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第一話 異世界転生したと思ったら日本も転移していた件

西暦二〇二五年八月一五日 日本国において国外との全ての通信途絶、その後の調査により日本国国土全域及び排他的経済水域内の全ての陸地及び航行する艦船、飛行する航空機が所謂『異世界』に転移したと言わざる得ない事態にある事が判明


西暦二〇二二年八月一九日 日本国政府国民及び国内滞在の全ての外国人に現状を公開、資源・食料の統制体制を取る事を通達、また米国総領事館と本件に対して協力体制を取る事で一致

 

西暦二〇二二年八月二一日 日本国対馬より八〇〇キロの位置にて陸地を発見。日本国政府、自衛隊及び有識者による調査隊派遣を決断


西暦二〇二二年八月二六日 日本国政府調査隊、在日米軍と共にゴンドワナ大陸に初上陸、以後調査隊は同地の気候、地形、生物、植物、鉱物等の調査を開始


西暦二〇二二年九月七日 調査隊、ゴンドワナ大陸にて初の人型生命体と遭遇、言語学者を介した意思疎通のための接触開始


西暦二〇二二年九月二〇日 調査隊、当時の大陸覇権国にしてゴンドワナ大陸完全制圧を図るギルベルタ帝国と初接触。調査隊のメンバーの虐殺及び在日米軍による自衛攻撃により双方に多数の死者発生


西暦二〇二二年一〇月三日 ギルベルタ帝国、日本国に宣戦布告。日本国政府与党、国家と国民の生存のための特別法案提出・強硬採決。『第一次大陸覇権戦争』勃発


西暦二〇二三年四月一日 中立都市トラビスにて講和条約締結。ギルベルタ帝国、ゴンドワナ大陸竜牙山脈以南を日本国に割譲、両国間の通商条約締結。


西暦二〇二三年六月二日 大陸開発基本法公布、元日本国内滞在旅行者を中心に第一次移民団一〇〇万人が沿海州に入植


西暦二〇二九年一二月二四日 日本国施政権に逃亡する奴隷に関する引き渡し問題が激化、ギルベルタ帝国との『第二大陸覇権戦争』勃発。帝国、ノースコード平原を日本国に割譲


西暦二〇三〇年一〇月三〇日 大陸開発基本法の要件緩和。ノースコード平原に日本人の入植開始。後に逃亡奴隷、現地人を活用したプランテーションが発達


西暦二〇三九年四月一日 日本国自衛隊、自衛軍に改称。及び大陸方面隊の設置、現地人部隊の編制開始


西暦二〇七〇年二月一日 大陸西方諸国に対する抑圧的な外交に対して日本国政府、ギルベルタ帝国を批判。数度の交渉の末日本国政府、帝国に宣戦布告。『第三次大陸覇権戦争』勃発。同年五月停戦。西方諸国に対する日本の政治的優位、及び両国国境在住の小数民族の独立国家の成立を承認させる


西暦二〇七二年八月一五日 日本の異世界転移より五〇年を記念した談話発表、西暦の廃止及び転移暦の使用を決定、転移した二〇二二年を元年としてこの年を転移暦五〇年とする


転移暦七七年以降 日本統治圏内の大陸原住民の教育水準向上を理由に民族・種族ナショナリズムの高揚


転移暦九〇年以降 日本統治圏内辺境部にて土地・資源の収奪、入植者と原住民の格差を理由とした反日本武装闘争を初確認、大陸方面隊の増強と自衛軍拡張を国会にて採決


転移暦一〇二年三月一八日 トリアナ密貿易事件。大陸方面隊、外地における交易監視のための治安憲兵隊の編制を決定


転移暦一一三年四月一日 日本本国にて大陸諸種族自治法改正案の採決、大陸における内戦の危機が緩和される。首都東京にて政府の妥協を非難するデモ行進が実施


転移暦一三五年七月七日 在ギルベルタ邦人の殺害を巡り航空自衛軍による帝都報復爆撃。ギルベルタ帝国の譲歩により大陸方面隊国境展開の二個師団を撤収


転移暦一三八年 本国総選挙にて野党革新派政党が躍進、対ギルベルタ・対大陸政策における強硬論が盛り上がる。大陸諸種族自治法改正案の示唆、大陸ナショナリズムが再燃し主要都市における小規模デモが開催される


転移暦一四一年 与党立憲自由党、外地に対する融和政策を推進、部分的参政権認可により外地における反宗主国運動が一時的に沈静化




……おう、何だこの長々しい文字の羅列はって思っただろうな?良く分かるぞ、俺だっていきなりこんな文章読まされれば眠たくなる。国語の授業とか苦痛だよな?


