654/688
第654巻
わいわいとしているといろんなことを思い出す。
高校入学から、少しずつ、そして今まで。
一つ一つ、その全てが大切な思い出で、今の幌を形作っている。
「どうしたんや、幌」
黙っている幌に、琴子が心配そうに尋ねてきた。
こそっと、家庭科室の丸い椅子を近寄せる。
「いや、いろいろあったなぁって思っただけさ」
それからやおら立ち上がり、みんなに提案する。
「俺らも、高校生としてここにいるのは最後になる。そこで、高校生最後の料理部の部活ということで、ホットケーキを作りたい」
「是非とも、してください」
部長がすぐに答える。
楽しみで仕方ないという表情だ。
部長がいいと言えば、あとは流れに沿っていく。
そもそも、断る理由もないし、幌の手料理を食べる最後の機会になってもおかしくない。
ここで食べておかなければ、生涯の後悔になるという後輩らの思いもあった。