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第596巻
「ここだ」
幌がパンフと場所を照らし合わせて確認し、さらに看板を見た。
大凡寺は、3段ある階段の上にあった。
山門には扁額が掲げられているが、何と書かれているかは分からない。
「達筆だねぇ」
桜がそんなことを見上げながら言った。
「温泉は境内の中、あっちの方にあるみたい」
山門が指さす方には大きな湯屋がある。
ひっきりなしに人が出入りしているし、天井からはゆるやかな湯気も見える。
「男女別入り口なんだって。昔からそうらしいよ」
幌が相変わらずのパンフレットを見ながらの発言をした。
「先にお寺お参りしてからにする?」
「それはどっちでもいいみたい。ただ、江戸時代には、体をきれいにしてお参りしてから、もう一度入るっていうことをしてたんだって。だから回数券で2回券も売ってるらしいよ」
桜の言葉にこたえる幌の知識は、全てパンフレットからだった。