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第653巻
「いや、うまいやんか。これならいけるで」
琴子が食べてさっそく感想を伝える。
サクサク食感の中に、ほんのりとした甘い香り。
「バニラエッセンス、それに生クリーム。あとはマカデミアナッツを刻んで入れたのかな」
「さすが井野嶽先輩。全て正解です」
及川が少し驚いた表情で告げた。
幌は、ただただ当ててみたかっただけらしく、それ以上の感動は、これについては無い。
「最初に作って、それから見ると格段な進化だよ。このままいけば、いつの日か抜かれるかもな」
「いえいえ、井野嶽先輩を抜くなんて……」
「まあ幌は抜かれへんやろうな。でも、うちやったらとっくに抜かれとるから、安心しいや」
どこをどうすれば安心できるのかはわからないが、琴子が及川へと言っていた。