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女子高と男子校  作者: 尚文産商堂
立てこもり編
8/688

第8巻

第13章 両学校にて


次の月曜日、学校へと向かった。

幾時間が過ぎたとき、桜は外を見ていた。

「ふぁ〜…」

そんなときに、桜は大あくびをしていた。

「眠いの?」

氷ノ山が空いていた席に腰掛けた。

「ああ、氷ノ山…昨日あんまり眠れなくて…」

氷ノ山は、桜に聞いた。

「どうしたの」

「いや…ちょっとね…」

それから、桜が軽く伸びをしてから言った。

「あ〜あ、なんかおきてくれないかな〜」

「例えば?」

「白馬の王子様が、私を連れて行ってくれるの。あ、それか、誰かが攻め込んできて、このつまらない日常をぶち壊してほしいね」

「怖いね。そんなことが起こらないことを願っているよ」

そんな時、チャイムが鳴った。


その日の放課後。それぞれは、部活のためにそれぞれの部室にいた。

部活動はそれぞれの高校に別れて行われることになっていたため、男女がごちゃごちゃになる唯一の機会だった。


いったん彼らの部活をまとめておくと、

幌と琴子は料理部、桜は天文部、永嶋と山口はコンピューター部、星井出は情報部、雅はアニメ研究部、氷ノ山は公安部、文版は放送部だった。


放課後になってから1時間ぐらいが経ったとき、とつぜん警報が鳴った。

「現時点をもって、校外へ出ることは禁止します。生徒は全員、女子高の体育館に集合してください」

職員室からの優先放送だった。それを聞いて、9割がたの生徒は体育館に向かったが、一部の例外的な生徒はその場に残った。


文版は、9割がたの生徒だった。

体育館のステージ端にある放送室で音量調節をしなければならないのだった。

「なんで突然?」

「知らないけど、やれることをしておかないと」

放送部の面々はその場所に向かった。そして、部屋の鍵をかけた。

外では、雨が降り始めていた。


料理部は、料理が焦げてはいけないというので、作り終わってから行く事になっていた。

「突然の放送か…料理を作っているとき以外に流してほしかった」

幌が愚痴った。

すぐ横にいた琴子がつまみ食いをしながらもはっきりと聞こえる声で言った。

「ええやんか。わてが食べれるんやったらどんな状況でもかまへんで」

「そりゃ、琴子は食べる専門だからだろ。作り手のことも考えてよな」

「へいへい、わーりやしたよー」

そう言い合っている間にも、雨はゆっくりと激しくなっていた。


情報部と公安部は、月に一度の合同ミーティング中だった。

情報部の部室に双方の部員が全員集合していた。

放送が聞こえた瞬間に、すべての窓に鎧戸が閉められ、扉には鍵が閉められた。

「この部屋は、密閉状態です。いかなることが起きようとも、この部屋だけは生き延びれます」

情報部部長が告げた。

「外に出るときはどうするんだ?鍵までかけているだろ」

公安部部長が聞いた。

「内側から開けられるようになっています。外側からは手出しは一切できません。この内部の状況は、CIAだろうと、いかなる諜報分野のエキスパートでもわからないようになっています」

「どんな部屋だよ…」

「屋根に温熱版を張り巡らしています。さらに、この鎧戸は特注で、電磁波を発しています。これは、レーダーを狂わせるだけでなく、いかなる無線も通さないようになっています」

