があるわけでもないが何だかんだ敵対することの多いクランだ。
顔見知りは何人かいるが、リーダーの【トンカチ戦士】とはまともに喋ったことも戦ったこともないからどんなやつか知らないんだよなぁ……
ここまでタイミングが合わないのはもはや運命的ですらあるだろう。
今回も海エリアは【ハリネズミ】たちの顔を立てて俺は行かないようにするつもりだからな……
「海エリアでの戦闘は船を使うので地上戦が苦手でも安心なことがプレイヤーたちを惹き付けている要素の一つみたいです。
……と、【包丁戦士】さんはここに行かなさそうな顔をしているのでそろそろ他のエリアの話にしましょうか」
そんなに顔に出ていたか?
ポーカーフェイスを学ぶべきでしょう。
露骨に態度として現れていましたからね。
全く、これだから劣化天子は……
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