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第564巻
「大丈夫だよ」
食器を洗い場においた幌へと、桜が声をかけた。
「何が」
「私はどこにもいかないよ。大学もここから通える距離だし、卒業しても、きっとここにいるだろうしね」
「何の話さ」
「今、幌が感じてるさみしさだよ。私は双子で姉なんだよ、分からないと思った?」
図星だった。
「ま、結婚したらどうなるかわからないけど、きっとそれまではいるわよ」
だって、と桜は立ち上がって、桜を見ている幌へと手を伸ばす。
そして、ポンポンと頭をなでる。
「幌のご飯が美味しいからね。食べるために、ただいまっていつものように帰ってくるの」
その一言が、幌にはうれしかった。
姉弟だから、たぶん、それが二人をつないでいる。
それ以上に、きっと家族だから。
「……わかった」
試験はまだ終わっていない。
むしろ、これからというのが、桜の立場だ。
国立大学の手野大学に進むつもりの桜は、後で行われる2次試験を突破する必要がある。
「試験、頑張って。応援している」
「ありがとうね」
桜は、はにかんだ笑顔で、幌に応えた。