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第644巻
教室に生徒らが戻ってから5分ほどして、担任の教員が教室へと入ってきた。
いつもは適当にカッターを着ているが、今日ばかりは背広にネクタイ、さらに胸には小さな花のブートニアが彩りを添えていた。
少し戸惑った様子がある、なにかを考えているような様子だ。
いつもとは雰囲気が違うというのは、今日が卒業式だということからもはっきりわかる。
だが、それ以上に、何か大事なことが、担任の高啓槻には、きっとあるのだろう。
教室の真正面、教壇へと立った彼は、それでも卒業を寿ぐように嬉しそうだった。