第66巻
第76章 大学見学 〜発表編 学年会〜 [2]
体育館のステージで、発表をしている前では、大多数の生徒たちが聴きながらも、いろいろメモを取っていた。
その中でも、列の後ろの方では、すこしばかり小声で話をしている時もあった。
先生が時々見回りに来るが、それでも話は続く。
彼らは、放課後に提出するはずの宿題をしているのだ。
「なあ、終わったか?」
「あと少し」
易しい2次関数の方程式を答える問題を、10問しなければならないのを忘れていた人たちは、この間にしているのが一番時間の有効利用だと考えた。
もちろん、話も聞いてはいるが、真剣に聞いてはない。
投票の結果、自分に利するものもないからという理由で、ほとんど聞いていないのが現状だった。
「一問でも解けたんだったら、こっちにも教えてくれよ」
別のところからも連絡が入る。
そのようにして、ほぼ自動的にネットワークが形成され、それを利用して一問ずつ問題を解いていくということになった。
もちろん、先生はそのネットワークを知りながらも、騒がしくしない限りは無視しておくという戦略をとっていて、あまり注意もしなかった。
4人が終わった時点で、だいたいの問題は解けていたが、第10問目は誰も解けていなかった。
「残りのこの問題…」
「どーするよ、この問題解かずに提出するか?」
「そんなことやって、全部見てもらえねぇだけだって」
この宿題を配るとき、先生は1問でも解けていない場合は、採点しないといっていたことを、思い出していた。
「そうだったな……」
10問目は、[y=16x^2-8x-15]と言う問題だった。
今回のプリントの中で、唯一のマイナスがある問題で、それがややこしくしているのだ。
「普通にすればできるんじゃないか?」
すぐ隣で問題を考えていた男子が言った。
「そっか、基本的には変わらないから…」
そういって、16の平方数を求めた。
「16は4の2乗だから、|(4x+a)(4x+b)になるだろ。で、そいつらを展開すると16x^2+|(4a+4b)+abになると」
プリントの問題のすぐ下に勢いよく式を書き出した。
「4a+4b=-8→[1]、ab=-15→[2]から、[1]を変形させてa=-b-2→[3]、[2]に代入させてb^2+2b=15。こいつをさらに変形させて、b^2+2b-15=0にして因数分解。(b-3)(b+5)=0になって、b=3,-5となる。こいつを[2]と[3]の両方に当てはまるようにするから、とりあえず代入だな」
小声で、周りに説明をしながら計算を解いていく。
「まず、b=-5の場合は[2]よりa=3、[3]に代入すると、3=5-2であたってる。だから、y=(4x+3)(4x-5)になって、x=-3/4,5/4になると」
小さな歓声は、5人目の発表が終わったことを告げる拍手に飲み込まれた。