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第570巻
「ありがとう、ね」
湯気が立つホットココアに、少しだけ息を吹きかけ、桜は冷ましていた。
「何がさ」
「話、聞いてくれたこと」
「当たり前だろうさ」
幌は、ココアを一口飲む。
暖かい気持ちは、胸いっぱいに膨らんで、それ身体中を駆け巡っていくのがわかる。
「なんたって弟だからな」
「そうだね」
姉と弟ということは変わらない。
それはこれからも、ずっと永遠に不変なものだ。
でも、その気持ちは変わっていく。
「……なあ姉ちゃん」
「ん?」
飲み終えたようで、コップをシンクへと入れる桜に、幌が呼びかけた。
「明日、頑張れ」
「大丈夫、頑張ってくるよ」
おやすみ、と桜が言う。
おやすみ、と幌が答える。
そんな何気ない日常が、2人は好きだ。