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第668巻
「幌ー、少しいい?」
幌の部屋に桜が入ってきた。
桜も教科書を整理していたようだが、幌のところにやってきたとき手に持っていたのは漫画だった。
「何?」
幌は少し目線を上げ、桜が手に持っているものを見る。
「ねえ、懐かしいと思わない。これって売ったらどれくらいになるのかなぁ」
当時はそこまで人気がなかった漫画家の、初版サイン入りのものだ。
今となっては大ベストセラー作家になっていて、もしかしたら万も頒布されなかったかもしれない本の、さらに初版のサイン入りとなれば値が上がるだろう。