さて、さてだ。話を少し変えよう。諸君は転生という言葉をご存知か?より正確に言えば『異世界転生』と言うべきか。そうだ、十中八、九トラックに轢かれた後に老人だったり美女だったりロリだったりする神様に会って土下座されてチートを貰うアレだ。


このような事をこのタイミングで口にするという事は察知がつくだろう。端的に言えば俺は異世界転生したらしいのだ。どうやって死んだかや神様とか言う存在の容姿はここでは省く。取り敢えず俺が死んで神によって転生したと分かってくれれば良い。


でだ、転生したのは良い。転生の特典?何それ?な事言われたのは諦めよう。流石にチート能力で俺Tueee!なんて夢物語だったんだ!まぁ、いいさ。代わりに言語の方は問題ない、日本語が通じるようにしてくれたと言っていた。


だが……。


「いやぁ、流石にこういう意味ってのは斜め上だったね!!」

「ど、どうしましたかわかさま!?」

「あ、いや……何でもない……」


私の奇声に傍らに控えていた少女が『日本語』で動揺したような声を上げ、俺に尋ねる。雑草生い茂る丘の上で座っていた俺は慌てて誤魔化しの言葉を口にする。


俺は目の前の十歳前後のメイド服の少女……カリアを見つめる。黄金色のウェーブのかかった髪に青い瞳、所謂コーカソイド系の可愛らしい、あどけない顔立ちは前世でも探せばいるだろう。


だが流石にそのホワイトプリムと一緒に当然のように乗っかっている犬耳は現実にはあり得ない。


「わかさま……?」


じー、と頭の上から生え垂れ下がる犬耳を見つめていれば不思議そうに頭を傾げる幼馴染のメイド。おう、そりゃあお前さんにとっては普通だろうさ。いや、この世界の者達にとっては、か………。


「……いや、カリアのその服装似合っていると思ってな?」


俺は内心の困惑を気付かれないようにそう話題を逸らす。しかし彼女はそんな俺の気持ちなぞ梅雨知らず花が咲くような純粋な笑みを浮かべてスカートを掴み見せびらかすようにグルグルと回った。


「はいっ!おくさまとかせいふちょーからきょうからじょちゅーみならいになるからっていただいたんです!こんなにふりるがたくさんあって……へへっ、だいじにしないといけません!」


はにかんだ笑みと共に今日から我が家で女中見習いになる事を伝えるカリア。我が家の使用人のメイド服は鎮西市の仕立屋兼工場からオーダーメイトで注文するのが伝統だ。遠くから鉄道伝いで運ぶので子供用とは言えそれなりに値が張る代物だ。逆に言えばだからこそ我が家の使用人達に着せてその財力と権威を小作人達に見せつける意味があった。


「そうか。そりゃあ良かったな」


俺ははしゃぐ犬獣人の少女に苦笑し、次いで視線を正面に戻す。その先にあったのは我が家の広大な土地であった。


……地平線の先まで続く黄金色の小麦畑、このノースコード平原の気候に合わせて品種改良された小麦は味も良く、収穫率も高い。正方形四方で区切られ永遠と続く小麦畑は全て我が家のものだ。一五〇年余り前に移民した御先祖様が苦難の末に切り開いた土地である。


小麦畑は収穫の時期であった。『羊獣人』の老人が巨大なコンバインを動かして小麦を収穫していくのが見えた。その周辺では脱穀され袋詰めにされた小麦袋を陸鳥の引く馬車にまで運ぶ他の小作人達が映る。


馬車が向かう先にあるのはそれなりの大きさをした村だった。赤煉瓦で作られた西洋風の村。そこから少し離れた先には菜園や牧場があり、更に奥に見えるのは大きな屋敷であった。


白亜の城……とまでは言わないがフェンスで囲まれ、大きな門構えの屋敷は村の小屋が一〇〇個位入りそうにも見えた。実際庭先も含めれば入ってしまうだろう。この村の領主の屋敷であり……俺と俺の家族の屋敷だ。大陸中央部本土系地主一族犬居家の屋敷である。ここまで言えばもうお分かりだろう?いや、冒頭の文章の羅列でもう分かる人は分かっていた筈だ。つまり………。


「はぁ、そりゃあ言語の心配もせずに済むだろうけどさぁ………?」


流石に俺よりもずっと昔に日本が異世界転移しているとか有りですかぁ……?


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