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女子高と男子校  作者: 尚文産商堂
修了式編
91/688

第91巻

第101章 1年間の総括としての修了式


卒業式が終わると、1週間後に修了式がある。

その時には、生徒一同いらないと思っている[一部生徒を除く]、あの通信簿が来ることになっていた。


「起立、気をつけ。礼、着席」

幌のクラスの委員長は今年度最後になる終礼で、いつものようにしていた。

「はい、1年生が終わるにあたって、君たちにこれを授けよう」

担任である高槻がどこかのスーパーの紙袋から取り出したのは、クラス分の通信簿だった。

一瞬で表情が凍っていく生徒一同だが、高槻自身は慣れた口調で無視を決め込んだ。

「出席番号順に呼ぶから取りに来いよ。"赤いアヒル"と"赤い煙突"がついてるやつは終礼が終わってから前に集まれ」

先生があいうえお順に並んでいる出席番号で呼び続けて行く。

一気に教室が騒がしくなるのは、自分の通信簿のなかに欠点がないかどうかをみんなと話し合うためだった。

アヒルも煙突も、欠点を示す隠語で、それぞれ2と1という意味だった。

「3年生の3学期以外は全部10段階評定だからね」

「そうそう、中学は5段階だけだったから、最初は驚いたけど」

幌たちは、まだ通信簿をうけとっていなかったからこそ、こうやって談笑することができていた。


「井野嶽幌」

幌が呼ばれるとほとんど同時に、受け取っていた。

「どうだった?」

「あとでまとめてみようぜ」

幌はそう言って、たたんだままで机の中に入れた。


5分ほどかかって、全員に配り終えた。

「いっせーのっ!」

バッと勢いよく通信簿を開けた。

「アヒルも煙突もなし」

だが、一人だけ顔色がおかしかった。

「どうした、永嶋」

「…英語、アヒルさんが泳いでる…」

「アチャー」

手のひらを額に叩きつけ、残念そうな表情を浮かべるのは、雅だった。

「欠点者は、放課後に端っこの多目的室に集合。それじゃ、解散!」

そして、山門を励ますように周りに幌たちが集まった。

「英語だろ?なんとかなるって」

「なんとかなってたら、欠点なんかとらないと思うんだけど」

だんだん、雰囲気が妙にねじれて行くような感覚が、周りに渦巻く。

「分かった、追試に合格すれば、何かおごってやろう」

「いいのか」

幌が山門に提案した。

「コンビニでおにぎりぐらいしかできないがな」

「ステーキとかがいいな」

「そんな金持ってないって」

笑いながら幌が言った。

「そいじゃま、今日は部活の最後の日だし、そっちよってから帰るとしようか」

山門を囲っていた輪の中の誰かが言うと、つられるように人が去っていった。

「じゃあ、また」

最後に幌が机から離れると、覚悟を決めたように山門は教室を出た。

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