第72巻
第82章 冬休み前半 [1]
終業式の翌日、クリスマスから一転してお正月へと準備を進めて行っていた。
幌の家では、お正月には少し早いが、叔母の家に行くということもあってさくっと宿題を済ませて、テーブルの上にかご山盛りに盛られたミカンを食べながら、テレビを見ていた。
「姉ちゃん、宿題は?」
「とっくに終わらせたわよ。あんなもの、ちょいちょいってね」
手のひらよりも一回りほど小さなみかんの皮をむくと、一口で食べた。
「そんなことよりも、幌さぁ、お正月終わってから友達の家に遊びに行くんでしょ」
「そのつもりだけど?」
テレビのチャンネル権争いは姉が勝っていたため、桜が好きな番組がテレビに映っていた。
「私も行くっていうことを伝えたんでしょ、どうだって?」
「まだ連絡が帰ってきてないから分かんないや。とりあえず、4~7日は開けているけど、行くやら行かないやら……」
その時、幌の携帯の着メロが流れだした。
「だれから…ああ、噂をすればなんとやら」
話していた小学生の時の友人からのようだ。
「ようやく来たと思えば、ちょっと用事が出来たからムリになったってさ。また機会があればって」
幌がメールの文章を見ながら、桜に概要を伝えた。
「しょうがないね。用事が出来たのなら。親戚の家に、長居できるっていうことでいいとしようよ」
「お伊勢さんにお参りして、おみくじ引いて、お札買って…ほかには?」
「従姉妹と会うんだから、ちょっとは考えた方がいいんじゃない?親戚の同世代の中で、唯一の男が幌なんだからさ」
伊勢にいる親戚の家は、3世代9人家族で、祖父母が4人全員が健在で、両親と3姉妹で構成されていた。
長女は、今年が大学受験の年になっていてかなりピリピリしていると聞いていた。
次女が高校1年生で、幌と桜達と同い年、三女は中学2年生になっていた。
「あそこの3姉妹は…ちょいと苦手なんだがな……」
桜はそのことを知りながらも、行こうと誘っているのだった。
「ついでに、琴子とかつれていけれたらいいんだけどね」
「ついでっていうか、幌の場合は向こうに行っても従姉妹と話さなくてすむようにしたいだけじゃない?」
幌はごくわずかに身じろぎしたが、桜に気づかれることはなかった。
「どうでもいいだろ、偶然だよ」
「本当かな~?ぱっと思いつきで琴子が出てきたっていうことは…」
幌は怒りながら部屋へと戻ろうと、テーブルから立ち上がろうとした。
その瞬間、桜は幌の手を握り、問い詰めた。
「どういうことかな?」
幌は、その手をふりほどいて部屋の扉を乱暴に閉めた。