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女子高と男子校  作者: 尚文産商堂
冬休み 大みそか~正月編
78/688

第78巻

第88章 大晦日からお正月 [3]


琴子と雅は、家のそれぞれの自室にいた。

大みそかにはいとこも来ることになっていたから、先に全部終わらせようということだった。

「ねむ~…」

12月30日という日付に突入し、午前1時になるまで、雅は起きて宿題を終わらせていた。

「最後だからな……」

数学のプリントの最後に残した1枚を見下げながら、シャーペンを滑らせた。


午前2時になるころには、終わることができた。

伸びをして、軽く屈伸運動をしてから布団に入ろうとする。

すると、ドアを勝手に開けて琴子が入ってきた。

「どしたの?」

急に入ってきて驚いている雅に、琴子はいった。

「急にパソコンの調子が悪くなって…みてくれへん?」

「明日な。とりあえず、シャットダウンしとけ」

そういうと、雅は布団にするっと潜り込んだ。

その布団を全力で琴子がはぎ取った。

「ちょっ!」

「助けてよ!」

急に布団がとられたことで雅は一瞬怒ったが、涙を流しそうになっている姉を見て、思いとどまった。

「…わかった」

そう言って、雅は琴子の部屋へ向かった。


「これなんやけど」

さっきまでの泣き顔がウソのような表情を浮かべ、それでも心配気味な琴子は雅におずおずと聞いた。

「とりあえず、シャットダウンできるかどうかを調べてみる。それができなければ、そのまま強制終了させることになる。いいね」

完全にフリーズしたようで、シャットダウンできるとは思わなかったが、雅はとりあえずその手順で進むことにした。

『Ctrl+Ait+Delete』を押し、『タスクマネージャー』を起動させる。

しかし、その動作すら拒否されることが分かった。

「コンセントを抜くよ。保存されていないものは全部その情報は消えるけど……」

「仕方ない」

そういうと、雅の肩に手を載せた。

達観しているような表情にも見えた。


コンセントを引っこ抜いて、無理やり電源を落としてから、雅は布団へ入る為に再び部屋へもどった。

すでに時計は2時半を示していて、これから起き続けるか悩ましい時間だったが、雅はそのまま布団に文字通り倒れ込み、数秒で眠りについた。


起きると、琴子の部屋へ最初に入った。

ベッドで寝ていた琴子を起こさないようにして、パソコンを確認する。

「…ウイルス検査を実行、このパソコンのハード全部…」

セットして実行させると来た時と同じように静かに部屋から出て行った。


数時間後、琴子が起きてきた。

「パソコンが勝手に動いてるんは、雅がいじったんか?」

雅は、寝ぼけているように見えるが頭ははっきりとしている琴子に答えた。

「そうだよ。急に動作が不安定になった時には、ウイルスだということも考慮に入れておかないといけないから。念のためにチェックさせてたんだけど」

「だったらいい。昼ご飯は?」

「母さんが買いに行ってる。父さんは忘年会で帰ってくるのは遅くなるってさ」

「そっか」

琴子があっさりと引き下がったのを見て、雅が聞いてみる。

「なんか、変な感じだな」

「ん?」

そのまま部屋へ戻ろうとしている琴子を呼びとめる。

「いつもだったら、なんか色々言ってくるだろうに、今日に限ってなにも話さないっていうことだよ」

「ああ、ちょいと考え事をしとってな……」

だが、その考え事の中身については、なにも言わなかった。


翌日、いとこたちが雅達の家に来た。

「お久しぶり、マーくん」

「やあ、去年の夏以来だったかな?」

父親がかれらの母親を一番最初に家へ入れた。

雅の父親といとこの母親は兄妹で、紆余曲折がありながらも、仲良くしているのだった。

「それで、今度はどんな話をしてくれるのかな?……」

両親同士は、そのまま居間へといったが、いとこ同士は琴子の部屋へ集合した。

雅の部屋は片付いているとはいえ、いろいろと詰め込まれている倉庫のような状態だったからだ。


琴子の部屋へ入ると、すぐに彼らはベッドに座った。

「それでー?」

「何?」

いとこの妹に当たる陽日(はるひ)がニヤニヤ顔で聞いた。

「彼と付き合うっていう話はどうなったのかなって思ってね」

「彼って、幌のことか?」

雅が琴子に聞きながら、陽日も同時にいう。

「けんもほろろにされてるんじゃないかって、いとこながらに心配になっただけだよ~?」

そういいながらも陽日は笑っている。

「まっ、まだ…だけど……」

消え入りそうな声で、明後日の方向を見ながら答える。

「早くしないとさ、誰かにとられちゃうかもよ?」

そういいながら、廊下の外をドアを開けて確認する。

「まあ、コっちゃんなら、とられるようなヘマはしないと思うけどね」

そう言って、そのあたりから、彼らの話は広がっていった。

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