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第659巻
「ありがとうございました」
幌と琴子は顧問に一礼して、先に部室を出る。
カラカラとドアを閉め、それから二人とも荷物を肩に乗せて、廊下を歩きだす。
「……楽しかった生活も、もう終わりやねんな」
琴子は、そこはかとなく寂しそうだ。
「なんだか寂しそうだな」
幌は琴子に聞いた。
「そりゃそうやろ、卒業してしもうたんやし、これからはめったなことで高校には来うへんやろうしな」
階段を降りる、下駄箱へと向かう。
この一つ一つが、もう最後なんだ、と思うと、何か感慨に浸りたくもなる。
「……琴子さ、少し時間、いいかな」
下駄箱まで来た時、幌は琴子に言った。