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第622巻
ホテルに戻ると、玄関を通った。
持っていた鍵で部屋番号を確認して、エレベーターに乗り込む。
「ここのエレベーターも古そうだよねぇ」
鈴がふと、つぶやいた。
内装も、蒔絵のような絵柄が内側の扉全体や、壁の隅々まできれいに彩っている。
また、現在階は180度動く上向きの半円を、針がスッと動くことによって1階から6階までのどこにいるかを知らせてくれる。
「パンフレットによれば、このホテルはもともと明治時代にできた古館、昭和51年にできた新館などからできていて、今いるのは古館の方なんだって」
「せやったら、このエレベーターも……」
「建設当時のものらしいよ」
100年近く、動き続けたエレベーターも、やがて止まる。
それは、ただ単に、幌たちが部屋についたことを知らせただけだった。