1001話 包丁成分急速補給!&番外編~【菜刀天子】の日常~
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ】ー【次元天子】【上位権限】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
なんか三週間くらい回想で間が空いたような気がしたがそんなことを気にすることなくこのゲームを楽しませてもらうとしよう!
……とは言うものの、聖剣次元を倒してからというものの特に大きな出来事が起きていないためゆっくりと時間が過ぎていっている。
俺が今抱え込んでいる案件としては世界剣種関係、深淵奈落のその先、封印の森の攻略くらいでそっちの進捗もないからなぁ……
他のプレイヤーも含めるなら海エリア、荒野エリア、山間部エリア辺りで動きがあるらしいが詳しいことは知らないからそのままノータッチである。
流石にあの聖剣次元との戦いで気力を使いすぎたのと、ゲーム運営プロデューサーである【山伏権現】に誘われて入った【株式会社幽刻修験堂】の短期研修を受けていたのもある。
俺がやることは正直これまでとあまり変わらないようで、有事の際に動かせる人材の確保ということで採用されたらしい。
日常生活での縛りが少なく特に呼び出しがかからなければ何もしなくても給料が振り込まれるらしいので、かなりウマイ話だった。
……まあ、かなりキナ臭い裏事情もあるが基本的には長期間のトレジャーハントをしていても問題なさそうだったのが決め手だったので、実質スポンサーになってもらったようなものだ。
そんなわけでゲーム内ではまったり、現実では慌ただしかったのでそろそろ何かしらの動きがありそうだがとりあえず新緑都市アネイブルに行くか!
というわけでやって来ました新緑都市アネイブルのほのぼの市場!
プレイヤーたちの大規模交流が行われているこの場所はやることが見つからなかったら行くところとして最適だな!
実際、今俺は買い食いをしながら店を渡り歩いている。
うん、この鶏肉の串焼きはウマイな!
現実の屋台でも定番だが、串焼きは片手で食べやすいのと味付けがシンプルかつ濃いので所謂『食べている感』を気軽に味わえるのが魅力的だぞ!
「あっ、【包丁戦士】さんじゃないですか!
いや~、ここしばらく顔を見かけなかったので私の中の【包丁戦士】さん成分が不足していたんですよ~!
こうやって出会えたのは運命なので、存分に補給させてもらいますからね~!」
買い食いをしていた俺に飛び付いてきたのはタンクトップロリ巨乳のボマードちゃんだ。
いつもの謎理論で俺に纏わりついてきていて頬擦りしてきた。
……この頭お花畑の爆弾魔ちゃん、いつもよりスキンシップが激しいな?
「私の胸を鷲掴みにして揉みくちゃにする【包丁戦士】さんには言われたくないですよ~!
いや~、【包丁戦士】さんと会わない期間が長いとこんなに身体がもどかしくなるなんて私も思ってなかったです!
いつの間にか身体の芯から【包丁戦士】さんのモノにされちゃっていたってことですよね!?」
どうしてそうなった!?
流石は頭お花畑……そんなにお望みならやってやろうじゃないか!
俺はボマードちゃんの挑発にあえて乗り、サイドステップを駆使して音もなくボマードちゃんの背後に回り込むとそのまま力一杯たわわに実った2つの果実を握り締めていった。
相変わらずデカイなっ!?
俺の両手に収まりきらないほどデカイ果実……これはスイカサイズと言われても信じられるぞ……
それを揉みくちゃにしていくとボマードちゃんはだらしなくヨダレを滴しながら地面にへたり込んでしまったようだ。
「はあっ……はあっ……はあっ……
いや~、流石は【包丁戦士】さんっ!
私はもうこれが無いと満足できませんね~!」
うるせ~!
これでも食ってそのピンク思考に犯された口を閉じてろ!
俺はそう言って持っていた鶏肉の串焼きをボマードちゃんの口に勢いよく突っ込んでいったっ!
……流石に現実でやったら危険だから真似しないようにな。
「モゴモゴモゴ……
あっ、これ美味しいですね!?
塩味がきいていて汗を流した後にちょうどいい味わいですよ~!
炭火焼きっぽい香りも食欲をそそります!
……今さらですけど、やっぱりこのゲームは戦闘するよりも食事をしてた方が実りはありますよね」
それは言うな!
多分みんな気がついていて引っ込みがつかないやつだからな……
俺が料理一筋ではなくレイドボスに挑むことになったのにはそれが一つの理由になっているから人のことを言えなかったりするんだよなぁ。
つまり、なりゆきってやつだな!
やはり劣化天子のプレイ歴を遡っても相変わらずでしたからね……
全く、もう少し思慮深くなって欲しいところです。
【Bottom Down-Online Now loading……】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~ 1000話突破記念番外編 ~
【菜刀天子】の日常
ーー【包丁戦士】さん不在の天子王宮から【菜刀天子】さんに取材をさせてもらいますーー
ーー今日はよろしくお願いしますーー
「私の日常が見たいとは随分と思い上がった態度ですね?
全く、これだから底辺種族は自らの立場を弁えていないのですよ……
ですが今回は特別に次元天子としての立場を追われた今の私の生活を見せてあげましょう」
ーーーーーーーーそれは?ーーーーーーーーーーー
「今私が何をしているのかも分からないとは呆れました。
この書類は次回開催予定の公式イベントの起案です。
次元天子の立場こそ追われましたが、あの劣化天子がイベントを開く気がないので私がこの役割を引き続き代行するように【山伏権現】から請け負いました。
冒険者であるプレイヤーを導くという私の思考の根幹は次元天子であった時から変わっていませんからね。
精々、その思考の幅が狭い頭で楽しみにしておいてください」
ーーそれでは楽しみにさせてもらいます笑ーー
ーーあっ、誰か来たみたいですよ?ーー
ーーあれは、【ミューン】ですねーー
「あなたたち底辺種族のプレイヤーには馴染みのある元レイドボス【兎月舞う新緑の主】です。
倒されてしまったので人の形態しか取れませんが、それでも底辺種族たちを一蹴するだけの力は持ち備えているので戦いを挑むのは賢明ではないので覚えておくように」
「ごはん……ほしい……」
「はいはい、劣化天子が置いていった満漢全席があるのでこれを食べていてください……
これは完全に劣化天子に餌付けされてますね、今さらですけど」
ーーこのテーブルに並んでる料理って【包丁戦士】さんが作ったやつなんですか!?ーー
ーーあの人本当に凄いですねーー
「そのせいで私が時折【ミューン】に餌を与える必要が出てきてしまったのが悩みのたねです。
昔は【ミューン】はここまで食欲旺盛ではなく、むしろ食事より戦いを求める戦闘狂だったのにどうしてこうなってしまったのでしょう……
鯨飲馬食を担当するような食欲の主は他の聖獣【ウプシロン】の代名詞だったのですよ?」
ーー食費がかかりそうな身内ですね笑ーー
ーーでも、賑やかそうでなによりです笑ーー
「確かにこの天子王宮までしか自由行動が出来ないので聖像の守人である【ミューン】が来てくれるだけ気は紛れますね」
ーーそれは?ーー
「あぁこれですか?
底辺種族たちの使用している掲示板ですね。
有象無象が蔓延るほぼ無益なものですが、トレンドを探るのには便利なものです。
公式イベントを作成する際の参考にしているので定期的に巡回してます」
ーー仕事熱心ですね笑ーー
ーー私もこれからは変な書き込みをしないようにしますーー
「そうしてください。
見るに堪えないものばかりですので少しでも高尚なものになるよう、底辺種族たちは研鑽するように!」