「ほかには?」

「壁の中にも屋根と同様の機能があり、壁を触ると暖かくなっています。ほかにも、いかなる人であれ、情報部のパソコンに侵入することはできません」

「どうしてだ。ハッキングすらできないパソコンって聞いたことが無いぞ」

「そもそも、ネットワークにつながっていません。外界と一切遮断された状況なので、何者も侵入することはできないのです」

「確かにな。アナログ的な手法だが、最大の防御策だろうな」

そういいながらも、中で待つしかなかった。

外の動きは、防犯カメラや隠しカメラなどで、音声付で把握はできるのだが、ここから指示を出すことは事実上不可能だった。唯一可能だったのは、構内電話を使うことだった。


コンピューター部部員は、天文部にいた。

天文部のパソコンの様子がおかしいということだったので、その調査に来ていたのだった。

放送が聞こえていたが、天文写真を取る機会は一瞬ほどしかないという主張が通り、緊急集会時には、写真撮影または処理後にきてかまわないということになっていた。

「わざわざ全員で来なくても…」

桜が言った。

「暇だったしね」

永嶋がパソコンと戦いながら言った。

すぐ横では、山口が見ていた。

「さっきから、BIOS画面で止まるなー、どうしたんだろ」

永嶋がつぶやいていた。

「あっちの設定…いや、正常か…桜、壊れる前にソフトとか入れたか?」

「ううん、勝手に壊れたの」

「そうか…『Linux』を試すか…」

そう言って、永嶋はもっていたかばんの中からCDを取り出した。

「これでうまく動かないようだったら、こいつが壊れているんだ」

そういって、ドライブを指差した。

「これ、いつから使ってるの?」

「さあ、3年は経ってるっていう話だけど…」

「そうか、じゃあ、壊れていたとしたら、保障がきくな」

そういって、中に入れた。

Linuxのマスコット『Tux』と文字列が突然出始めた。

「正常に起動。じゃあ、悪いのはOSの方だな。このOSは何かわかる?」

「確か、『Windows XP』だったはずだけど…」

「…相性じゃないし……とりあえず、必要なデータはこれで救出できるから、いるものだけ、別のハードディスクに移して。その後、OSを修復インストールするから」

永嶋はそれだけ伝えると、席を立った。

直後、誰かの着信メロディが流れた。

「はい、山口鈴です。あ、千夏。うん、何も起きないって。安心して。そっちは…そっか。わかった。じゃあね」

山口は、携帯を閉じた。

永嶋がきいた。

「千夏って誰?」

「わたしくの妹で、山口千夏ちかといいます。今は、全寮制の中学校に通っています」

「妹なんかいたんだね」

「そうです。話していませんでしたか」

「そうだな、聞いたことがなかったな」

「そうでしたか…」

山口は、そう言って天井を見ていた。

「千夏は、元気そうでした」

「そっか…」

それきり、二人とも黙っていた。


そのころ、アニメ研究部では、今季のアニメの話やゲームをしていたりしかしていなかった。

放送なんか、聞いていなかった。

「…つまり、『とある魔術の禁書目録』は、なかなか面白いと」

「そういうことです。初めてであったときが、おなか減ったという発言も、なかなか面白いと思います」

そのとき、誰かが言った。

「このゲーム、2面の途中までしかない…」

「え?どんなゲーム?」

「『TRAUM』って言うゲームです」

「ああ、それは製作途中のゲームだから、それは当然だよ」

「そういうことでしたか…」

そして、再び今季のアニメの話に戻った。


体育館に集められた生徒たちは、突然、銃を持った人たちによって取り囲まれた。

「我々は、おまえたちに危害を加える気はない!」

そう宣言したのはいいが、生徒たちはパニックになりかかった。

その瞬間、天井に向かって実弾を発砲した。

「お前たちが騒ぐならば、見せしめが必要になる。その場にすぐに座れ」

生徒たちは、その場に静かになって座った。

犯人たちは、顔を分からないようにスキーマスクをかぶり、手には銃器類を持っていた。

6人ほどが体育館にいた。


情報部では、体育館のカメラ映像を見ていた。

「立てこもりが始まったな。警察へ連絡を入れておこう」

「でもさ、校内放送の電話しか外部と連絡が取れないんだろ?」

「そうだけど、とりあえず連絡できる場所はあるから…」

部長同士が会話をしていた。

そして、とある場所に連絡を取った。


「はい、こちら天文部です」

「天文部ですか。こちらは情報部部長です。

特別権限により、そちらの情報を接収しました。現時点を持って、両校敷地は情報部及び公安部の特別権限指揮下に置かれます」

「ちょっと待ってください。どういうことですか?」

「両校生徒をひとつの場所に集めて、人質にとられました。情報部及び公安部両部長は、緊急事態と認定し、先ほどの決定を下しました」

「…わかりました。では、これからどうすればいいでしょうか」

「情報部部室に来てください」

「了解しました。では、これより全部員で向かいます」

天文部部長は、校内電話を置いた。

そして、その場にいる全員に伝えた。

「情報部及び公安部の部長が緊急事態を宣言した。

我々は、今すぐ情報部部室へ向かう」

「わかりました」

一同は何も言わずに、天文部部長について行った。


天文部部室であるプラネタリウム室は、女子高側にあり、情報部の部室も女子高にあった。

「敵であると判断した場合は、即座に殴る。それで行く」

先頭で進んでいる永嶋が言った。

「わかった。情報部の部室は、一番南側の1階にあるよ」

「了解」

永嶋はそういって歩き続けた。


体育館では、放送部部員が警察へ独自に通報していた。

「どうする?」

「どうしようもないでしょ。ここで待機。それがボクたちができる唯一の行為」

体育館の部室内に鍵をかけて立てこもっていた。

「とにかく、食料、水分、寝る所は必要だね」

「機械やコード類を片付けたらできるんじゃないか?」

「さっすがミヤミヤ。目の付け所が違うね〜」

「いや、普通に気付こうよ」

そういいながらも、とりあえず整理を始めた。

その音はとても静かだったので、外に漏れる可能性は無かった。

雨は、豪雨といっても過言ではない状況になっていた。

両校で部活動をしていた生徒がひとつの狭い箱の中に押し込められていたため、不快指数は最悪値を観測していた。


どうにか、天文部の一行は情報部の部室の前までたどり着いた。その間、敵と遭遇しなかった。

「さて、ここが情報部の部室なんだが、どうやって入るんだろう…」

その時、扉が内側から開いた。

「早く入って」

招かれるままに、一行は中に入った。


少し蒸し暑くなっていた情報部部室内だったが、全員が横になれるほどの隙間はあった。

「ここが情報部…」

「そうです。初めまして。情報部部長です」

「初めまして。ところで、何が起きたんですか?」

「全生徒が、何者かわからない集団によって、人質に取られました。現在、犯人の人数はわかりませんが、最低で5人はいます」

「わたくし達は何をすればいいでしょうか?」

「ここにいて下さい。なにかあればこちらから指示をします」

「分かりました」

そして、雨は激しさを増し始めた。

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