第96巻
第106章 追試[1]
山門が家に帰ると、すぐに彼の両親が通信簿を見たがった。
彼自身は嫌だったが、いつかはばれるし、出せ出せとうるさかったので、しぶしぶ出した。
「英語、どうしたの?」
「…落としました」
「そうよね、なぜ?」
「…何故って言われても…」
山門が母親にじっと見つめられている間、山門の妹である華音が通信簿を出した。
山門を見ながら、華音の通信簿をみた母親は妹も山門の横に座らせた。
「二人とも、なんでこんな成績なの?」
「…ごめんなさい」
「ゴメンですむなら学校なんて要りません。華音もです」
「…はい」
「明日から、みっちり勉強に励んでもらいます。いいですね」
「…分かりました」
二人とも、親からきつく言われてスゴスゴと部屋へ帰った。
山門は、そのことをメールで鈴に伝える。
すると、5分ほどで返信が帰ってきた。
「じゃあ、私が教えてもらっている家庭教師を送るわ。費用は私と一緒に勉強するっていうことで、私が持つね」
「いいの?」
「もちろん。ただ、両親には先に話しておいてね。急に行っても驚かれるだろうから」
「わかった、ありがとう」
山門は鈴からのメールを受け取ってから、すぐに両親のところへ向かう。
山門の母親である香里は、その話を聞くと、すぐに言った。
「それだったらいいわよ。でも、落ちたら怒りますからね」
「わかった」
山門はすぐに親から許可を取ったことをメールする。
すると、鈴から電話がかかってきた。
「はい、永嶋です」
「あ、山口鈴です」
「ああ、鈴か。山門だよ」
「あ、うん。メール読んだよ。それでね、少し聞きたいんだけど、いつぐらいがいい?」
「時間っていうこと?」
「そうそう、私はいつでもいいから、山門に合わせるよ」
「ありがと。ちょっと待ってね」
携帯電話の保留ボタンを押し、母親と話す。
「母さん、いつぐらいに来てもらったらいい?」
「できれば一日中がいいんだけどね…もう授業もないし、午後からがいいんじゃない?」
「じゃあ、1時から5時まで?」
「いいわよ」
山門はそれから保留を解除して鈴に再びつないだ。
「もしもし、山門です」
「待ってました。で、どう?」
「午後1時ぐらいから5時ぐらいまででどうかなって」
「いいよ。どっちの家でする?」
「自分の家かな?」
母親に目くばせをしたが、あまりに気にしているようではなかった。
「明日の1時に、山門の家まで家庭教師を連れていくから。私もいっしょにね」
「待ってるよ」
そう言って、二人はほぼ同時に電話を切った。