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第652巻
「お口に合えばいいんですが……」
及川がおずおずといった雰囲気で聞く。
「さっそくいただかせてもらうよ」
幌がにっこりと笑い、袋の口を縛っていたリボンをほどいた。
かさかさと音を立てて袋を開けると、焼き立てのような香りがする。
「香りはいいね、これぐらいなら店でもできるんじゃないか?」
「いえいえ、伊野嶽先輩には勝てっこありませんよ」
及川が幌がほめたのを聞いて、慌てて答えた。
「そんなことないって」
同意を求めようと、琴子を見ると、すでに琴子はクッキーを食べていた。